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それから 2

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国王様に謁見した後は、アルのお母様のいる部屋に通された。

「初めまして、ご挨拶が婚姻の後になり申し訳ございません――」

あたしが頭を下げると、ユングフラウお義姉様によく似た方が、驚いた顔でこっちを見ている。
金色の髪に、美しい藍色の瞳。目元はアルと全く同じで、アルはお義母様似なんだと分かる。

「アルの嫁は、クリオス社の研究員で月の灯(ライト)と精霊銃を発明した人なんですってね?」
「その通りです、母上」
「我が国のためを考えたら、アルの嫁には勿体ないんじゃなくて?」
「おっしゃる通りですが、私たちは愛し合っております」
「わたくしの息子に対してこんなことを言うのもあれですけれど……、こんな男のどこが良かったのかしら? 顔?」

アルとお義母様の会話にも、あたしが平民だとかそういう話は一切出ない。
あたしはお義母様に、ひたすらアルでいいのかって聞かれる。
この国の王族の中で、アルの評価が低すぎる。扱いが散々じゃないかしらって、ちょっとアルが可哀想になってきた。

「アルは、いえ、アルバート王子は、本当に素敵な方です」
「具体的に、どこが?」
「えっと、それは実はよく分かりませんけど、アルバート王子の性格も愛してます」
「あらあら。物好きがいて良かったわねえ、アル」

うん、お義母様と話していると、ユングフラウお義姉様を思い出す。

そんなわけであたしたち、国王様にもお義母様にも簡単に認められてしまったし、牢に入れられたのはプルートゥ大佐の指示だから許して欲しいと謝られてしまった。

ここまで簡単だと、アルって本当に厄介者扱いだったんだなって、分かる。
これからアルの評判を上げて行くのもあたしの務めに違いないと決意を新たにしてお城を出た。


その後は、成人したばかりの第五王子と電撃結婚した平民の女性『ウィルダ妃』について、連日新聞が記事に取り上げた。

あたしはもともと新聞社に取材されていた立場だったから、取材を担当した記者によるあたしの印象だとか、研究の功績だとかが、これでもかというくらい新聞に載る。

あたしは平民出身を叩かれるかと思いきや、現代社会のロイヤルプリンセス像として、世間に賞賛されてしまった。

平民だとか貴族だとか、そういうのに囚われずに恋愛結婚をしたあたし達は、世の憧れでもあるらしい。まさかそんな反応になるなんて、あたしが一番驚いている。

話題になってしまったこともあって、結婚式はお城で行われた。あたしが精霊銃を撃って衛兵たちを吹き飛ばしたところがバージンロードになっていたので、現実に目を背けたくなる式だったことは言うまでもない。

厳かな雰囲気ではあったけど、金管楽器のファンファーレが鳴って新婦の登場時、あたしの頭の中は「あそこで精霊銃を撃ったなー」ということでいっぱいになった。

きっと、結婚式の最中に脱獄の思い出がフラッシュバックした王家の嫁は、あたしが最初で最後だと思う。最後であって欲しい。

アルは、あたしのウェディングドレス姿が好きだと言って、式の最中もずっとあたしにベタベタしてきた。

神聖な神前の場で何をやってるんだと神父様から相当怒られたけど、アルは神父様よりも神様に近い存在なので、「あの神はそんなことは絶対に気にしない」と反論した。そんな新郎もなかなかいない。

とにかく、あたしたちは祝福された。とっくに神様の前で夫婦になってしまっていたから、結婚式って何のためにするのかしらって思わなくなかったけど。

でも、アルの白いタキシード姿が本当に素敵だったから、本物の王子様があたしの夫なんだわって実はまた惚れ直してしまって、式中ずっとウットリしていられた。

アルを見る度に幸せな気持ちになる。やっぱりあたし、アルの外見に弱いのかしら。


あたしたちのロイヤルウェディングが話題沸騰してしまったから、同時期にニュースになったプルートゥ大佐の違法行為については、あまり世間の印象に残らなかった。

そのプルートゥ大佐だけど、処分は降格と謹慎に加えて例の首輪をつけて生活することになったらしい。
冥府の神の加護があったとしても、もうあの人はその力を使うことはできないだろうって、アルがとても悪い笑顔を浮かべて言っていた。


あたしのお父様とお母様は、王族に嫁ぐことよりもあたしが牢に入れられることになった事実にずっと怒っていた。
アルとの結婚が面白くないと言っている。親の立場からすれば、確かにアルは主人として色々と問題があるから当然のことかもしれない。
あたしがアルのことを大好きなのは分かってくれているから、少しずつ態度が軟化してきてはいるものの……。

お父様はこんなことならさっさとマティアスの元に嫁にやればよかったと後悔していた。

そこで初めて、マティアスの家からそんな話を貰っていたことを知る。お父様はあたしがつらいだけだろうと心配して、その話をあたしに伝えずに断ってしまったらしい。

マティアスに結婚の話をして怒られた意味がようやく分かった。
あたし、求婚された相手にそろそろ結婚しないのかって尋ねてたことになる。マティアス、あたしが無神経なことを話す女だと思って怒っていたのね……。

いつかちゃんと謝らなきゃって心から思う。本当にごめんなさい……。
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