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『—騎士物語2 あとがきより—』
今も多くの人に愛読されている『騎士物語2』のあとがきの話が来た時は、とうとうこの小説も歴史小説としての側面が強くなって来た証拠なのだろうと2人の物語に想いを馳せました。
皆さんがご存じの通り、現在ルリアーナという国はありません。
ルリアーナはポテンシアから独立したパースの一部となり、パース内の地方名になりました。今も農業が盛んな自然の美しい場所です。
ブリステ公国は相変わらずポテンシア王国と力を均衡させながら、戦争を行わずに独自の発展を遂げています。リブニケ王国は、今はブリステ公国の一部となりました。
物語に出てくる『ライト商事』は世界的にも有名な企業となり、多くの商品をこの世に届けています。
初代社長は生涯独身を貫きましたが、晩年、彼の子を名乗る跡継ぎ候補が続々と現れ、後継者を巡って様々な戦いを繰り広げたというのはドラマではなく紛れもない事実です。
さて、実在したヘレナ・ルリアーナは第一子をブリステ公国ハウザー家の跡取りとして育てます。第二子の王女は隣国ポテンシア王国第一王子、マウロと恋愛結婚をしました。後に、ポテンシア王国の王妃となっています。
ルリアーナはヘレナ女王の例に見られるように、恋愛結婚が優先される一夫一妻制の国でした。
ヘレナは第三子の王女をルリアーナ王室に入れましたが、跡継ぎが産まれず、ルリアーナ王室はそこで血統が途絶えます。ハウザー家から養子を迎える話も出たようですが、結局それも叶いませんでした。一夫一妻制の問題点を数々の学者が唱えたのは、このためです。
補足をしておくと、その女王は子どもには恵まれませんでしたが、王配殿下と最後まで仲睦まじく生涯を添い遂げました。相手はルリアーナの平民出身です。
ヘレナ女王が歴史で語られる際は、王政の廃止がセットになります。
権力が王に集中する仕組みを廃止したヘレナは、その後、物語と同じように世界中を旅しました。
その隣には、ブリステ公国ハウザー家出身の王配「カイ・ハウザー」、つまり主人公の「騎士団長様」がいたと伝えられています。
私たちがこのカイ・ハウザーの物語に惹かれるのは、恐らく実際の人物としての彼の魅力も大いに影響しているのではないでしょうか。
東洋人の血を引き、風を操る若き騎士団長――。
ルリアーナの宝石と謳われた魔性の王女ヘレナと結ばれ、生涯を添い遂げたことも大変興味深いところです。
彼の肖像がいくつか残っていますが、皆様も知る通りやはりその美しさは本物のようで、世代を超えて多くの女性を魅了し続けています。
ハウザー騎士団は、現在もブリステ公国の軍事の要を担っています。カイ・ハウザーの子孫が同じような術を使えるのかどうかについては現在語られておりませんし、カイ・ハウザーの能力についても本当だったのか作り話なのかは分かっていません。
ですが、私たちが外の土地からルリアーナの地に足を踏み入れると、必ず追い風か向かい風が吹くと言われています。
追い風が吹くとカイ・ハウザーが歓迎してくれているという意味で、向かい風は嫌われたという意味になります。
恐らく今も、騎士団長様はルリアーナの地を護り続けているのではないでしょうか。
ルリアーナに秋が訪れる時、収穫祭ではヘレナ女王が生涯をかけて伝えた各地の歌が歌われます。
国としてはなくなってしまいしたが、亡国となった今でもあの日の王女が世界を歌っているのだと、ルリアーナでは語り継いでいるのです。
パースの一部になったルリアーナですが、この地が戦争を知らずに平和を保てているのは、ヘレナの伝えた歌とカイ・ハウザーの加護があるからだという説があります。
現実主義者の私でさえ、なぜかその説に賛同してしまうのです。
この物語を読むと、ルリアーナの風を心地よく感じ、王女が歌ったという歌を自然と口ずさんでいます。
『風は時 移りゆく 流れの中』
――ルリアーナ鎮魂歌の歌い出しは、こう始まります。
寄稿 ロベルト・フィルリ(歴史・政治学者)
今も多くの人に愛読されている『騎士物語2』のあとがきの話が来た時は、とうとうこの小説も歴史小説としての側面が強くなって来た証拠なのだろうと2人の物語に想いを馳せました。
皆さんがご存じの通り、現在ルリアーナという国はありません。
ルリアーナはポテンシアから独立したパースの一部となり、パース内の地方名になりました。今も農業が盛んな自然の美しい場所です。
ブリステ公国は相変わらずポテンシア王国と力を均衡させながら、戦争を行わずに独自の発展を遂げています。リブニケ王国は、今はブリステ公国の一部となりました。
物語に出てくる『ライト商事』は世界的にも有名な企業となり、多くの商品をこの世に届けています。
初代社長は生涯独身を貫きましたが、晩年、彼の子を名乗る跡継ぎ候補が続々と現れ、後継者を巡って様々な戦いを繰り広げたというのはドラマではなく紛れもない事実です。
さて、実在したヘレナ・ルリアーナは第一子をブリステ公国ハウザー家の跡取りとして育てます。第二子の王女は隣国ポテンシア王国第一王子、マウロと恋愛結婚をしました。後に、ポテンシア王国の王妃となっています。
ルリアーナはヘレナ女王の例に見られるように、恋愛結婚が優先される一夫一妻制の国でした。
ヘレナは第三子の王女をルリアーナ王室に入れましたが、跡継ぎが産まれず、ルリアーナ王室はそこで血統が途絶えます。ハウザー家から養子を迎える話も出たようですが、結局それも叶いませんでした。一夫一妻制の問題点を数々の学者が唱えたのは、このためです。
補足をしておくと、その女王は子どもには恵まれませんでしたが、王配殿下と最後まで仲睦まじく生涯を添い遂げました。相手はルリアーナの平民出身です。
ヘレナ女王が歴史で語られる際は、王政の廃止がセットになります。
権力が王に集中する仕組みを廃止したヘレナは、その後、物語と同じように世界中を旅しました。
その隣には、ブリステ公国ハウザー家出身の王配「カイ・ハウザー」、つまり主人公の「騎士団長様」がいたと伝えられています。
私たちがこのカイ・ハウザーの物語に惹かれるのは、恐らく実際の人物としての彼の魅力も大いに影響しているのではないでしょうか。
東洋人の血を引き、風を操る若き騎士団長――。
ルリアーナの宝石と謳われた魔性の王女ヘレナと結ばれ、生涯を添い遂げたことも大変興味深いところです。
彼の肖像がいくつか残っていますが、皆様も知る通りやはりその美しさは本物のようで、世代を超えて多くの女性を魅了し続けています。
ハウザー騎士団は、現在もブリステ公国の軍事の要を担っています。カイ・ハウザーの子孫が同じような術を使えるのかどうかについては現在語られておりませんし、カイ・ハウザーの能力についても本当だったのか作り話なのかは分かっていません。
ですが、私たちが外の土地からルリアーナの地に足を踏み入れると、必ず追い風か向かい風が吹くと言われています。
追い風が吹くとカイ・ハウザーが歓迎してくれているという意味で、向かい風は嫌われたという意味になります。
恐らく今も、騎士団長様はルリアーナの地を護り続けているのではないでしょうか。
ルリアーナに秋が訪れる時、収穫祭ではヘレナ女王が生涯をかけて伝えた各地の歌が歌われます。
国としてはなくなってしまいしたが、亡国となった今でもあの日の王女が世界を歌っているのだと、ルリアーナでは語り継いでいるのです。
パースの一部になったルリアーナですが、この地が戦争を知らずに平和を保てているのは、ヘレナの伝えた歌とカイ・ハウザーの加護があるからだという説があります。
現実主義者の私でさえ、なぜかその説に賛同してしまうのです。
この物語を読むと、ルリアーナの風を心地よく感じ、王女が歌ったという歌を自然と口ずさんでいます。
『風は時 移りゆく 流れの中』
――ルリアーナ鎮魂歌の歌い出しは、こう始まります。
寄稿 ロベルト・フィルリ(歴史・政治学者)
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