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第12章 騎士はその地で
騎士団本部にて 1
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カイが騎士団本部に顔を出すと、以前に比べて団員たちの雰囲気がどこか変わっている。
何が違うのか明確な答えも出せず、カイはシンがいる部屋を訪れることにした。
副団長室に入ると、あまりの人口密度にカイはたじろいだ。
シンの席では隣にリリスが座っているし、団員が5名ほどシンと何やら話し込んでいたようだ。
カイの団長室でこういった光景が見られたことは一度もない。
女性が立ち行ったことなどサラを除いては無かったし、レナを連れて来た時くらいだ。
部下が複数人でカイを訪れることなどなく、業務連絡の類しか会話は交わさない。
「あ、団長。お久しぶりです」
悪意なく放たれたシンの挨拶に、カイなりに複雑な気持ちが湧く。
団長でありながら副団長に久しぶりと言わせてしまうような仕事をしている自覚はあった。
「ああ……なかなか顔を出せず、すまなかった」
カイが謝ると、そこで団員たちの表情が固まった。
恐らく、カイが謝ることもあるのだという驚きが一番大きかったのだろう。
「もうあなたがいなくてもここは回るわよ、カイ」
リリスが嬉しそうに言うので、隣にいたシンが冷や汗をかいた。
この場の最高責任者に対して、あからさまに無用だと言うのはどうなのだろうか。
「分かっている、その位でなければ困る。問題はそこじゃない」
カイはそう言うとリリスの手を引いて部屋から追い出し扉を閉めると、すぐに内側から鍵をかけた。
手を引かれながらリリスは「ちょっと何するのよ! 引っ張らないでよ馬鹿力!」と追い出されるまで抵抗しながら大声を上げていたが、締め出された後は大人しくどこかに行ったようだ。
「今ここでリリスの話を聞くつもりはない。悪いが席を外させた」
「すいません、俺の言う事をあまり聞く嫁じゃなくて……」
シンが平謝りしているのをカイはじっと見つめる。
シンは「何か?」と不思議がり、その場にいた団員達も何かあったのだろうかと息を呑む。
「やっぱり、伴侶というのは大事なんだな」
カイがそう言って納得していたので、その場にいた団員たちは新しい惚気の方法なのだなと理解をした。
普段は恐ろしい鬼上司が堂々と惚気るなど、なかなか刺激が強い。
*
「フォローが足りない中、よくやってくれているようだ」
カイはひと通りの報告を聞くと、そう言ってシンをねぎらった。
シンは目の前のカイが自分のよく知る人物なのか疑ってしまう。
ルリアーナの仕事が思ったより重く、ブリステ公国へ戻れなくなっていることはシンも分かっているし、団員にも話して聞かせている。
それを、こうして改めて感謝されるのは意外だった。
「団員の統率が取れているのはさすがだなと思ったが、新規の仕事まで着実に増やしているとは、本当に予想以上だった。サラとの連携が取れているのか?」
カイが部下たちの前でシンを褒めると、「まあ」とシンは謙遜しながら認める。
何が違うのか明確な答えも出せず、カイはシンがいる部屋を訪れることにした。
副団長室に入ると、あまりの人口密度にカイはたじろいだ。
シンの席では隣にリリスが座っているし、団員が5名ほどシンと何やら話し込んでいたようだ。
カイの団長室でこういった光景が見られたことは一度もない。
女性が立ち行ったことなどサラを除いては無かったし、レナを連れて来た時くらいだ。
部下が複数人でカイを訪れることなどなく、業務連絡の類しか会話は交わさない。
「あ、団長。お久しぶりです」
悪意なく放たれたシンの挨拶に、カイなりに複雑な気持ちが湧く。
団長でありながら副団長に久しぶりと言わせてしまうような仕事をしている自覚はあった。
「ああ……なかなか顔を出せず、すまなかった」
カイが謝ると、そこで団員たちの表情が固まった。
恐らく、カイが謝ることもあるのだという驚きが一番大きかったのだろう。
「もうあなたがいなくてもここは回るわよ、カイ」
リリスが嬉しそうに言うので、隣にいたシンが冷や汗をかいた。
この場の最高責任者に対して、あからさまに無用だと言うのはどうなのだろうか。
「分かっている、その位でなければ困る。問題はそこじゃない」
カイはそう言うとリリスの手を引いて部屋から追い出し扉を閉めると、すぐに内側から鍵をかけた。
手を引かれながらリリスは「ちょっと何するのよ! 引っ張らないでよ馬鹿力!」と追い出されるまで抵抗しながら大声を上げていたが、締め出された後は大人しくどこかに行ったようだ。
「今ここでリリスの話を聞くつもりはない。悪いが席を外させた」
「すいません、俺の言う事をあまり聞く嫁じゃなくて……」
シンが平謝りしているのをカイはじっと見つめる。
シンは「何か?」と不思議がり、その場にいた団員達も何かあったのだろうかと息を呑む。
「やっぱり、伴侶というのは大事なんだな」
カイがそう言って納得していたので、その場にいた団員たちは新しい惚気の方法なのだなと理解をした。
普段は恐ろしい鬼上司が堂々と惚気るなど、なかなか刺激が強い。
*
「フォローが足りない中、よくやってくれているようだ」
カイはひと通りの報告を聞くと、そう言ってシンをねぎらった。
シンは目の前のカイが自分のよく知る人物なのか疑ってしまう。
ルリアーナの仕事が思ったより重く、ブリステ公国へ戻れなくなっていることはシンも分かっているし、団員にも話して聞かせている。
それを、こうして改めて感謝されるのは意外だった。
「団員の統率が取れているのはさすがだなと思ったが、新規の仕事まで着実に増やしているとは、本当に予想以上だった。サラとの連携が取れているのか?」
カイが部下たちの前でシンを褒めると、「まあ」とシンは謙遜しながら認める。
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