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第11章 歴史を変える

恋の正体 2

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「ルリアーナを、貴女に返す時ですね」
「そんなことを求めに来たのでは……」

レナが焦っていると、ルイスは早速ペンを持って紙に何かを書き始めた。
書き上げてインクが乾くまで待つ間に、カイをじろりと見る。

「身分差の結婚は、大変だよ」

ルイスは自分の母親を思い出しながら、カイに向かって言った。

「……そうでしょうね」

カイは半ば諦めた表情で頷く。ルイスは紙のインクが渇いたのを確認し、それを持って窓を全開にした。
首から下がっていた鷹笛を取り出し、高い音をピィーと鳴らす。

遠くから飛んできた鷹は大きな羽を閉じてルイスの腕に乗ると、足に紙を括り付けられ、また放たれた。

「ルリアーナ城は、貴女がいた時のまま使用人が働いています。主人が戻れば元通りになるでしょう」
「でも……」
「本来の場所に戻るだけのこと。側近と護衛が恋人を兼務しただけの話ではないですか」

ルイスは至って穏やかだった。これまで抱えていた虚しさや激しい気持ちが、いつの間にか消えている。

「ルイス様、僕、いい仕事しますよ?」

レオナルドは戸惑うレナの横でルイスを見ながら、いつもの笑顔を浮かべてニコニコしていた。

「まあ、それはよく知っているよ。君が私を殺しに来たんじゃないのなら、任せたい仕事はいくつかある。殺しじゃないことでね」

ブラッドが、意外な展開に頭を掻きながらなんとか現実を受け入れようと必死だ。
そんな自分の護衛の姿にくすくすと笑いながら、ルイスは久しぶりに晴れやかな気持ちになっていた。

ルリアーナ城に置いてきたリディアとファニアの姿を思い出す。

ファニアの子が、幸せに育つ国にしなければならない。
リディアのような女性が、新しいこの国を導いてくれるのかもしれない。

ポテンシアを滅ぼそうなど、なぜ願ってしまったのだろうか。

ルイスはレナに何年も焦がれて来た。
手に入れたいと願ったあの気持ちは、ずっと対等になりたいと憧れたルイスの作った幻だったのかもしれない。
異性を望む激しい気持ちを、恋なのだと思っていた。

「レナ・ルリアーナ王女。改めて、隣国として同盟を結ぼう。貴女と私は、これからは同盟国の代表同士というわけだ」

ルイスはレナの元に向かい、手を差し伸べた。

「初めてお会いした時のような、戯れのような握手は好みじゃないわよ」

レナは釘をさすように言うと、微笑んでルイスの手を握る。
ルイスは隙あらば攻撃でもしてきそうなカイの姿を一瞥すると、女性というのは変わるものだなと思わず笑った。

「私は、貴女を誤解していたようだ」

ルイスがレナの手を開放するとカイに視線を移す。

「男性の趣味が、あまりよくないらしいね」

ルイスは相変わらず穏やかに微笑んでいたが、カイは明らかに眉間に皺を寄せて行き場のない怒りを持て余している。
レオナルドとブラッドが、ルイスの言葉に頷いていた。
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