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第11章 歴史を変える

ポテンシア国王のもとへ 2

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ルイスがいるらしい城の近くで、レナは一旦歩みを止めた。

「この土地にも何かあるみたい」

レナは歌った。
その広い大地に放たれた歌声で、小さな黄色い光の欠片が一斉に地面から舞い上がり、次々に風の中に消えていく。

「力を使いすぎてはいないだろうな?」

カイは歌い終えたレナの肩をそっと支え、もう視線の先に見える城を見据えた。

「ありがとう。大丈夫よ」
「無理をするなと言っても、そこにやることがあると動きたくなるだろうからな」

カイは困ったように言うと、肩を支えたレナを覗き込むように観察した。これからルイスと対峙するというのに、レナはずっと力を使い続けている。

「倒れたら、あなたに運んでもらうつもりよ、カイ」

後ろにいた兵士たち――リブニケ人12名に、レオナルド、シンとロキはレナのその高潔さに言葉を失っていた。敵味方など最初からなかったかのように、レナは救いの手を差し伸べている。

「運ぶのは構わないが、レナに倒れられると生きた心地がしない」

カイは、支えたレナの唇に軽く自身の唇を重ねる。レナは、カイがそっと離れる瞬間まで目を閉じ、その行為を柔らかな表情で受け入れた。

「あなたに、余計な心配をかける気はないのよ?」

レナはいたずらっぽく微笑みながら、気丈に振舞う。
カイは困ったように笑みを返すが、後に退けないところまで来てしまっているのだと覚悟を新たにした。

レナの背後に炎が灯る。
その炎がゆっくり鳥の姿に変わって行くと、後ろでそれを見ていたリブニケ人兵士のひとりが伝記の一説を唱えだした。

――建国の女王、この地に降りて 鷹は姿を不死鳥に変えた――

リブニケ人兵士の数名かは、ルリアーナに滞在しているうちに女神ヘレナが建国の女王になったことを知った。そして、ルリアーナと「ヘレナ」に不思議な縁を感じていたのだ。

その「ヘレナ」が同じように人々を救い、導いている。

「とうとう、ここまで来たのね」

炎の鳥が空に上って行く。赤い炎が一筋の光を青い空に刻み羽ばたいて行く姿は、まるで空を切り裂いているようだ。

レナの目は、ルイスに対峙するために迷いのない力を帯び、大地の先を見据えていた。

「地獄の果てまで、とは言わないが……とことん付き合うつもりだ」

カイはそう言ってレナの頭をくしゃっと撫でると、全てをレナに懸ける覚悟で後ろに向かって声を上げる。

「この先は、何があるか分からない。気を引き締めていくぞ」

決して充分ではない戦力だ。
途中で加わったリブニケ人兵士も、ポテンシア王国の兵士であるレオナルドも、味方とはいえない。

ふと、隣のレナを見た。

「なんとかなるわ」

レナがそう言うのだから、そうなのかもしれない。

「どこにも行こうとするなよ」

つい、深い意味を込めてカイは口にする。
ルイスのところにも、自分の手に届かないところにも、レナが行ってしまわないようにと願ってしまった。

ルイスにレナを会わせるようなことをすれば、きっと今までのように自分の側に置くことは叶わなくなるのだろう。

「何度も言ってるでしょ。あなた以外、好きになんかならないのに」

レナがそう言ってカイに寄りかかり手を繋ぐ。

「そこの心配はしていない」

これから何があっても、この手を離さない。カイは強い気持ちで視界に入ってきた城を見つめた。
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