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第10章 新しい力

未来の約束 2

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「だからといって、そんな風にされたら誤解をする」
「誤解?」
「この夜が、最後になる予感がして不吉だ。無事に全てを終わらせたら、約束通り……一緒になろう」

レナは無言で頷くとカイの胸の上で泣いた。

「私……ルイス様の前に姿を現しても、あなたと一緒になれる?」
「それは最初に懸念したが、もう割り切ったんだ。こうなったら一緒になれるまで、共にいよう」

レナは泣きながら頷いた。その背中をカイが撫でる。

「あと……さっきのは本当にまずかった。もう二度としないでくれ」
「どうして?」
「これでも日頃、耐えているんだ。努力が水の泡になりかねない」

カイがそういうと、レナは「そんな努力は要らないのに」と言って膨れていた。

「レナに真意が伝わっていないようだから、この際ハッキリ伝えておこう……。この先、何があっても俺はレナを伴侶にしたい。そうなった時には、恐らく跡継ぎがどうだとか、子を成さねばならない事情が出て来る」
「まあ、そうでしょうね」

「その時にいくらでもできることは置いておこう。今はレナと二人きりでいたい。それに、軽はずみな行為で子が出来でもしたら、何の罪もない子どもを血統の問題に巻き込んでしまう。それは嫌だ」

カイは何とか起き上がり、レナの頬に触れた。不思議そうな顔がカイを見ていた。

「あんな風にされたら理性が飛んでしまうものだ、普通は」
「……そうなの?」

レナは首を傾げている。

「普段の体調だったら、耐えられなかったかもしれない」
「私、そんなあなたも見てみたいのに」
「夫婦になったら、いくらでも見せてやるから安心しろ」

カイはそう言うとレナを引き寄せて唇を重ねた。
たった一度、軽く触れるだけに留めると「これ以上はやめておこう」と小さく言って困った顔を浮かべる。

「俄然、あなたと夫婦にならなきゃって思ったわ」
「残念ながら、ずっと俺はそう思って耐えている。その重さが分からないだろうがな」

カイはそう言うとレナの頬を軽くつねった。レナは不本意そうに一旦顔をしかめたが、思い直したように吹き出した。

「何がおかしい?」
「夫婦になったら……って未来に、カイの理性が関わってるなんて変なの」
「人の気も知らないで、よく笑えるな……」

レナが楽しそうに言うのを、カイはうんざりしたように見つめる。
無垢であることはレナの魅力でもあるが、もはやただの拷問でしかない。
この地獄の終わりが来るのか一抹の不安がよぎってしまったが、考えることはやめた。

「共に在ろうと、約束をしたからな」

カイは諦めたように小さく笑う。
ふと、脇に置いていた明日の出発準備が目に入った。もう、前に向かって進むしかない。

「何があっても、大丈夫よ」

すぐ側でレナがそう言って嬉しそうに微笑んだ。呪文のようなその言葉を聞くとカイは妙に納得するのだ。

「愛している」

カイはそっとレナの頬に唇で触れた。

「何があっても貫く覚悟だ」

耳元で囁かれると、レナは胸の奥がきゅうっと音を立てるように苦しくなる。

理性で抑えているということは、少なくとも求められてはいるらしい。

いつも自分ばかりが焦ってしまうことに申し訳なくなりながら、レナは初めて知った事実に心の中が騒がしくなっていた。
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