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第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く
世間一般ではデートと呼ばれるもの 2
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カイは割り切って、ロキがオーナーを務めるレストランに入ることにした。
ブリステ公国の畏まった飲食店は、どこも平民と貴族の席の差別がはっきりとしていて居心地が悪い。それが、ロキの店に限っては平民も貴族も同じ並びで食事ができるようになっているのだ。平民出身のロキが経営しているため、全ての立場の人間に平等に居心地が良いのが売りだった。
カイは、レナにその辺の事情を伝えるべきか迷いつつ、連れ立ってレストランに入る。店員は一目でカイの存在に気付いた。ロキの会社関係者は、誰もがカイのことを知っている。
「ハウザー様、ようこそお越しくださいました。そちらの女性は奥様ですか?」
ホール担当の男性に話しかけられ、
「まあ、俺はその予定でいるんだが、彼女はどうだろうな」
とカイは穏やかに答える。レナはカイの腕にしがみついたまま、恥ずかしそうに頬を染めた。
席に案内されて着席すると、
「ねえ、何でいきなり『奥様』なのよ?」
とレナは責めるようにカイに尋ねる。恋人を通り越して夫婦扱いされたりするのは、ブリステ公国の風習なのだろうかと理解ができない。
「生花の赤いバラが1本髪に差してあるのを見て、そう思ったんだろ」
「どういうこと? ブリステでは、バラは夫婦の証か何かなの?」
「赤いバラ1本は、『あなた以外愛せない』だ。夫婦の記念日によく贈られる風習がある。重婚が認められた国のクセにおかしな話だがな」
カイが当たり前にように言い放ったので、レナは心臓が止まりそうな感覚に陥った。目の前の恋人は、もっとぶっきらぼうで感情を外に出さない男だったはずだ。いつからこんな気障なことまで出来るようになったのだろうか。
「あ・・あの・・今更なんだけど・・」
「ああ、どうした?」
「あなたのその胸ポケットに、私からも、赤いバラを1本贈らせてもらえない・・?」
レナが恥ずかしそうに口にしたのを、カイは優しい目で見つめていた。
「それは、随分と情熱的な返事だな。昼食をとって、舞台の後で行こう」
2人は半ば浮かれながら昼食の時間を過ごした。気を抜くと口元が緩み、食事中にもかかわらず意識が散漫になっていた。お店から特別サービスです、などと言われてデザートのプレートを出されたものを堪能し、2人は連れ立って店を出る。
「すごく、感じの良いお店だったわね?」
レナが嬉しそうに言ってカイにしがみついたので、カイは今こそロキの店だと伝えるタイミングを見た。
「そこの緩み切った顔をした騎士団長は、俺の知る人物と同じなのかな?」
突然良く知った声がする。カイは驚いて声のした方を見ると、5メートルほど先、停まった馬車の前に立つ人物がこちらを見ている。当事者以上に周囲のギャラリーが騒ぎ始めた。
「・・ロキ」
「驚いたなあ。うちの社員が、カイ・ハウザーが恋人を連れて店に来たって騒ぐから、会社から駆け付けてみれば・・」
ロキは一歩ずつ2人の元に近付いて来る。レナはカイの腕に掴まったまま、ロキが明らかに不機嫌な様子でやってくるのを、じっと見つめていた。
「すっかり、恋人同士みたいだね」
ロキの姿に、ギャラリーが集まって来る。若い華やかな青年実業家は、会社の本拠地を置くこの街では特に有名人だった。
カイはレナを大衆の目に晒したくない一心でその場から離れたかった。
「すまないが・・こんな好奇の目に、レナを晒すわけにはいかない」
カイはそう言ってロキの元から去ろうとする。
「バレないよ、誰かが心配しているようなことは。それより、聞きたかったんだ。団長はそろそろ、国の防衛任務に駆り出されるころだよね?」
「・・それがどうした?」
「その人の護衛に関わることがあったら、連絡してよ。金を出すだけでも良い。力になりたい」
ロキの言葉に、一番驚いていたのはカイだった。
(カイ相手に、お金の話を堂々と持ちかけるところは流石というのかしらね)
レナは、衝撃を受けているカイの表情を見逃さずに、2人の様子を眺めた。
「急に、どうした?」
カイは暫く固まっていたが、ようやく口を開く。『金を出すだけでも良い』のインパクトが大きすぎたようだ。
「その言葉のままだよ。団長が戦場に行っている間、その人は誰が守る? そのための予算はあるのか? 生憎・・誰かと違って俺は、金なら相当な額が出せる」
ロキが不敵な笑みを浮かべたので、ギャラリーが騒ぎ、カイが苛ついた。
「こちらの足元を見ながら同情をされているようで、癇に障るな。残念ながら、彼女は戦場に連れて行く」
カイは口に出した瞬間、しまった、と後悔した。レナが明らかに喜んでいる。
「そんなこと、あんたが一番やりたくないんじゃないの? どう考えても、その人に戦場の環境は無理だ」
ロキはカイを睨みつけ、本気なのだろうかと表情を探る。レナの表情から、彼女が言い出したことなのだろうと察した。
「ちょっとギャラリーが多くなって来たし、もう仕事に戻らなきゃならないんだけど・・言いたいことは伝えた。絶対に、その人を死なせるなよ。絶対にだ」
ロキはそう言うと、面倒くさそうに振り返って近くに停めている馬車に乗り込む。その姿を黄色い声援が追いかけていた。
「ロキって・・本当に人気なのね・・」
「この辺りでは、特にな」
カイは騒がれているロキの馬車が遠くなっていくのを見届けると、ずっとしがみついているレナの方をじっと見た。
「さっきのあれは・・なんというか・・売り言葉に買い言葉というか・・」
「連れて行ってくれるって、言ったわよね?」
レナはカイに迫った。一度口にしてしまった以上、完全にカイのせいだ。どうしたらレナが諦めてくれるのか、このままでは策が尽きそうな予感がしている。
「・・舞台の時間だ。とりあえず、今日の目的は果たそう」
カイとレナは劇場に向かって歩く。ロキが現れたのは想定外だったが、ここまでの流れは概ねデートらしいものになっていた。咄嗟に戦場に連れて行くと言ってしまったのは、ゆっくり考えることにしようと一旦忘れることにする。
劇場で2人の席は舞台から後ろまでの席の中で、ちょうど真ん中といった場所だった。最前列から舞台の近くの席には豪奢な衣装に身を包んだ位の高そうな集団が座っている。
レナは、自分の席がいわゆる「下級貴族席」なのだろうと納得した。生まれた身分でここまで扱いの違う世界があるのだ、と元王女のレナは驚いた。ロキが身分の差で理不尽な扱いを受けて来たと言っていたのを思い出す。
歌劇の舞台は、男女が出会って恋に落ちるも戦争をきっかけに離別し、別々に幸せになりながら添い遂げることが叶わなかった相手を想う、といったブリステ公国では有名な演目だった。カイは良く知った内容の舞台を特別大きな感動もせずに眺めていたが、隣にいるレナは違っていた。
離別するシーンになると感情移入していたのかカイに寄りかかって不安そうな顔を浮かべ、相手を想いながら別々の人生を歩んでいくシーンでは、静かに涙を流していた。
「悲しいけど、綺麗なお話だったわね。やっぱり・・戦争になると、ああいう話が起きるものなのかしら」
レナは劇場を出ると劇中に出て来た歌を早速口ずさんでいる。歌劇に出て来たワンシーンだけで曲を覚えてしまったレナに、カイは驚いていた。
「その歌、ブリステでは有名だ。いい曲だと思う」
「そうね、どこか懐かしくて、とても綺麗な歌」
レナはそう言って、カイの腕にしがみつく。
「もしも・・私とカイが離別することがあったら、どこかで幸せになっていて欲しいと願ってしまうかしら。あんな風に、別の人を探して割り切ってしまうのは、寂しいわ」
悲しそうに言ったレナに、カイは笑った。
「つい最近まで離別していただろう。その間、別に誰かを探したことは無かった」
「それは・・私もそうだけど」
「贈ったバラを思い出せ」
(赤い1本のバラは、『あなた以外愛せない』・・)
レナはそっと頭に差してあるバラに触れる。花弁のしっとりとした感触を確認すると、カイの腕を引いて花屋まで無言で歩いた。レナも同じように赤いバラを1本買って、そっとカイの胸ポケットに差す。
「相手の幸せを想うことって、奥が深いわね。私、まだ愛のことはちゃんと分かっていないかもしれないけど、あなたが好きよ」
2人は、なんとなく早めに家に帰ろうかと街を後にした。馬車でカイの屋敷に向かう途中も、行きとは違い口数は少ない。
気まずさも無く、無理して話をしようともせず、隣り合った席で身体を寄り添わせ、静かな時間に耽っていた。
ブリステ公国の畏まった飲食店は、どこも平民と貴族の席の差別がはっきりとしていて居心地が悪い。それが、ロキの店に限っては平民も貴族も同じ並びで食事ができるようになっているのだ。平民出身のロキが経営しているため、全ての立場の人間に平等に居心地が良いのが売りだった。
カイは、レナにその辺の事情を伝えるべきか迷いつつ、連れ立ってレストランに入る。店員は一目でカイの存在に気付いた。ロキの会社関係者は、誰もがカイのことを知っている。
「ハウザー様、ようこそお越しくださいました。そちらの女性は奥様ですか?」
ホール担当の男性に話しかけられ、
「まあ、俺はその予定でいるんだが、彼女はどうだろうな」
とカイは穏やかに答える。レナはカイの腕にしがみついたまま、恥ずかしそうに頬を染めた。
席に案内されて着席すると、
「ねえ、何でいきなり『奥様』なのよ?」
とレナは責めるようにカイに尋ねる。恋人を通り越して夫婦扱いされたりするのは、ブリステ公国の風習なのだろうかと理解ができない。
「生花の赤いバラが1本髪に差してあるのを見て、そう思ったんだろ」
「どういうこと? ブリステでは、バラは夫婦の証か何かなの?」
「赤いバラ1本は、『あなた以外愛せない』だ。夫婦の記念日によく贈られる風習がある。重婚が認められた国のクセにおかしな話だがな」
カイが当たり前にように言い放ったので、レナは心臓が止まりそうな感覚に陥った。目の前の恋人は、もっとぶっきらぼうで感情を外に出さない男だったはずだ。いつからこんな気障なことまで出来るようになったのだろうか。
「あ・・あの・・今更なんだけど・・」
「ああ、どうした?」
「あなたのその胸ポケットに、私からも、赤いバラを1本贈らせてもらえない・・?」
レナが恥ずかしそうに口にしたのを、カイは優しい目で見つめていた。
「それは、随分と情熱的な返事だな。昼食をとって、舞台の後で行こう」
2人は半ば浮かれながら昼食の時間を過ごした。気を抜くと口元が緩み、食事中にもかかわらず意識が散漫になっていた。お店から特別サービスです、などと言われてデザートのプレートを出されたものを堪能し、2人は連れ立って店を出る。
「すごく、感じの良いお店だったわね?」
レナが嬉しそうに言ってカイにしがみついたので、カイは今こそロキの店だと伝えるタイミングを見た。
「そこの緩み切った顔をした騎士団長は、俺の知る人物と同じなのかな?」
突然良く知った声がする。カイは驚いて声のした方を見ると、5メートルほど先、停まった馬車の前に立つ人物がこちらを見ている。当事者以上に周囲のギャラリーが騒ぎ始めた。
「・・ロキ」
「驚いたなあ。うちの社員が、カイ・ハウザーが恋人を連れて店に来たって騒ぐから、会社から駆け付けてみれば・・」
ロキは一歩ずつ2人の元に近付いて来る。レナはカイの腕に掴まったまま、ロキが明らかに不機嫌な様子でやってくるのを、じっと見つめていた。
「すっかり、恋人同士みたいだね」
ロキの姿に、ギャラリーが集まって来る。若い華やかな青年実業家は、会社の本拠地を置くこの街では特に有名人だった。
カイはレナを大衆の目に晒したくない一心でその場から離れたかった。
「すまないが・・こんな好奇の目に、レナを晒すわけにはいかない」
カイはそう言ってロキの元から去ろうとする。
「バレないよ、誰かが心配しているようなことは。それより、聞きたかったんだ。団長はそろそろ、国の防衛任務に駆り出されるころだよね?」
「・・それがどうした?」
「その人の護衛に関わることがあったら、連絡してよ。金を出すだけでも良い。力になりたい」
ロキの言葉に、一番驚いていたのはカイだった。
(カイ相手に、お金の話を堂々と持ちかけるところは流石というのかしらね)
レナは、衝撃を受けているカイの表情を見逃さずに、2人の様子を眺めた。
「急に、どうした?」
カイは暫く固まっていたが、ようやく口を開く。『金を出すだけでも良い』のインパクトが大きすぎたようだ。
「その言葉のままだよ。団長が戦場に行っている間、その人は誰が守る? そのための予算はあるのか? 生憎・・誰かと違って俺は、金なら相当な額が出せる」
ロキが不敵な笑みを浮かべたので、ギャラリーが騒ぎ、カイが苛ついた。
「こちらの足元を見ながら同情をされているようで、癇に障るな。残念ながら、彼女は戦場に連れて行く」
カイは口に出した瞬間、しまった、と後悔した。レナが明らかに喜んでいる。
「そんなこと、あんたが一番やりたくないんじゃないの? どう考えても、その人に戦場の環境は無理だ」
ロキはカイを睨みつけ、本気なのだろうかと表情を探る。レナの表情から、彼女が言い出したことなのだろうと察した。
「ちょっとギャラリーが多くなって来たし、もう仕事に戻らなきゃならないんだけど・・言いたいことは伝えた。絶対に、その人を死なせるなよ。絶対にだ」
ロキはそう言うと、面倒くさそうに振り返って近くに停めている馬車に乗り込む。その姿を黄色い声援が追いかけていた。
「ロキって・・本当に人気なのね・・」
「この辺りでは、特にな」
カイは騒がれているロキの馬車が遠くなっていくのを見届けると、ずっとしがみついているレナの方をじっと見た。
「さっきのあれは・・なんというか・・売り言葉に買い言葉というか・・」
「連れて行ってくれるって、言ったわよね?」
レナはカイに迫った。一度口にしてしまった以上、完全にカイのせいだ。どうしたらレナが諦めてくれるのか、このままでは策が尽きそうな予感がしている。
「・・舞台の時間だ。とりあえず、今日の目的は果たそう」
カイとレナは劇場に向かって歩く。ロキが現れたのは想定外だったが、ここまでの流れは概ねデートらしいものになっていた。咄嗟に戦場に連れて行くと言ってしまったのは、ゆっくり考えることにしようと一旦忘れることにする。
劇場で2人の席は舞台から後ろまでの席の中で、ちょうど真ん中といった場所だった。最前列から舞台の近くの席には豪奢な衣装に身を包んだ位の高そうな集団が座っている。
レナは、自分の席がいわゆる「下級貴族席」なのだろうと納得した。生まれた身分でここまで扱いの違う世界があるのだ、と元王女のレナは驚いた。ロキが身分の差で理不尽な扱いを受けて来たと言っていたのを思い出す。
歌劇の舞台は、男女が出会って恋に落ちるも戦争をきっかけに離別し、別々に幸せになりながら添い遂げることが叶わなかった相手を想う、といったブリステ公国では有名な演目だった。カイは良く知った内容の舞台を特別大きな感動もせずに眺めていたが、隣にいるレナは違っていた。
離別するシーンになると感情移入していたのかカイに寄りかかって不安そうな顔を浮かべ、相手を想いながら別々の人生を歩んでいくシーンでは、静かに涙を流していた。
「悲しいけど、綺麗なお話だったわね。やっぱり・・戦争になると、ああいう話が起きるものなのかしら」
レナは劇場を出ると劇中に出て来た歌を早速口ずさんでいる。歌劇に出て来たワンシーンだけで曲を覚えてしまったレナに、カイは驚いていた。
「その歌、ブリステでは有名だ。いい曲だと思う」
「そうね、どこか懐かしくて、とても綺麗な歌」
レナはそう言って、カイの腕にしがみつく。
「もしも・・私とカイが離別することがあったら、どこかで幸せになっていて欲しいと願ってしまうかしら。あんな風に、別の人を探して割り切ってしまうのは、寂しいわ」
悲しそうに言ったレナに、カイは笑った。
「つい最近まで離別していただろう。その間、別に誰かを探したことは無かった」
「それは・・私もそうだけど」
「贈ったバラを思い出せ」
(赤い1本のバラは、『あなた以外愛せない』・・)
レナはそっと頭に差してあるバラに触れる。花弁のしっとりとした感触を確認すると、カイの腕を引いて花屋まで無言で歩いた。レナも同じように赤いバラを1本買って、そっとカイの胸ポケットに差す。
「相手の幸せを想うことって、奥が深いわね。私、まだ愛のことはちゃんと分かっていないかもしれないけど、あなたが好きよ」
2人は、なんとなく早めに家に帰ろうかと街を後にした。馬車でカイの屋敷に向かう途中も、行きとは違い口数は少ない。
気まずさも無く、無理して話をしようともせず、隣り合った席で身体を寄り添わせ、静かな時間に耽っていた。
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