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第5章 追われるルリアーナ元王女
カイの聞き込み調査
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ルリアーナ城の城下町で、黒髪の美しい騎士がとある女性を探していた。以前よく知った町だったそこは、リブニケ王国から来た兵士たちの姿が各所に見られるようになっている。
1年近く前は騎士が歩いているだけで目立っていたのが、すっかり状況は変わってしまったようだ。
その騎士、カイ・ハウザーは、昨日から城下町の様々な場所で道行く人に話を聞いていた。聞き込みをすると、何故か呼んでもいない女性がどんどん周りに集まって来る。すぐに人だかりができて、情報収集に都合が良いのか悪いのかよく分からなかった。
普段、カイはあまり見知らぬ人に話しかけたりはしないのだが、実際にやってみるとこんなに人に囲まれるものなのかと焦る。
「ブロンドで小柄な人なんて、沢山いそうだけど……」
「その女性とはどんな関係なんですか?」
「あの、彼女いますか?」
いつの間にか、カイに興味を持った女性たちの質問攻めに遭っている。全く関係ない質問をされるのが何故なのか、カイには理解ができない。
カイはレナの特徴を上手く説明できず、そろそろ解放されたいと思い始めた時、そこを偶然通りかかったイリア・アウグスが、女性を探しているという異国人に胸騒ぎを覚えた。
「すいません、もしかして、エレナ・サントーロの関係者ですか?」
イリアがカイに話しかけた時、カイはその聞き覚えのある名前に目を見開いた。
(エレナ・サントーロだと?)
叫びそうになったのをぐっと堪え、カイはその言葉を発したイリアから詳しいことを聞こうとした。
「そうだ」
「あ……えっ……?」
イリアは遠くから見て何となく異国人だろうと思った程度でカイに話しかけたが、直視された途端、何も言えなくなっていた。
「詳しく、その話を聞かせてくれないか?」
カイが真剣にイリアを見て言ったのを、イリアは見惚れながら細かく何度も頷く。まさか声を掛けた男性が、こんなに美しい男だとは思ってもみなかった。
「エレナは、10ヶ月ほど前に、私の兄の行商に付いて行って、ポテンシアからブリステ公国に入国しようとしていました。そこに、恋人がいると言って……。でも、今は国際情勢が不安定で、エレナはブリステに入国できないんです」
イリアがそう言うと、カイは言葉を失っていた。
「あなたがブリステ人の……エレナの恋人ですか? 彼女を探しているんですか?」
イリアは、これがエレナの恋人なのだろうかと、目の前にいる見たこともない美しい男性の姿に信じられない気持ちでいる。
「……ああ、そうだ」
カイは、イリアの言ったレナの恋人とはロキの事なのだろうと思った。ただ、イリアに説明するには誤解されたままの方が都合は良い。
一方のイリアはカイが認めたことで、エレナがこんな美しい男性と恋仲だったのかと、羨ましくてたまらなかった。
「兄がエレナに好意を持ったことで、2人はうまくいかなくなってしまったみたいで……。ごめんなさい、エレナはブリステとの国境近くにある町に留まることになったんです。どうも、バールに住み込みで働いて歌い手をやっていると聞いていますが」
イリアがカイに話しかけている間も、ギャラリーの女性は増えていくばかりだった。もはやただカイを囲みたいだけの集団になり果てている。
「そうか……国境の町に……」
カイはそう言って、考え込むように遠くを見つめた。これでその『エレナ』の居場所が分かった。
「あ、あの……ごめんなさい、うちの兄が、その……」
イリアは、兄から聞いた話を思い出してカイに謝った。恋人がいると知りながら、ジャンがエレナに好意を持たなければと、申し訳ない気持ちになっている。
「まあ、仕方ないな。彼女は以前から妙に男に言い寄られていたから」
カイがそう言ってイリアを見て少し寂し気に笑った。
(え、な、なにこの人……本当にステキ……)
イリアは瞬きも忘れてカイに見入った。それも、いつの間にか手を顔の前で組んでしまっていた。その他大勢のギャラリーもカイの表情に、それぞれが小さな息を漏らして感嘆した。
1年近く前は騎士が歩いているだけで目立っていたのが、すっかり状況は変わってしまったようだ。
その騎士、カイ・ハウザーは、昨日から城下町の様々な場所で道行く人に話を聞いていた。聞き込みをすると、何故か呼んでもいない女性がどんどん周りに集まって来る。すぐに人だかりができて、情報収集に都合が良いのか悪いのかよく分からなかった。
普段、カイはあまり見知らぬ人に話しかけたりはしないのだが、実際にやってみるとこんなに人に囲まれるものなのかと焦る。
「ブロンドで小柄な人なんて、沢山いそうだけど……」
「その女性とはどんな関係なんですか?」
「あの、彼女いますか?」
いつの間にか、カイに興味を持った女性たちの質問攻めに遭っている。全く関係ない質問をされるのが何故なのか、カイには理解ができない。
カイはレナの特徴を上手く説明できず、そろそろ解放されたいと思い始めた時、そこを偶然通りかかったイリア・アウグスが、女性を探しているという異国人に胸騒ぎを覚えた。
「すいません、もしかして、エレナ・サントーロの関係者ですか?」
イリアがカイに話しかけた時、カイはその聞き覚えのある名前に目を見開いた。
(エレナ・サントーロだと?)
叫びそうになったのをぐっと堪え、カイはその言葉を発したイリアから詳しいことを聞こうとした。
「そうだ」
「あ……えっ……?」
イリアは遠くから見て何となく異国人だろうと思った程度でカイに話しかけたが、直視された途端、何も言えなくなっていた。
「詳しく、その話を聞かせてくれないか?」
カイが真剣にイリアを見て言ったのを、イリアは見惚れながら細かく何度も頷く。まさか声を掛けた男性が、こんなに美しい男だとは思ってもみなかった。
「エレナは、10ヶ月ほど前に、私の兄の行商に付いて行って、ポテンシアからブリステ公国に入国しようとしていました。そこに、恋人がいると言って……。でも、今は国際情勢が不安定で、エレナはブリステに入国できないんです」
イリアがそう言うと、カイは言葉を失っていた。
「あなたがブリステ人の……エレナの恋人ですか? 彼女を探しているんですか?」
イリアは、これがエレナの恋人なのだろうかと、目の前にいる見たこともない美しい男性の姿に信じられない気持ちでいる。
「……ああ、そうだ」
カイは、イリアの言ったレナの恋人とはロキの事なのだろうと思った。ただ、イリアに説明するには誤解されたままの方が都合は良い。
一方のイリアはカイが認めたことで、エレナがこんな美しい男性と恋仲だったのかと、羨ましくてたまらなかった。
「兄がエレナに好意を持ったことで、2人はうまくいかなくなってしまったみたいで……。ごめんなさい、エレナはブリステとの国境近くにある町に留まることになったんです。どうも、バールに住み込みで働いて歌い手をやっていると聞いていますが」
イリアがカイに話しかけている間も、ギャラリーの女性は増えていくばかりだった。もはやただカイを囲みたいだけの集団になり果てている。
「そうか……国境の町に……」
カイはそう言って、考え込むように遠くを見つめた。これでその『エレナ』の居場所が分かった。
「あ、あの……ごめんなさい、うちの兄が、その……」
イリアは、兄から聞いた話を思い出してカイに謝った。恋人がいると知りながら、ジャンがエレナに好意を持たなければと、申し訳ない気持ちになっている。
「まあ、仕方ないな。彼女は以前から妙に男に言い寄られていたから」
カイがそう言ってイリアを見て少し寂し気に笑った。
(え、な、なにこの人……本当にステキ……)
イリアは瞬きも忘れてカイに見入った。それも、いつの間にか手を顔の前で組んでしまっていた。その他大勢のギャラリーもカイの表情に、それぞれが小さな息を漏らして感嘆した。
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