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第5章 追われるルリアーナ元王女
バール「アウル」のエレナ
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バール「アウル」の店内。昼間の給仕にレナが入っていた時、ひとりの男性に声を掛けられた。こういったことは日常茶飯事で、そこまで珍しいことではない。
「すいません、あの……お姉さん、ルリアーナ出身だったりしますか?」
突然話しかけられた内容に、何だろうかと不思議に思いながら、「ええ、そうですね」とレナは返事をした。
「多分、あなたを探している人がいますよ。お姉さんみたいな人を知らないかって、聞かれたことがあるんですよ、旧ルリアーナに居た時に」
若い男性に不意に言われた内容に、レナは胸騒ぎがした。
(私みたいな人……? 誰かに探されている……?)
「あ、あの……それはどんな人でしたか?」
動揺を必死に隠しながら、レナは男性に尋ねた。まだ、誰が自分を探しているのか分からない。
「若い男の人でした。なんか仕事でルリアーナに来ているんだとか言ってましたけど」
(若い……男の人……? 外国人……?)
「そ、その人の特徴は……?」
レナは明らかに表情が固まっていた。誰が自分を探しているのか、それは好むべき状況なのかそうでないのかが、まだ分からない。
「栗色の毛で、短髪の、中肉中背って感じでした。良い人そうでしたけど」
(……全っ然、心当たりがないわね……まさか今迄のお見合い相手ってことはないだろうし……)
確実に、ハウザー騎士団の人間ではなさそうだ。中肉中背が普通の男性なのだと思うと、いかにあの騎士団は恵まれた人材が揃っているのか。
全員体格の面ではさすが鍛え抜かれた集団と言わざるを得ない。中肉中背といわれて思い出せる団員が一人もいなかった。
「ところで、なんで私だと思ったんですか?」
人違いかもしれない、とレナは気を取り直して目の前の男性に聞いてみた。
「アッシュブロンドの髪、少しくせ毛で、丸顔。背は低く、身体は小柄。目が丸く少し幼く見える顔立ち。年齢は20歳。発音は綺麗なルリアーナ式。どこにいても、誰かから想われる要素がある女性、ってあなたがそんな感じかなと思って」
男性がスラスラと探されていた女性の特徴を述べた。
「そ、それは私とは違いますね」レナが焦って否定すると、「あら、エレナのことじゃないの?」とミミが横で当然のように言った。いつから聞かれていたのだろうか。
「あなたの美男な恋人が、友達にでも頼んだのかもしれないわよ? 仕事のついでに探して欲しいとか」
ミミがそう付け加えると、レナは一瞬期待に満ちた表情をしたが、すぐに諦めたような顔に戻り、「そうだったらいいのに」と悲しそうに呟いた。
その姿を見た男性は、「こんな恋人と生き別れたら、そりゃその方は心配でしょうね」と納得している。
「そうでしょう?」
マーシャもいつの間にかその男性の隣に立って頷いている。
「ほんと、早くこの子を引き取りに来て欲しいのよ」
マーシャがしみじみと言うと、レナは泣きそうな顔で笑顔を作った。
「すいません、あの……お姉さん、ルリアーナ出身だったりしますか?」
突然話しかけられた内容に、何だろうかと不思議に思いながら、「ええ、そうですね」とレナは返事をした。
「多分、あなたを探している人がいますよ。お姉さんみたいな人を知らないかって、聞かれたことがあるんですよ、旧ルリアーナに居た時に」
若い男性に不意に言われた内容に、レナは胸騒ぎがした。
(私みたいな人……? 誰かに探されている……?)
「あ、あの……それはどんな人でしたか?」
動揺を必死に隠しながら、レナは男性に尋ねた。まだ、誰が自分を探しているのか分からない。
「若い男の人でした。なんか仕事でルリアーナに来ているんだとか言ってましたけど」
(若い……男の人……? 外国人……?)
「そ、その人の特徴は……?」
レナは明らかに表情が固まっていた。誰が自分を探しているのか、それは好むべき状況なのかそうでないのかが、まだ分からない。
「栗色の毛で、短髪の、中肉中背って感じでした。良い人そうでしたけど」
(……全っ然、心当たりがないわね……まさか今迄のお見合い相手ってことはないだろうし……)
確実に、ハウザー騎士団の人間ではなさそうだ。中肉中背が普通の男性なのだと思うと、いかにあの騎士団は恵まれた人材が揃っているのか。
全員体格の面ではさすが鍛え抜かれた集団と言わざるを得ない。中肉中背といわれて思い出せる団員が一人もいなかった。
「ところで、なんで私だと思ったんですか?」
人違いかもしれない、とレナは気を取り直して目の前の男性に聞いてみた。
「アッシュブロンドの髪、少しくせ毛で、丸顔。背は低く、身体は小柄。目が丸く少し幼く見える顔立ち。年齢は20歳。発音は綺麗なルリアーナ式。どこにいても、誰かから想われる要素がある女性、ってあなたがそんな感じかなと思って」
男性がスラスラと探されていた女性の特徴を述べた。
「そ、それは私とは違いますね」レナが焦って否定すると、「あら、エレナのことじゃないの?」とミミが横で当然のように言った。いつから聞かれていたのだろうか。
「あなたの美男な恋人が、友達にでも頼んだのかもしれないわよ? 仕事のついでに探して欲しいとか」
ミミがそう付け加えると、レナは一瞬期待に満ちた表情をしたが、すぐに諦めたような顔に戻り、「そうだったらいいのに」と悲しそうに呟いた。
その姿を見た男性は、「こんな恋人と生き別れたら、そりゃその方は心配でしょうね」と納得している。
「そうでしょう?」
マーシャもいつの間にかその男性の隣に立って頷いている。
「ほんと、早くこの子を引き取りに来て欲しいのよ」
マーシャがしみじみと言うと、レナは泣きそうな顔で笑顔を作った。
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