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第3章 それが日常になっていく
ブラッド・クラウスの懸念
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ルイスの元を訪れた後、城内でカイはブラッドと話し込んでいた。
「あの日、確かにルイス様は……他の誰もが視えなかった王女殿下と、会話をしていたようだった。その時に、王女殿下にルリアーナを任されたのだと言っていたんだ」
「ルイス殿下が王女と話していた時、同じ場所にブラッドもいたんだな?」
「ああ、誰もいないところに向かって会話をしているルイス様を見ていた」
カイは、ブラッドの話を聞いてルイスの見た王女は呪術で作り出されたものに違いないと確信した。
ただ1点、ルイスが見た王女の死体というのが、どうしても引っかかっている。その場にいた全員が死体を見たというのであれば、やはり王女は亡くなっているのだろうかと、生存の可能性が揺らぐ。
「それで、ルイス様は、本気で国王とやり合うつもりなのか? いくらなんでも無謀だろう……」
「俺だって、止めたよ。何度も説得しようとした。だが、あの人は兄弟を滅ぼして軍を取り込み、国王を討つつもりだ。王女のことで国王を随分憎んでしまっておいでだからな……」
ブラッドは項垂れながら、悲痛な表情を隠すことなくルイスを案じていた。
「あんなのは……ルイス様じゃない。あの方の良いところは、いい意味で力の抜けた柔軟性を持ち、それでいて大切なものは守ろうとするところだった」
ブラッドの辛そうな様子に、カイは一度息を吐く。
「人は何かを失えば、普通ではいられないだろう。婚約者を実の父親に殺されたとなれば、呪う気持ちも複雑に違いない」
カイの言葉にブラッドは小さく頷くと、「ああ……ルイス様のことを考えるといたたまれない。ハウザー殿も護衛を外れた途端、主人を亡くすというのは……なかなか辛いものがあるんじゃないか?」とカイの様子をじっと見ていた。
「辛い……か。どうだろうな。俺は未だにあの人が生きている気がして仕方がないし、探しにいってやらねばならないんじゃないかと、旧パースの地で毎日心配している」
カイがそう言った時、ブラッドはカイをじっと見つめていた。
「死を認められない、か。それはそれで茨の道だな」
ブラッドがカイに哀れんだ目を向けながら、ポテンシア国王の行ったことの大きさに胸を痛めている。
カイはそのブラッドに小さく微笑んだ。
「茨の道か。もともと、それ以外の道は進んできたことがないかもしれないな」
カイは自分の人生を振り返る。
考えてみれば、小さなころからカイは平坦な道を歩いてことなどなかったのではないだろうか。
「そうか」
ブラッドはひとことだけ返すと、それ以上は何も言わなかった。
カイは部屋から窓の方に目をやる。レナは、よくベランダに出て外を眺めていた。カイが到着したのを確認しては部屋に入って来て、嬉しそうにこちらを見て笑っていた姿を思い出す。
カイは、どうしてもレナが死んだとは思えない。今もどこかで自分を待っているような気がした。
「あの日、確かにルイス様は……他の誰もが視えなかった王女殿下と、会話をしていたようだった。その時に、王女殿下にルリアーナを任されたのだと言っていたんだ」
「ルイス殿下が王女と話していた時、同じ場所にブラッドもいたんだな?」
「ああ、誰もいないところに向かって会話をしているルイス様を見ていた」
カイは、ブラッドの話を聞いてルイスの見た王女は呪術で作り出されたものに違いないと確信した。
ただ1点、ルイスが見た王女の死体というのが、どうしても引っかかっている。その場にいた全員が死体を見たというのであれば、やはり王女は亡くなっているのだろうかと、生存の可能性が揺らぐ。
「それで、ルイス様は、本気で国王とやり合うつもりなのか? いくらなんでも無謀だろう……」
「俺だって、止めたよ。何度も説得しようとした。だが、あの人は兄弟を滅ぼして軍を取り込み、国王を討つつもりだ。王女のことで国王を随分憎んでしまっておいでだからな……」
ブラッドは項垂れながら、悲痛な表情を隠すことなくルイスを案じていた。
「あんなのは……ルイス様じゃない。あの方の良いところは、いい意味で力の抜けた柔軟性を持ち、それでいて大切なものは守ろうとするところだった」
ブラッドの辛そうな様子に、カイは一度息を吐く。
「人は何かを失えば、普通ではいられないだろう。婚約者を実の父親に殺されたとなれば、呪う気持ちも複雑に違いない」
カイの言葉にブラッドは小さく頷くと、「ああ……ルイス様のことを考えるといたたまれない。ハウザー殿も護衛を外れた途端、主人を亡くすというのは……なかなか辛いものがあるんじゃないか?」とカイの様子をじっと見ていた。
「辛い……か。どうだろうな。俺は未だにあの人が生きている気がして仕方がないし、探しにいってやらねばならないんじゃないかと、旧パースの地で毎日心配している」
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「死を認められない、か。それはそれで茨の道だな」
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カイはそのブラッドに小さく微笑んだ。
「茨の道か。もともと、それ以外の道は進んできたことがないかもしれないな」
カイは自分の人生を振り返る。
考えてみれば、小さなころからカイは平坦な道を歩いてことなどなかったのではないだろうか。
「そうか」
ブラッドはひとことだけ返すと、それ以上は何も言わなかった。
カイは部屋から窓の方に目をやる。レナは、よくベランダに出て外を眺めていた。カイが到着したのを確認しては部屋に入って来て、嬉しそうにこちらを見て笑っていた姿を思い出す。
カイは、どうしてもレナが死んだとは思えない。今もどこかで自分を待っているような気がした。
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