28 / 229
第3章 それが日常になっていく
ルイス・ポテンシアの闇
しおりを挟む
カイが応接室で待っていると、ブラッドと共にルイスが到着した。
そのルイスを見て、カイは一瞬言葉を失う。明らかに、ルイスは人相が変わっていた。
「やあ、久しぶりだね。旧パースでユリウスに手を焼いているんだろう?」
そう言って軽く微笑んだルイスには、以前の面影が残っているが、表情には常に影が差していた。
「はい……。殿下のご兄弟は、どうやら統治の方針が私とは合わないようですね」
カイはそう言ってユリウスのことを暗に批判したが、ルイスは「まあ、私だってあんなのと兄弟だと思うと、この血を呪いたくもなるのさ」と鋭い目で言い捨てた。
(なぜ、こんなに別人のように見えるのだろうか・・・?)
カイはじっとルイスを観察した。
髪が伸びていたものの、特に変わったところはない。体型も変わっていない。ただ、一か所、今迄は華やかに見えた青い瞳だけが、驚くほど曇っている……。
「殿下と、私が何か連携できることはないのでしょうか」
カイは以前と同一人物に思えないルイスに尋ねる。
「ああ、勿論私だって君がここに来ることが分かって色々考えたよ……。私が知っている中でも、君は特に優秀な戦力だからね」
ルイスはそう言うと、以前よりも曇った目を鋭く光らせてカイを眺めていた。
「ルイス殿下は、ご兄弟をどうされるおつもりですか?」
カイが尋ねた言葉に、ルイスは一瞬戸惑った顔を見せたが、「勿論、父も含めて私がなんとかしなければならないと思っている」と言うと、
「どう考えても、王女は父に殺されたからね」と曇った目を復讐の色に染めて口角を上げた。
「どこでそれは確信されたのですか……」
カイは、ルイスの瞳が曇っていた理由を知った気がした。
今迄は人を恨んだことのないルイスが、レナを失って復讐心に駆られた毎日を過ごしてきたのかもしれない。
「君は、王女の護衛最終日に……レオナルドに会っただろう?」
ルイスがゆっくりカイに確認するように尋ねる。
「はい……確かに、ルイス様の手配した護衛としてレオナルドが1人で現れたので、私は心配しました。レオナルドは、ミリーナを殿下の前で殺したばかりでしたから」
カイがそう言ったのを聞くと、ルイスは肩で小さく笑いだした。
「はは……やはり……そうか。父上は、どこまでも私を馬鹿にしてくれる……。よく聞け、ハウザー団長。私はレオナルドなど手配していない。私の部下がレオナルドに騙されて私のところに戻って来たんだ。つまり、レオナルドには何らかの理由があってひとりで城を訪れた」
ルイスの目がいよいよ憎しみに染まっていく。
「そして、炎に包まれた遺体には、ハッキリと首を切られた跡が残っていたんだ。あんな一撃で人を殺せるような切り方ができるのは、うちの兵士の中ではレオナルドくらいしかいない」
ルイスはそう言って不気味に笑っている。その姿を見たカイは、憎しみを持つとこうも人間というのは変わるのだと知る。
「なるほど……辻褄が、合いますね」
カイはそう言った後、ルイスが考えていることがハッキリと感じ取れた。
(国王を、滅ぼそうというのか……)
「まずは、近場でユリウスからにしようかと思っているが、どうかな。君も近くにいることだし、手頃だろう?」
ルイスはそう言ってまた不気味に笑う。
「いや、市民を犠牲にするのはどうかと思いますが」
カイはそう言ってルイスを止めようとしたが、「私も、間諜部隊を作ったんだ。君には護衛だけお願いできれば大丈夫だよ」とルイスは笑う。
その姿を、護衛に就いていたブラッドが悲痛な表情で見つめていた。
そのルイスを見て、カイは一瞬言葉を失う。明らかに、ルイスは人相が変わっていた。
「やあ、久しぶりだね。旧パースでユリウスに手を焼いているんだろう?」
そう言って軽く微笑んだルイスには、以前の面影が残っているが、表情には常に影が差していた。
「はい……。殿下のご兄弟は、どうやら統治の方針が私とは合わないようですね」
カイはそう言ってユリウスのことを暗に批判したが、ルイスは「まあ、私だってあんなのと兄弟だと思うと、この血を呪いたくもなるのさ」と鋭い目で言い捨てた。
(なぜ、こんなに別人のように見えるのだろうか・・・?)
カイはじっとルイスを観察した。
髪が伸びていたものの、特に変わったところはない。体型も変わっていない。ただ、一か所、今迄は華やかに見えた青い瞳だけが、驚くほど曇っている……。
「殿下と、私が何か連携できることはないのでしょうか」
カイは以前と同一人物に思えないルイスに尋ねる。
「ああ、勿論私だって君がここに来ることが分かって色々考えたよ……。私が知っている中でも、君は特に優秀な戦力だからね」
ルイスはそう言うと、以前よりも曇った目を鋭く光らせてカイを眺めていた。
「ルイス殿下は、ご兄弟をどうされるおつもりですか?」
カイが尋ねた言葉に、ルイスは一瞬戸惑った顔を見せたが、「勿論、父も含めて私がなんとかしなければならないと思っている」と言うと、
「どう考えても、王女は父に殺されたからね」と曇った目を復讐の色に染めて口角を上げた。
「どこでそれは確信されたのですか……」
カイは、ルイスの瞳が曇っていた理由を知った気がした。
今迄は人を恨んだことのないルイスが、レナを失って復讐心に駆られた毎日を過ごしてきたのかもしれない。
「君は、王女の護衛最終日に……レオナルドに会っただろう?」
ルイスがゆっくりカイに確認するように尋ねる。
「はい……確かに、ルイス様の手配した護衛としてレオナルドが1人で現れたので、私は心配しました。レオナルドは、ミリーナを殿下の前で殺したばかりでしたから」
カイがそう言ったのを聞くと、ルイスは肩で小さく笑いだした。
「はは……やはり……そうか。父上は、どこまでも私を馬鹿にしてくれる……。よく聞け、ハウザー団長。私はレオナルドなど手配していない。私の部下がレオナルドに騙されて私のところに戻って来たんだ。つまり、レオナルドには何らかの理由があってひとりで城を訪れた」
ルイスの目がいよいよ憎しみに染まっていく。
「そして、炎に包まれた遺体には、ハッキリと首を切られた跡が残っていたんだ。あんな一撃で人を殺せるような切り方ができるのは、うちの兵士の中ではレオナルドくらいしかいない」
ルイスはそう言って不気味に笑っている。その姿を見たカイは、憎しみを持つとこうも人間というのは変わるのだと知る。
「なるほど……辻褄が、合いますね」
カイはそう言った後、ルイスが考えていることがハッキリと感じ取れた。
(国王を、滅ぼそうというのか……)
「まずは、近場でユリウスからにしようかと思っているが、どうかな。君も近くにいることだし、手頃だろう?」
ルイスはそう言ってまた不気味に笑う。
「いや、市民を犠牲にするのはどうかと思いますが」
カイはそう言ってルイスを止めようとしたが、「私も、間諜部隊を作ったんだ。君には護衛だけお願いできれば大丈夫だよ」とルイスは笑う。
その姿を、護衛に就いていたブラッドが悲痛な表情で見つめていた。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる