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the 35th day さようなら
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レナはベランダに出て、ハウザー騎士団の4人が城門に向かって歩いて行くのを上から見ようとしていた。
小さくなっていく人影の、ロキらしきものがレナの方を振り返り、続けてサラとシン、最後にカイも立ち止まって振り返った。
レナは4人の視線が自分に向いていると確信し、大きく手を振った。
4人もそれぞれに手を振り返してくれる。その姿を見てレナは自然に溢れる涙に構わず、
「また来てねー!」
と大きな声を上げた。良く通るレナの声がハウザー騎士団の4人に時差で届く。
「また来ます!」
「お元気で!」
シンとロキらしき声が向こうから返って来る。カイとサラの声は聞こえなかった。
レナは必死に手を振り続け、4人が見えなくなるまでずっとベランダに立っていた。
4人はレナの方を向きながら暫く歩いていたが、城門まで到着すると進行方向を向いて門を通過し、とうとう姿が見えなくなってしまった。
レナは手すりにもたれ掛かり、暫く静かに泣いた。
声を出して思い切り叫び、想いを伝えてしまえば楽になるなら、そうしたかもしれない。
それが、今の状況を変えることも自分の気持ちを変えることも、どうすることもできないのがレナには分かっていた。
1ヶ月の契約が、終わってしまった。
カイを含む4人は仕事を終えただけのことだ。レナのように大切な人を失ったような喪失感を抱えているはずもなく、また次の仕事に向かって行く。
レナは、『さようなら』が使えなかった。新しい明日が来たら、またカイと他愛のない話をしながら城内を歩けるような気がして、別れの言葉が出て来なかった。
「さようなら……」
レナは、自分の心の中にある恋心にそっと言うと、ガラス玉のペンダントトップを包むようにして握った。暫く収まりそうにない涙を拭うこともせず、外の風が涙をより一層冷たく掠めるのを感じながら、ただ立ち尽くすことしかできない。
人生で初めての恋が、始まって終わった。
次にカイを雇うことができたとしても、その時にはルイスと婚姻関係にあるかもしれない。
(カイは自分と未来を悲観するなと言ったけど……あなたが側にいてくれないだけでそれは難しいわね)
レナの頬を撫でる風は、カイが初めてルリアーナに来た頃よりも随分冷たいものに変わっていた。
これからも季節は巡る。いつの間にか移り行く季節が、不変なものなどないのだとレナに現実を突きつけるようだ。
その移り変わりと共に、レナの抱える胸の痛みも徐々に無くなっていくのかもしれない。
それは、ひどく悲しく、寂しい事のように思えた。
小さくなっていく人影の、ロキらしきものがレナの方を振り返り、続けてサラとシン、最後にカイも立ち止まって振り返った。
レナは4人の視線が自分に向いていると確信し、大きく手を振った。
4人もそれぞれに手を振り返してくれる。その姿を見てレナは自然に溢れる涙に構わず、
「また来てねー!」
と大きな声を上げた。良く通るレナの声がハウザー騎士団の4人に時差で届く。
「また来ます!」
「お元気で!」
シンとロキらしき声が向こうから返って来る。カイとサラの声は聞こえなかった。
レナは必死に手を振り続け、4人が見えなくなるまでずっとベランダに立っていた。
4人はレナの方を向きながら暫く歩いていたが、城門まで到着すると進行方向を向いて門を通過し、とうとう姿が見えなくなってしまった。
レナは手すりにもたれ掛かり、暫く静かに泣いた。
声を出して思い切り叫び、想いを伝えてしまえば楽になるなら、そうしたかもしれない。
それが、今の状況を変えることも自分の気持ちを変えることも、どうすることもできないのがレナには分かっていた。
1ヶ月の契約が、終わってしまった。
カイを含む4人は仕事を終えただけのことだ。レナのように大切な人を失ったような喪失感を抱えているはずもなく、また次の仕事に向かって行く。
レナは、『さようなら』が使えなかった。新しい明日が来たら、またカイと他愛のない話をしながら城内を歩けるような気がして、別れの言葉が出て来なかった。
「さようなら……」
レナは、自分の心の中にある恋心にそっと言うと、ガラス玉のペンダントトップを包むようにして握った。暫く収まりそうにない涙を拭うこともせず、外の風が涙をより一層冷たく掠めるのを感じながら、ただ立ち尽くすことしかできない。
人生で初めての恋が、始まって終わった。
次にカイを雇うことができたとしても、その時にはルイスと婚姻関係にあるかもしれない。
(カイは自分と未来を悲観するなと言ったけど……あなたが側にいてくれないだけでそれは難しいわね)
レナの頬を撫でる風は、カイが初めてルリアーナに来た頃よりも随分冷たいものに変わっていた。
これからも季節は巡る。いつの間にか移り行く季節が、不変なものなどないのだとレナに現実を突きつけるようだ。
その移り変わりと共に、レナの抱える胸の痛みも徐々に無くなっていくのかもしれない。
それは、ひどく悲しく、寂しい事のように思えた。
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