アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 31st day 緊急連絡

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 それは、レナが留守中に何があったのかの報告を聞いていた時だった。

「レナ様、先程、パース経由でポテンシア国王から書簡が参りました!」
 城の使用人が、慌てた声を隠すことなくレナの部屋の扉を叩いている。

 差出人の名前からしても、パース経由で、という点についても、恐らく良い知らせではないのだろうとレナは察した。

「どうぞ、緊急なのね?」

 レナはそう言って、ポテンシア国王の書簡を受け取った。
 重厚な上質紙に、旗のエンブレムが箔押しされた国王の証は、何度かやり取りをしたルイスのエンブレムとは違うものだ。
 ポテンシアの王族は、個々に異なるエンブレムを持ち、自分の権力を各所で主張している。

 書簡がパース経由ということは、恐らくパースを攻めていたポテンシア国王からの連絡に違いない。
 レナは緊張しながら国王からの封筒にペーパーナイフを入れた。

「……パースが、ポテンシアに制圧されたわ」
 レナがそう言うと、ちょうどレナに報告に来ていた国内の政治家は肩をがっくり落としている。
 レナの後ろについていたカイも、面倒なことになったなと複雑な顔をした。

「これから……パースはポテンシア領の一部よ。貿易のことと……軍事同盟をどうするのかも……。ポテンシアと決めて行かないといけないわね」
 レナはそう言うと、後ろを振り向いてカイを見た。

「恐らく、ここ数日で色々なことが動くわね。こちらから何かをすることは出来ないけど……ポテンシアの国王陛下には、今迄パースと行って来た同盟のことを決めて行きたいと一報入れておけばいいかしらね……?」

 レナは、いよいよ動き出したポテンシア国王に対して、漠然とした恐怖を感じていた。
 国王はレナがルイスと婚約したことも知っているはずだったが、全くそのことには触れていない。
 それはつまり、自分とルイスの婚約について何の関心を持っていない、という意思の表れなのだろう。

「そうだな。宛名には『お義父様』とでも入れておいてやればいい」
 カイがそう言うと、同席していた政治家はカイを不審な目で見た。

「冗談だぞ?」
 カイはあえてレナに向かってそう言うと、政治家は嫌な物でも見てしまったかのような目でレナを見た。

「ああ、ごめんなさいね、そこにいるカイは、私が思っていることをすぐ口に出してしまうのよ」
 レナがそう言ってにこやかに笑ったので、政治家はいよいよ不審な目をレナとカイに向けた。

 カイは小さな声で、
「言ってくれるな」
 とレナに言う。
「お互い様でしょ」
 レナはそう言って笑った。
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