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the 32nd day 国立図書館にて
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ルリアーナ王国の国立図書館は、城下町の外れにある。白い石造りで屋根がドーム状になった特徴的な建物には、最新の建築技術が用いられ、壁や窓枠に精巧な彫刻が施されている。
建物の中に入ると吹き抜けになっており、ドームの内側には荘厳なフレスコ画が描かれていた。建国者の女王と鷹が人々を導いた宗教画は美しく、芸術への理解を感じることができる。
そして、壁面全てを覆うように設置された本棚が吹き抜けを囲むように3階建てになっている作りは、本の迷宮にでも迷い込んだようだ。
「一日中ここに居ても良いな」
カイが初めてこの図書館を訪れた時の感想だ。カイは母親に似たのか、生まれつき書物が好きだった。異国の図書館の蔵書の多さに感動し、カイは仕事を忘れて本の虫になりかけていた。
「団長、遊びに来てるんじゃないんですよ。調べものですからね?」
ロキが呆れたようにカイを注意する。大量の蔵書の中から必要な情報を見つけるために、ロキは必死だった。
ルリアーナの建国やこれまでの正教会の裏側に、リブニケ王国が関わってきた文献を探しに来ている。残り少ない時間でどこまでのことが分かるか、ロキはレナのために懸命になっていた。
「悪かったな。別に遊んでいるわけじゃない。探求心だ。意外なところから情報が出てくるかもしれないだろ?」
カイは図書館の静かな空間で、囁くような声でロキに反論する。どちらが上司なのか……と気を取り直してロキは文献を漁り続ける。レナの近くに居られる時間があと3日しか残っていないという事実は、じわじわとロキを苦しめていた。
(ない……。昨日1日中探して1階の資料は全部潰したと思ったけど、ここまで探して全く手掛かりがないなんてね……)
ロキは、なかなか収穫の得られない作業に苛立つ一方だった。史学に関わるような、歴史、郷土、伝記などの棚は全て調べつくしても、リブニケ王国に関する記述はどこにも見つからなかったのだ。
目を離した隙に兵法や戦術、気功などの珍しい本を見つけて読み始めてしまうカイを見つけると、ロキは注意せずにいられない。本当にレナの役に立つ気があるのだろうかと、本気で腹が立っていた。
ロキは、城に戻ってきたカイとレナの変化に気付いていた。それまでに築いていた信頼関係のようなものとはまた別の、距離が縮まったような関係性を何度も見せつけられている。
ロキは男女関係に鋭い方だ。レナがカイに惹かれていることは、一目瞭然だった。
最後の夜にレナがカイを城下町に誘ったと聞かされた。ロキがどんなにレナのために必死になっても、隣に置きたいのは目の前にいる黒髪の男らしい。
(ほんと、不愉快だな。こんな女性に全く興味がないような男に負けるなんて)
ロキは、とうとう『世界の貨幣』なる本を手に取ったカイを睨んだ。
「それは……まっったく関係ないだろ……」
ロキに言われて少し気まずそうなカイが、
「『世界』とは、どこまで網羅されているか気になるだろう」
と苦し紛れに言い訳を述べるが、理由になっていない。
任務を外れると友人関係になるカイとロキは、任務中は必ず上下関係をハッキリさせていた。が、ロキはそろそろ我慢の限界だった。
「あんた調べる気あんのかよ?」
「……すまん、つい」
この後、図書館司書に注意され、2人はひたすら頭を下げることになった。
建物の中に入ると吹き抜けになっており、ドームの内側には荘厳なフレスコ画が描かれていた。建国者の女王と鷹が人々を導いた宗教画は美しく、芸術への理解を感じることができる。
そして、壁面全てを覆うように設置された本棚が吹き抜けを囲むように3階建てになっている作りは、本の迷宮にでも迷い込んだようだ。
「一日中ここに居ても良いな」
カイが初めてこの図書館を訪れた時の感想だ。カイは母親に似たのか、生まれつき書物が好きだった。異国の図書館の蔵書の多さに感動し、カイは仕事を忘れて本の虫になりかけていた。
「団長、遊びに来てるんじゃないんですよ。調べものですからね?」
ロキが呆れたようにカイを注意する。大量の蔵書の中から必要な情報を見つけるために、ロキは必死だった。
ルリアーナの建国やこれまでの正教会の裏側に、リブニケ王国が関わってきた文献を探しに来ている。残り少ない時間でどこまでのことが分かるか、ロキはレナのために懸命になっていた。
「悪かったな。別に遊んでいるわけじゃない。探求心だ。意外なところから情報が出てくるかもしれないだろ?」
カイは図書館の静かな空間で、囁くような声でロキに反論する。どちらが上司なのか……と気を取り直してロキは文献を漁り続ける。レナの近くに居られる時間があと3日しか残っていないという事実は、じわじわとロキを苦しめていた。
(ない……。昨日1日中探して1階の資料は全部潰したと思ったけど、ここまで探して全く手掛かりがないなんてね……)
ロキは、なかなか収穫の得られない作業に苛立つ一方だった。史学に関わるような、歴史、郷土、伝記などの棚は全て調べつくしても、リブニケ王国に関する記述はどこにも見つからなかったのだ。
目を離した隙に兵法や戦術、気功などの珍しい本を見つけて読み始めてしまうカイを見つけると、ロキは注意せずにいられない。本当にレナの役に立つ気があるのだろうかと、本気で腹が立っていた。
ロキは、城に戻ってきたカイとレナの変化に気付いていた。それまでに築いていた信頼関係のようなものとはまた別の、距離が縮まったような関係性を何度も見せつけられている。
ロキは男女関係に鋭い方だ。レナがカイに惹かれていることは、一目瞭然だった。
最後の夜にレナがカイを城下町に誘ったと聞かされた。ロキがどんなにレナのために必死になっても、隣に置きたいのは目の前にいる黒髪の男らしい。
(ほんと、不愉快だな。こんな女性に全く興味がないような男に負けるなんて)
ロキは、とうとう『世界の貨幣』なる本を手に取ったカイを睨んだ。
「それは……まっったく関係ないだろ……」
ロキに言われて少し気まずそうなカイが、
「『世界』とは、どこまで網羅されているか気になるだろう」
と苦し紛れに言い訳を述べるが、理由になっていない。
任務を外れると友人関係になるカイとロキは、任務中は必ず上下関係をハッキリさせていた。が、ロキはそろそろ我慢の限界だった。
「あんた調べる気あんのかよ?」
「……すまん、つい」
この後、図書館司書に注意され、2人はひたすら頭を下げることになった。
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