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the 30th night 無事でよかった
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その夜、レナは自室のベランダで外を眺めていた。
見慣れていたはずの城から見下ろす城下町も、城の庭も、城門も、全てが懐かしい。
日常に戻っただけのことなのに、当たり前のように見ていたその風景のひとつひとつが、レナにはキラキラと輝いて見えた。
コンコンと、扉を叩く音が聞こえる。
レナは急いで扉に駆け付けると、自ら扉を開いて自分の護衛を部屋に入れた。
「戻って早々、呼びつけてごめんなさい、相談したいことがあったのよ」
レナは、ずっと一緒に過ごしていたカイの姿を目に入れ、嬉しそうに笑った。
「相談か」
そう言ってカイがいつものテーブル席に着こうとすると、そこには以前飲んだレモネードが置かれていた。
「久しぶりに、レモネードでもどう?」
レナはそう言って2人分のレモネードをグラスに注ぎ、カイの隣の席に着く。
「で、どうした?」
カイはレモネードを飲みながらレナの相談が何なのかを気にしていた。
レナはグラスに口を付けたまま、少し言いづらそうにカイの様子を窺うと、
「最終日の夜、また、一緒に城下町に行きたいの」
と控え目に言った。
「そう言えば、収穫祭前にそんな話もしたんだったな。同行者は誰にする? 別に俺でなくてもいいぞ」
カイが何気なく提案すると、
「……何でよ?」
と、レナは明らかに怒っていた。
「いや、俺と一緒に城下町を歩いても……」
「あなたって本当に、そういうところがなってないわ……」
レナはカイにそう言うと、1杯目のレモネードをぐっと飲み干し、グラスを力一杯テーブルに置いた。
カーンという力強いガラスの音が、暗い部屋に響く。
「カイが同行するのよ、絶対に」
レナの態度にカイは首を傾げながら、
「そうか」
とだけ言って明らかに荒れているレナをじっと見る。
「どこに行きたいんだ?」
「……どこって……」
カイはてっきり、レナがどこか行きたい場所があって城下町に行きたいと言ったのだと思っていた。
最終日になる4日後の夜は、前回城下町を訪れた時のようにナイトマーケットがやっている日でもなければ、花火が上がる日でもない。
「別に、どこでも」
レナがそう言ってカイをじっと見たので、カイは訳が分からない。
「どこでもか……」
そう言ってカイは笑う。
「無事に戻ってこられたんだもの、最後は、お祝いしましょ?」
レナが悲しそうに言ったので、カイは息がつまった。
「そうか」
カイはボソリと呟く。レナの顔をしっかりと見ることが出来なかった。
この仕事が終わる最後の夜、目の前の王女と城下町で何を話し、何をしようというのか。カイには想像もつかない。
「お祝いか。確かに、無事でよかった」
カイはそう言うと、レモネードと共に最後という言葉を飲み込んだ。
見慣れていたはずの城から見下ろす城下町も、城の庭も、城門も、全てが懐かしい。
日常に戻っただけのことなのに、当たり前のように見ていたその風景のひとつひとつが、レナにはキラキラと輝いて見えた。
コンコンと、扉を叩く音が聞こえる。
レナは急いで扉に駆け付けると、自ら扉を開いて自分の護衛を部屋に入れた。
「戻って早々、呼びつけてごめんなさい、相談したいことがあったのよ」
レナは、ずっと一緒に過ごしていたカイの姿を目に入れ、嬉しそうに笑った。
「相談か」
そう言ってカイがいつものテーブル席に着こうとすると、そこには以前飲んだレモネードが置かれていた。
「久しぶりに、レモネードでもどう?」
レナはそう言って2人分のレモネードをグラスに注ぎ、カイの隣の席に着く。
「で、どうした?」
カイはレモネードを飲みながらレナの相談が何なのかを気にしていた。
レナはグラスに口を付けたまま、少し言いづらそうにカイの様子を窺うと、
「最終日の夜、また、一緒に城下町に行きたいの」
と控え目に言った。
「そう言えば、収穫祭前にそんな話もしたんだったな。同行者は誰にする? 別に俺でなくてもいいぞ」
カイが何気なく提案すると、
「……何でよ?」
と、レナは明らかに怒っていた。
「いや、俺と一緒に城下町を歩いても……」
「あなたって本当に、そういうところがなってないわ……」
レナはカイにそう言うと、1杯目のレモネードをぐっと飲み干し、グラスを力一杯テーブルに置いた。
カーンという力強いガラスの音が、暗い部屋に響く。
「カイが同行するのよ、絶対に」
レナの態度にカイは首を傾げながら、
「そうか」
とだけ言って明らかに荒れているレナをじっと見る。
「どこに行きたいんだ?」
「……どこって……」
カイはてっきり、レナがどこか行きたい場所があって城下町に行きたいと言ったのだと思っていた。
最終日になる4日後の夜は、前回城下町を訪れた時のようにナイトマーケットがやっている日でもなければ、花火が上がる日でもない。
「別に、どこでも」
レナがそう言ってカイをじっと見たので、カイは訳が分からない。
「どこでもか……」
そう言ってカイは笑う。
「無事に戻ってこられたんだもの、最後は、お祝いしましょ?」
レナが悲しそうに言ったので、カイは息がつまった。
「そうか」
カイはボソリと呟く。レナの顔をしっかりと見ることが出来なかった。
この仕事が終わる最後の夜、目の前の王女と城下町で何を話し、何をしようというのか。カイには想像もつかない。
「お祝いか。確かに、無事でよかった」
カイはそう言うと、レモネードと共に最後という言葉を飲み込んだ。
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