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the 29th night 安堵
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レナは村の宿で目を覚ました。周りが真っ暗なのを確認し、きっと長い時間眠ってしまったのだろうと分かる。
まずは自分の状況を把握しようと、レナは暗闇の中で目を凝らしてみた。
ふと見ると、自分の寝ていたベッドの脇で、座った姿勢のまま腕を組み、眠っている顔がある。
(カイ……)
レナは、眠る前にカイと話をしたことを思い出した。
実の母が目の前で殺されたことを、無理して強がらないようにと念押しされた。
レナはカイに泣いても良いと言われて大声で泣き、カイの腕に収まりながら泣いた。
レナは、そうしているうちに、連日の睡眠不足とカイがいる安心感で眠ってしまったのだ。
カイも、レナをベッドに寝かせてから仮眠をとることにしたのだろう。
(ここのところ、夜の間中、護衛についていてくれたものね)
思えば、レナがミリーナの呪いに倒れて以降、カイは殆ど休んでいない。
そればかりか、何度もレナは弱音を吐いて、カイを頼っていた。
実は前の晩も、宿で泣きじゃくるレナの側に、カイはずっと付いてくれていたのだ。
レナは、そっとカイの寝顔を盗み見る。穏やかに目を瞑って、小さな寝息を立てている姿が新鮮だった。
初めて見る騎士団長の寝ている姿に、レナはふわっと優しい気持ちが自分の中で湧き上がるような、穏やかな感覚を覚えた。
(沢山、心配をかけたわね)
今回の護衛にカイ・ハウザー以外の人間を雇っていたら、今頃レナは呪いに倒れたまま死に至る途中だったかもしれない。
それどころか、収穫祭の日の時点で殺されるか、攫われるかしていたのではないか。
レナは、カイの護衛を雇っている期間が、もう少しで切れることを思い出した。
感情論だけで言うならば、レナはこのままずっとカイを雇っていたい。
それも、ルイスと婚約したことで考え直さなければいけないのだと、理屈が感情を抑え込む。
間違いなく、レナにはやることがある。
カイを雇う金額で自衛のための人材を育てなければいけない時に来ていることを、レナはしっかりと認識していた。
(あなたともうすぐお別れなんて、寂しいわ……)
レナはカイの顔を覗き込み、こんなことなら人の安眠を妨げない呪術を覚えていたかったと思う。
目の前の優秀な護衛は、感覚が鋭いらしい。レナの気配ですぐに目を覚ましてしまうかもしれないのだ。
レナは祝福の加護と呼ばれる呪術の力をそっと込め、カイの頬に軽く唇を当てた。
「あなたの明日に、素敵な加護がありますように」
小さな声で祈りを込める。カイはまだ穏やかな顔で眠っていた。
(ありがとう、側にいてくれたのが、あなたで良かった)
レナはカイの寝顔に微笑み、そっと額にも唇を当てる。カイの体温が、触れたところから伝わって来る。レナは急に恥ずかしくなってベッドに逃げ込んだ。
ベッドの中に入ったレナは、カイの座っている場所になるべく身体を寄せる。
そうして、まだ眠い身体を再び休めることにした。
まずは自分の状況を把握しようと、レナは暗闇の中で目を凝らしてみた。
ふと見ると、自分の寝ていたベッドの脇で、座った姿勢のまま腕を組み、眠っている顔がある。
(カイ……)
レナは、眠る前にカイと話をしたことを思い出した。
実の母が目の前で殺されたことを、無理して強がらないようにと念押しされた。
レナはカイに泣いても良いと言われて大声で泣き、カイの腕に収まりながら泣いた。
レナは、そうしているうちに、連日の睡眠不足とカイがいる安心感で眠ってしまったのだ。
カイも、レナをベッドに寝かせてから仮眠をとることにしたのだろう。
(ここのところ、夜の間中、護衛についていてくれたものね)
思えば、レナがミリーナの呪いに倒れて以降、カイは殆ど休んでいない。
そればかりか、何度もレナは弱音を吐いて、カイを頼っていた。
実は前の晩も、宿で泣きじゃくるレナの側に、カイはずっと付いてくれていたのだ。
レナは、そっとカイの寝顔を盗み見る。穏やかに目を瞑って、小さな寝息を立てている姿が新鮮だった。
初めて見る騎士団長の寝ている姿に、レナはふわっと優しい気持ちが自分の中で湧き上がるような、穏やかな感覚を覚えた。
(沢山、心配をかけたわね)
今回の護衛にカイ・ハウザー以外の人間を雇っていたら、今頃レナは呪いに倒れたまま死に至る途中だったかもしれない。
それどころか、収穫祭の日の時点で殺されるか、攫われるかしていたのではないか。
レナは、カイの護衛を雇っている期間が、もう少しで切れることを思い出した。
感情論だけで言うならば、レナはこのままずっとカイを雇っていたい。
それも、ルイスと婚約したことで考え直さなければいけないのだと、理屈が感情を抑え込む。
間違いなく、レナにはやることがある。
カイを雇う金額で自衛のための人材を育てなければいけない時に来ていることを、レナはしっかりと認識していた。
(あなたともうすぐお別れなんて、寂しいわ……)
レナはカイの顔を覗き込み、こんなことなら人の安眠を妨げない呪術を覚えていたかったと思う。
目の前の優秀な護衛は、感覚が鋭いらしい。レナの気配ですぐに目を覚ましてしまうかもしれないのだ。
レナは祝福の加護と呼ばれる呪術の力をそっと込め、カイの頬に軽く唇を当てた。
「あなたの明日に、素敵な加護がありますように」
小さな声で祈りを込める。カイはまだ穏やかな顔で眠っていた。
(ありがとう、側にいてくれたのが、あなたで良かった)
レナはカイの寝顔に微笑み、そっと額にも唇を当てる。カイの体温が、触れたところから伝わって来る。レナは急に恥ずかしくなってベッドに逃げ込んだ。
ベッドの中に入ったレナは、カイの座っている場所になるべく身体を寄せる。
そうして、まだ眠い身体を再び休めることにした。
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