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the 29th day 世間話
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目的地の村に着くと、サラとサーヤは3名の近衛兵と共に飲食店で食事を取りながら待機になった。
レナとカイ、レオナルドの3人はミリーナを探しに出かけていく。その後ろ姿をサーヤは店内から眺めていた。
「実の母親を罪人として捕らえに行くなんて、とてもじゃないけど私にはできません」
サーヤは頬杖をつきながら言った。
「すみません……人違いかもしれませんが、あなたがサーヤ様ですか?」
近衛兵の1人に尋ねられ、サーヤが、
「ええ、そうですが、何か?」
と答えると、近衛兵たちは3人でわっと盛り上がっている。
「いえ、ブラッドさんが王女殿下の侍女の方について話をしておりましたので、もしやと思ったんです」
近衛兵たちに言われてサーヤは困りながら、
「あ……あの、クラウス様は、他になんて言ってました?」
と余計なことを言われていないか確認しようとした。サラは隣でその一部始終を興味深げに眺めている。
「仕事熱心で、気の利く女性だと褒めていましたが……まあブラッドさんのことだから、あなたにご迷惑をおかけしたかもしれませんね」
「女性相手だと、途端に不器用な方ですからね」
近衛兵たちはブラッドをフォローしていた。サーヤは余計なことは言われていないようだとほっとする。
「もしサーヤさんにお相手がいないようなら、ブラッドさん良いんですけどねー。不器用なだけで優良物件、お薦めですけど……」
近衛兵の一人が言った。
「なんで私に、クラウス様を薦めるんですか……」
サーヤは明らかに不機嫌な顔をする。
「いや、ブラッドさんも適齢期で結婚願望も強いですし、最上級の優良物件なんですが……。女性のことになるとどこかずれているんで心配してるんです。私たちがブラッドさんから聞いたサーヤさんであれば、きっとブラッドさんを幸せにしてくれるんじゃないかと……」
近衛兵のひとりが話している間、あとの2名も大きく頷いていた。
「どうして、私がクラウス様を幸せにしなきゃいけないんですか……」
サーヤが嫌悪感を隠さない顔で言うと、
「ああいうタイプには、気が利く女性が身近にいるだけで人生が180度変わったりするものですし……。お互い王女殿下と王子殿下についているので、会話も合うんじゃないかと……」
と近衛兵が答えたので、サラが、
「まあ確かに、部外者から見れば一理あるわね」
と口を開く。
「だけどねえ、あんたたちの『ブラッドさん』はどうもサーヤさんの気持ちを汲むのが苦手みたいなのよ。加えて、今はうちの団長みたいな男性が近くにいるでしょ? もう少し『ブラッドさん』の魅力がサーヤさんに伝わるように、行動してもらった方がいいんじゃないかしら?」
と近衛兵に言って睨みを利かせた。
「まあ……確かに……」
近衛兵の1人はブラッドを思い浮かべながらサラの言うことが最もだと納得しているようだった。
「ブラッドさんがカッコイイのは仕事中だけですし、これといって女性に向けてアピールできるところがないのも事実……」
「クラウス家はポテンシアでは名門中の名門なんですが、そういうのはあんまりですか?」
「家柄勝負はダメだろ……サーヤさんだって王女殿下付きなんだから、良縁の話が来るはずだ……」
3人は頭を抱えながらブラッドの良いところを挙げ始めたが、すぐに煮詰まったようだった。
「もう、なんなんですか、私にだって選ぶ権利はあるんですからね?」
サーヤはそう言って飲食店のメニューを持ち、昼食を選び始めた。
「ああでも……おばさんからのアドバイスだけど、結婚相手は顔で選んじゃだめよ」
突然サラがサーヤに真剣な顔で言ったので、サーヤは驚いて目を丸くした。
「サラさんの騎士団の男性陣、みなさま揃って顔が整っている気がしますけど……」
サーヤはメニューを持ったままサラをじっと見ると、
「あたしたちの仕事はサービス業みたいなものだから、見た目の良い男はそれだけで有利なところもあるのよ……。でもね……あの子たち、女の子が寄って来る分、ちょっと危ういのよね……」
とサラは深いため息をつきながらしみじみと言った。
「ハウザー様は違うじゃないですか!」
サーヤが必死にカイを庇おうとしたが、
「団長は結婚しないわよ、あの調子だと恐らく、誰とも……」
とサラは低い声で言った。
「遊び人が改心して家庭に入るなんてことは、幻想だと思いなさい……。顔が良くて見た目で良い思いをしているような男が、結婚後も外でその恩恵を受けないとでもお思い? 男ってのはね……いくつになってもその辺が愚かにできているのよ……」
サラの迫力のある声と顔に、その場にいた全員は凍った。
「じゃ、じゃあ、サラさんはどんな人だったら良いって言うんですか……」
サーヤがサラの迫力に圧倒されながら尋ねると、
「女性の言うことをよく聞いて、反論せず、家庭のために奴隷になれる男と結婚しなさい……」
とサラは不敵な笑みを浮かべた。
「……なんだか、結婚に夢を持たせない持論ですね……」
近衛兵の1人が沈んだ顔で言うと、
「結婚に夢を持つのは、若い証拠よ……」
とサラが続けたので、サーヤは頭を抱えながら、
「それも少し違う気がします……」
と渋い顔をしていた。
レナとカイ、レオナルドの3人はミリーナを探しに出かけていく。その後ろ姿をサーヤは店内から眺めていた。
「実の母親を罪人として捕らえに行くなんて、とてもじゃないけど私にはできません」
サーヤは頬杖をつきながら言った。
「すみません……人違いかもしれませんが、あなたがサーヤ様ですか?」
近衛兵の1人に尋ねられ、サーヤが、
「ええ、そうですが、何か?」
と答えると、近衛兵たちは3人でわっと盛り上がっている。
「いえ、ブラッドさんが王女殿下の侍女の方について話をしておりましたので、もしやと思ったんです」
近衛兵たちに言われてサーヤは困りながら、
「あ……あの、クラウス様は、他になんて言ってました?」
と余計なことを言われていないか確認しようとした。サラは隣でその一部始終を興味深げに眺めている。
「仕事熱心で、気の利く女性だと褒めていましたが……まあブラッドさんのことだから、あなたにご迷惑をおかけしたかもしれませんね」
「女性相手だと、途端に不器用な方ですからね」
近衛兵たちはブラッドをフォローしていた。サーヤは余計なことは言われていないようだとほっとする。
「もしサーヤさんにお相手がいないようなら、ブラッドさん良いんですけどねー。不器用なだけで優良物件、お薦めですけど……」
近衛兵の一人が言った。
「なんで私に、クラウス様を薦めるんですか……」
サーヤは明らかに不機嫌な顔をする。
「いや、ブラッドさんも適齢期で結婚願望も強いですし、最上級の優良物件なんですが……。女性のことになるとどこかずれているんで心配してるんです。私たちがブラッドさんから聞いたサーヤさんであれば、きっとブラッドさんを幸せにしてくれるんじゃないかと……」
近衛兵のひとりが話している間、あとの2名も大きく頷いていた。
「どうして、私がクラウス様を幸せにしなきゃいけないんですか……」
サーヤが嫌悪感を隠さない顔で言うと、
「ああいうタイプには、気が利く女性が身近にいるだけで人生が180度変わったりするものですし……。お互い王女殿下と王子殿下についているので、会話も合うんじゃないかと……」
と近衛兵が答えたので、サラが、
「まあ確かに、部外者から見れば一理あるわね」
と口を開く。
「だけどねえ、あんたたちの『ブラッドさん』はどうもサーヤさんの気持ちを汲むのが苦手みたいなのよ。加えて、今はうちの団長みたいな男性が近くにいるでしょ? もう少し『ブラッドさん』の魅力がサーヤさんに伝わるように、行動してもらった方がいいんじゃないかしら?」
と近衛兵に言って睨みを利かせた。
「まあ……確かに……」
近衛兵の1人はブラッドを思い浮かべながらサラの言うことが最もだと納得しているようだった。
「ブラッドさんがカッコイイのは仕事中だけですし、これといって女性に向けてアピールできるところがないのも事実……」
「クラウス家はポテンシアでは名門中の名門なんですが、そういうのはあんまりですか?」
「家柄勝負はダメだろ……サーヤさんだって王女殿下付きなんだから、良縁の話が来るはずだ……」
3人は頭を抱えながらブラッドの良いところを挙げ始めたが、すぐに煮詰まったようだった。
「もう、なんなんですか、私にだって選ぶ権利はあるんですからね?」
サーヤはそう言って飲食店のメニューを持ち、昼食を選び始めた。
「ああでも……おばさんからのアドバイスだけど、結婚相手は顔で選んじゃだめよ」
突然サラがサーヤに真剣な顔で言ったので、サーヤは驚いて目を丸くした。
「サラさんの騎士団の男性陣、みなさま揃って顔が整っている気がしますけど……」
サーヤはメニューを持ったままサラをじっと見ると、
「あたしたちの仕事はサービス業みたいなものだから、見た目の良い男はそれだけで有利なところもあるのよ……。でもね……あの子たち、女の子が寄って来る分、ちょっと危ういのよね……」
とサラは深いため息をつきながらしみじみと言った。
「ハウザー様は違うじゃないですか!」
サーヤが必死にカイを庇おうとしたが、
「団長は結婚しないわよ、あの調子だと恐らく、誰とも……」
とサラは低い声で言った。
「遊び人が改心して家庭に入るなんてことは、幻想だと思いなさい……。顔が良くて見た目で良い思いをしているような男が、結婚後も外でその恩恵を受けないとでもお思い? 男ってのはね……いくつになってもその辺が愚かにできているのよ……」
サラの迫力のある声と顔に、その場にいた全員は凍った。
「じゃ、じゃあ、サラさんはどんな人だったら良いって言うんですか……」
サーヤがサラの迫力に圧倒されながら尋ねると、
「女性の言うことをよく聞いて、反論せず、家庭のために奴隷になれる男と結婚しなさい……」
とサラは不敵な笑みを浮かべた。
「……なんだか、結婚に夢を持たせない持論ですね……」
近衛兵の1人が沈んだ顔で言うと、
「結婚に夢を持つのは、若い証拠よ……」
とサラが続けたので、サーヤは頭を抱えながら、
「それも少し違う気がします……」
と渋い顔をしていた。
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