アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 26th day 希望を繋げ

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 レジスタンスの牧師や修道士の間で、ルリアーナ城のハオルは有名人だった。王家の側に仕えながら、王政を全面に肯定することなく、レジスタンスへの寄付額も大きな貴族階級の紳士だ。
 そのため、城に連れられたレジスタンスの修道士・修道女たちは、ハオルに声を掛けられ途端に安心する。

「さて、皆さまの力をお借りして、王女の呪いを解く方法を考えて欲しいのです。ミリーナ様の呪いですが、実際この国は王女に頼ってなんとか持ちこたえているのが現状です。このままでは国が混乱してしまう」
 ハオルが説明すると、レジスタンスの者たちは事実に衝撃を受けた。

「ハオル様が言うのであれば信じますが、王家はこの国に必要なのですか……?」
 同じ広間にいる正教会の聖職者たちが、穏やかでない顔をしていた。ハオルはその視線を気にせず、レジスタンスの者たちに語り掛けた。

「この国は、王女に全ての責任を負わせて成り立とうとしてきました。そこを変えたいのは確かですが、それは王女の命に代えるものではありません。ミリーナ様にも、これ以上恨みや呪いの連鎖を起こさないで欲しい。きっと、この呪いを発動させたことで、あの方にもそれ相応の対価が出ているはずですから」
 ハオルの言葉に、レジスタンスの修道士・修道女たちは徐々に理解を示していく。

「お願いします、王女のところで、術式を解いていただきたい」
 ハオルが床に膝をついて頭を下げると、修道士・修道女たちはハオルに駆け寄って「分かりました」とハオルを起こす。

「ハオル様が、そこまで必死になるのでしたら……王女様は私たちにとっても救わなければいけない方なのでしょう」
 ひとりの修道女がそう言うと、その場にいた者たちも頷いた。ハオルは頭を上げられずに、
「ありがとうございます、お願いします」
 と言いながら、今にも泣き出しそうな顔で下を向いて震えていた。


 レナの周りに集まったのは8名の呪術師だった。

「複雑な術ですね」
「条件が揃って発動しているらしいですが、完全ではないんじゃないですか?」
「一旦進行を止めることは出来そうじゃないですか?」

 呪術師たちは、それぞれの見解を話し合っている。その隣にはシンとロキが護衛に付いていた。話に耳を傾けながら、かなり前向きに術を解く方法が出ていることに希望を抱き始める。

「自分に掛けられた術だから私には見えないのですが、どんな術が掛かっているんですか?」

 レナは呪術師たちが話している内容が気になっていた。自分も術の読解に加わって何か出来ればと思っている。
 呪術師たちはそんなレナの様子に驚いて、術について説明しながら呪術の仕組みを丁寧に教えた。

「私には、この呪いの解除の方法が……思いつきません」
 ひと通り説明を受けたレナが愕然としながら言った。
「でも、呪いの進行を抑える理屈は分かったわ」
 レナの言葉に、シンとロキが悲しそうな顔を浮かべる。

「なんて複雑な術式を書いたのかしらね、私のお母様は……」
 レナはそう言って力なく笑う。呪術師たちは、それこそがミリーナの脅威なのだと言葉に詰まっていた。

「ひとまず、この呪いの進行を抑える術を、施しましょう」
 ひとりの呪術師が言った。
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