アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 27th night 幸せを願った

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 その夜の護衛は、レナの自室に入り、レナの様子を見張る形になった。

 カイは、シンとロキをひとりずつレナの自室に入れるのは何となく心配で、シンとロキの2人1組とカイの交代制でシフトを組んだ。

「明日から、気を付けてくださいね」
 レナの部屋に護衛に入ったシンとロキは、眠れないらしいレナに声を掛けた。

「そうね、こうなってみると、私自身が一番危ないんじゃないかと思うけど」
 レナがそう言って苦笑したのを、シンもロキも悲痛な表情で受け止めている。

「そんなに暗くならないで。呪いなんて言われたら驚くし、母親に呪われたなんて笑えないけど……」
 レナがそう言って2人に声を掛けるが、シンもロキも行き場のない怒りと悔しさに項垂れていた。

「何で、殿下が呪われなきゃいけないんですか……代われるものなら、代わるのに……」
 ロキは床に座り、下を向いて小さな声で呟いている。

「王家がやってきたことが問題だったのよ。私は、祖先の罪を負ったのね」
 レナは、2人の前ではまるで納得しているかのように振舞った。それがどう考えても強がっていることが分かるので、シンもロキもやりきれない。

「大丈夫ですよ、あれだけ何人もの呪術師が来て、呪いを抑える術を施してくれたんですから」
 シンは気休めだと分かりながらも、そう言うほかなかった。レナが一番不安なはずなのに、王女という立場が弱音を吐かせない様子が痛々しい。

 数日前までは、普通に笑っていたレナが、今は呪いに対する恐怖で心からの笑顔が出なくなっている。

「こうやって夜が来るとね、今日も私は自分で居られたって安心する。でも、眠っている間に自分が自分じゃなくなって、いつの間にか周りの人を傷付けたり、誰かを困らせたりするかもしれない」
 レナがポツリと本音を言った。それまで気丈に振舞っていた王女は、眠ることを怖がっていた。

「大丈夫です。何かあったらここには護衛がいます。団長もすぐ近くにいます。明日は長距離移動が続くんですから、ゆっくり寝てください」
 ロキはレナの身体を気遣ってそう言ったが、レナは納得したようなしていないような顔で、
「あなた達が……カイがいなかったら、どうなっていたことか……」
 と言うと、堪らずベッドの中に潜り込む。そのまま、声を殺して泣いていた。

 シンはレナの無念を見て静かに涙を流し、ロキは拳を握りながら天井を見つめて奥歯を噛み締めている。

 2人は、レナの幸せを願っていたはずだった。
 雇用主の王女を、なんとか守り抜きたかった。あまりにも残酷な現実が、自分たちの無力さを思い知らせてくる。

 上司のカイが、この理不尽を解決してくれることを願うしかない。2人にできることは、もう残っていなかった。
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