アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 27th day 女同士の会話

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 サラは怪我に倒れてから、毎日訪ねてくるサーヤと会話をしている。

「まさか、王女様に呪いだなんて、想像もしなかったことが次々に起きているわね」
 サラはそう言って、今頃レナはどれだけショックを受けて過ごしているのだろうかと胸を痛めた。

「私、王政に対して不信感があったのは確かなんです。それでレジスタンスの……ルリアーナ信教を信じていましたが、まさかミリーナ様がレナ様のお母様で、個人的な恨みでレジスタンスを大きくしていたなんて……。それに、私、王家がなければ大してできる仕事も無かったかもしれないことに最近気付きました……」
 サーヤはサラにそう言って苦笑する。

「立場が変われば、意見も変わるわね。あたしは王政自体を悪いとは思わないけど、ルリアーナには昔にできた細かい問題が多そうだから……呪い以外にも王女様には試練が多い気がして、心配だわ。何の罪もない王女様が辛い思いをするのは、やり切れないじゃない」

 サラは、まだ呪いに倒れた後のレナに会っていない。今頃どんな様子で過ごしているのだろうかと心配していた。

「何の罪もない……そうですね」
 サーヤはサラの言葉を繰り返し、納得しているようだった。

「サーヤさん、あたしたちは時間が限られているの。契約の通りなら、あと1週間。そうしたらこの城を後にして、ルリアーナに任務で来ることはなくなるわ。こうして毎日サーヤさんと話しているのは楽しかったから、寂しいけど」
 サラはそう言ってサーヤに微笑んだ。

「サラさん……ハウザー様の契約は延長されないんですか? もう、行ってしまわれるんですか?」
 サーヤは、急に出た別れの時間を聞いて驚いた。

「うん、そうね。王女様の問題がどうなるかだけど、ポテンシア王国との関係が深くなれば、ここには異国人の騎士は要らないでしょ。今回はあたしも怪我したり、一般人の被害者が出る事件があったりと後味が悪いこともあったけど、でも、この国のことは変わらず好きよ」
 サラはそう言うと窓の外に目をやった。

 そこには変わらず豊かな自然が広がり、農園が自然に溶け込んだ美しい風景がある。
 サラはもう横にはなっていない。既に日常の動作ができる身体を取り戻していた。

 サラとサーヤは短時間だけの世間話を楽しんだ。サーヤは、サラがもうすぐ城を離れてしまうのを残念に思う。

 ハウザー騎士団の団員がルリアーナ城にいるのが、すっかり当たり前のようになっていた。

 もうあと1週間もすれば、カイもサラも城からいなくなってしまうのだ。
 カイへの想いも、サラとの関係も、あと1週間後には無かったことのように日常が変わってしまうのだろうか。

 サーヤは、現実をうまく認められず、暫く茫然と立ち尽くしていた。
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