アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 27th day 力になれない

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 朝になり、レナはルイスとカイに席を外させて身支度を始めた。その時のレナの様子は、いつも通りで変わりがなかった。
 ルイスはそれを痛々しく感じながらも、こんな時にでも取り乱さないのは王女として育った所以なのだろうと理解する。

 カイが部下のところに行ったので、ルイスはブラッドを探してこれからどうするかを相談することに決めた。
 レナがカイを連れてミリーナを探しに行くとなると、ルイスも一度戻った方が良いのかもしれない。


「ブラッドは居るかい?」
 ルイスが護衛の部屋に声を掛けると、中からブラッドが急いで出て来た。
「いかがされましたか?」
 焦って出て来たらしいブラッドは、まだ着替えも済んでいなかった。

「ああ。少し話したいことがあったんだけど、この城の中で私たちが話をしていても差し支えの無い場所ってあるかな??」
 ルイスがブラッドに尋ねると、
「いやー……ルイス様はどこに行っても差し支えあるんじゃないでしょうか……?」
 とブラッドは悩んだ後、
「ああ、隣の部屋に行きましょうか」
 とレナの部屋と繋がっているいつもの部屋にルイスを案内した。


「レナ様は、ミリーナを探しに行くつもりらしい」
 ルイスがブラッドに伝えると、
「そうなんでしょうね……。昨日の感じだと、呪いを解くことは難しそうな話でしたから……」
 とブラッドは悔しそうに顔を歪めていた。

「君は、どうしたい? 私は……聖職者たちを帰して、一度屋敷に帰ろうかと思っているんだ」
 レナの呪いが解ける前に戻るのは不本意だったが、このままレナが居なくなったルリアーナ城に留まっていても、不安が募るだけで何もできない。かえって辛くなりそうだ。
 ルイスにも領地があり、ずっと自国を離れているのもそれはそれで問題だった。

「私はルイス様の護衛です。ルイス様がそうおっしゃるなら、どこまでも付いて行きます」
 ブラッドは迷いなく言うと、いよいよ自分たちには何もできなくなってしまったのだと悟った。

 国の呪術師たちを集めたのに、レナを呪いから救うことは叶っていない。
 あんなにスウの呪術と対峙したのに、呪いの前でブラッドは無力だった。

「ハウザー殿が、きっと……王女を救ってくれるはずです」
 ブラッドが自分にも言い聞かせるように言う。
「レナ様も、よくそんな護衛を見つけてきたものだね」
 ルイスは不安でたまらない気持ちを、なんとか前に向けようとしていた。ブラッドは、そんなルイスが救われるよう、カイの健闘を祈る。

 ブラッドは、昨日からいつの間にかいなくなっていたレオナルドの姿を探したが、結局その姿は忽然と消えたまま、見つかることは無かった。
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