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the 26th night 出来ることの限界
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その日の夜、レナの自室にはカイとルイスがいた。
「あなたの本名は『ヘレナ・ルリアーナ』らしいな。この国は、名は改名できないのだろう? 母親が届け出たヘレナがあなたの名前ということになるらしいが……」
ルイスがエキストラベッドの上から、レナに向かって話しかけた。
「とはいっても、あなたの産みの母がその名をつけてから、殆ど呼ばれていない名前だと聞いた。やはりレナ様と呼んだ方が良いような気がして……そのままでいようと思っているよ」
「そうですね、私、ヘレナと言われても自分じゃないみたいで、本名だからといって名乗るのは抵抗があります。女神の化身なんて大層な名前ですし」
とレナは頷く。自分の本名など、もはや他人事のようだった。
「農業国の王女が豊穣の女神なんて、とてもありがたいじゃないか」
ルイスは努めて明るく言ったが、その名を付けた母親に呪われたレナの気持ちを考えるとやりきれない。
「先程、呪いの進行を抑える術を施していただきました。あくまでも対処療法でしかありませんが、私が術師として周りに何かするようなことは防ぎたかったから……」
レナが自分のベッドからルイスとカイに語りかける。
「あなたは、こんな時にまで周りのことを考えるんですね」
ルイスが離れた場所に設置されたエキストラベッドからレナを見て悲しそうに言う。国の暗部に振り回され、呪いをかけたられたというのにレナは自分のことはあまり口にしなかった。
「ルイス様には、本当に感謝しています。ここまで私のために動いていただけるなんて」
レナはそう言うと、
「でも、もう私のことでお手を煩わせるのは……ルイス様には、これ以上この国と私のために動いていただく必要はありません。呪術師の方たちに見ていただいた上で、呪いを解くのは難しそうだから……」
と付け加えた。
「諦めるのですか?」
ルイスは責めるようにレナに言った。こんなことでレナを諦めるなど、ルイスには考えられない。
「カイは、どう思う?」
レナは自分の近くにいる護衛に尋ねた。
「ミリーナを探しに行くしかないと思っています」
カイは当然のように言った。レナは呪いに倒れた日にも同じことを言われていたので、やはりそれしかないのだろうとカイの言葉に頷く。
「そうね、あちらは高位の呪術師だから、カイと私で行きましょう……。恐らく他の者には、負いきれないわ」
レナはそう言ったが、自分のような呪術師としての経験が浅い者がミリーナに敵うとは思えない。
それに、相手は自分の母親だ。記憶にはなかったが、目の前にした時、ちゃんと向き合える自信が持てない。
「大丈夫です。殿下の呪術だけでなく、私の術があります」
レナの不安を読んだように、カイが言った。
「頼んだよ、ハウザー団長。悔しいが、どうやら君だけが頼りだ」
ルイスは、自分にはこれ以上出来ることが無いことを悟る。
諦めるつもりはないが、打つ手がない。ルイスは絶望に飲み込まれそうになりながら、必死にレナの無事を願った。
ルイスは、生まれのせいで失うことに慣れていた。大抵のものには執着せずに、多くの物を手放してきた人生だった。
そんなルイスも、今回の事態だけは受け入れることができない。
婚約者として手に入れたレナを失うなど、全てを壊されることに等しかった。
「あなたの本名は『ヘレナ・ルリアーナ』らしいな。この国は、名は改名できないのだろう? 母親が届け出たヘレナがあなたの名前ということになるらしいが……」
ルイスがエキストラベッドの上から、レナに向かって話しかけた。
「とはいっても、あなたの産みの母がその名をつけてから、殆ど呼ばれていない名前だと聞いた。やはりレナ様と呼んだ方が良いような気がして……そのままでいようと思っているよ」
「そうですね、私、ヘレナと言われても自分じゃないみたいで、本名だからといって名乗るのは抵抗があります。女神の化身なんて大層な名前ですし」
とレナは頷く。自分の本名など、もはや他人事のようだった。
「農業国の王女が豊穣の女神なんて、とてもありがたいじゃないか」
ルイスは努めて明るく言ったが、その名を付けた母親に呪われたレナの気持ちを考えるとやりきれない。
「先程、呪いの進行を抑える術を施していただきました。あくまでも対処療法でしかありませんが、私が術師として周りに何かするようなことは防ぎたかったから……」
レナが自分のベッドからルイスとカイに語りかける。
「あなたは、こんな時にまで周りのことを考えるんですね」
ルイスが離れた場所に設置されたエキストラベッドからレナを見て悲しそうに言う。国の暗部に振り回され、呪いをかけたられたというのにレナは自分のことはあまり口にしなかった。
「ルイス様には、本当に感謝しています。ここまで私のために動いていただけるなんて」
レナはそう言うと、
「でも、もう私のことでお手を煩わせるのは……ルイス様には、これ以上この国と私のために動いていただく必要はありません。呪術師の方たちに見ていただいた上で、呪いを解くのは難しそうだから……」
と付け加えた。
「諦めるのですか?」
ルイスは責めるようにレナに言った。こんなことでレナを諦めるなど、ルイスには考えられない。
「カイは、どう思う?」
レナは自分の近くにいる護衛に尋ねた。
「ミリーナを探しに行くしかないと思っています」
カイは当然のように言った。レナは呪いに倒れた日にも同じことを言われていたので、やはりそれしかないのだろうとカイの言葉に頷く。
「そうね、あちらは高位の呪術師だから、カイと私で行きましょう……。恐らく他の者には、負いきれないわ」
レナはそう言ったが、自分のような呪術師としての経験が浅い者がミリーナに敵うとは思えない。
それに、相手は自分の母親だ。記憶にはなかったが、目の前にした時、ちゃんと向き合える自信が持てない。
「大丈夫です。殿下の呪術だけでなく、私の術があります」
レナの不安を読んだように、カイが言った。
「頼んだよ、ハウザー団長。悔しいが、どうやら君だけが頼りだ」
ルイスは、自分にはこれ以上出来ることが無いことを悟る。
諦めるつもりはないが、打つ手がない。ルイスは絶望に飲み込まれそうになりながら、必死にレナの無事を願った。
ルイスは、生まれのせいで失うことに慣れていた。大抵のものには執着せずに、多くの物を手放してきた人生だった。
そんなルイスも、今回の事態だけは受け入れることができない。
婚約者として手に入れたレナを失うなど、全てを壊されることに等しかった。
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