167 / 221
the 26th day 事情聴取
しおりを挟む
夕方を過ぎると、ルリアーナ城に各地の聖職者が到着した。城の大広間に集められ、何をされるのか、何が起きるのかと恐怖におののいている。ポテンシア兵は誰もが無傷で、聖職者は軽い打撲程度の怪我をしている者もいた。
暫くすると、広間に背の高い黒髪の男が現れ、誰がどこから来た聖職者なのかを確認し始める。
「あの……なぜ私がここに来なければならなかったのか、分かっていないのですが」
1人の聖職者が恐る恐る口を開くと、黒髪の男は、
「ああ、事情を聞いたらすぐに開放するつもりだ。ただ、協力者を探している」
とぶっきらぼうに言った。その場にいる聖職者は『協力者』という言葉に、自分たちが糾弾されるために呼ばれたのではないのだとひとまず安心した。
「さっそく、そこの正教会の神父から、事情を聞かせてもらおうか。別室に一緒に来てもらおう」
黒髪の男が1人の聖職者を呼んだので、その場に緊張が走る。
「はい……」
黒髪の男は兵士風の見た目で、黄人、瞳の色も独特のグレーがかった黒だった。ルリアーナ人ではないことがハッキリ分かる。その場にいた聖職者たちの心中は、決して穏やかではなかった。
「さて、早速だが……正教会といえば先日こちらでメイソン元公爵を捕らえている。その後も、牢から呪術を使って悪事を働こうとした疑いがあるんだが……。何か知らないか?」
カイは正教会の神父から事情聴取を始めた。隣にはルイスも座っている。
「その辺の事情……ですか。私も一応教会を運営している程度で、特別なことは行っておらず、特別有力者との関わりも持っていません……」
神父が怯えながら話しているのを、カイは嘘をついていないか観察しながら更に続ける。
「正教会は、昔から王家との癒着で成り立っていたのだろう?」
カイが鋭い瞳で尋ねたので、神父は何か恐ろしいものに睨まれたように怯え、
「いえ、私は……ルリアーナ女王の魂を祀り、後世に伝えることだけを行っているので……」
と答えた。
「教会での活動に対して、誰かに何かを指示されることも無いのか?」
カイはシンとロキから正教会は殆ど活動をしていない教会が多いと聞いていたため、なぜなのか不思議に思っていた。
「ええ……先導士がいたころは、各地に先導士の力で指示が飛んでいた時代もあったようですが、もう先導士がいなくなって20年ですから……」
神父がそう言ったので、
「先導士がいたころは、指示が飛んでいたんだね。具体的には、どんな?」
とルイスが穏やかに尋ねた。
「王家の行事ですとか、先日の収穫祭のことですとか、昔は天候を操る行事のことが流れたりしたらしいです」
神父の言葉には嘘がなさそうだ。
「先導士と王家の繋がり……王家がやっていたことは、知っているんだね?」
ルイスは神父に含みを持たせながら尋ねると、神父は気まずそうに頷いた。
「ふうん……。聖職者とはいえ、そこは、知っていて見て見ぬフリか」
ルイスが冷たく言い放ったので、神父はぞっとしながら下を向いた。
「王家のやることが間違っているなど……とても思えないのです……」
神父は振り絞るように言った。それを聞いたカイは、
「ありがちだな」
と半ばあきれた様子を口にする。ルイスは小さく笑うと、
「君の主張は分かったよ。とりあえず、また広間で待っていてもらおう。ありがとう」
とその場の聴取は終わりになった。
ルイスの合図でポテンシア兵がやってきて、神父を連れて広間に戻って行く。
「そういうことらしいぞ、ハウザー団長」
ルイスはカイに声を掛けた。
「正教会は、王家に利用されていた線が強そうですね。メイソンと組んでいた人間まであぶりだせると良いんですが。今回は難しいかもしれません」
カイはそう言うと、次の聖職者を待った。
次々に話を聞いて、事情を把握していく必要がある。それとは別に、ハオルが広間でレジスタンスの者を集めて呪術師を募っていた。
暫くすると、広間に背の高い黒髪の男が現れ、誰がどこから来た聖職者なのかを確認し始める。
「あの……なぜ私がここに来なければならなかったのか、分かっていないのですが」
1人の聖職者が恐る恐る口を開くと、黒髪の男は、
「ああ、事情を聞いたらすぐに開放するつもりだ。ただ、協力者を探している」
とぶっきらぼうに言った。その場にいる聖職者は『協力者』という言葉に、自分たちが糾弾されるために呼ばれたのではないのだとひとまず安心した。
「さっそく、そこの正教会の神父から、事情を聞かせてもらおうか。別室に一緒に来てもらおう」
黒髪の男が1人の聖職者を呼んだので、その場に緊張が走る。
「はい……」
黒髪の男は兵士風の見た目で、黄人、瞳の色も独特のグレーがかった黒だった。ルリアーナ人ではないことがハッキリ分かる。その場にいた聖職者たちの心中は、決して穏やかではなかった。
「さて、早速だが……正教会といえば先日こちらでメイソン元公爵を捕らえている。その後も、牢から呪術を使って悪事を働こうとした疑いがあるんだが……。何か知らないか?」
カイは正教会の神父から事情聴取を始めた。隣にはルイスも座っている。
「その辺の事情……ですか。私も一応教会を運営している程度で、特別なことは行っておらず、特別有力者との関わりも持っていません……」
神父が怯えながら話しているのを、カイは嘘をついていないか観察しながら更に続ける。
「正教会は、昔から王家との癒着で成り立っていたのだろう?」
カイが鋭い瞳で尋ねたので、神父は何か恐ろしいものに睨まれたように怯え、
「いえ、私は……ルリアーナ女王の魂を祀り、後世に伝えることだけを行っているので……」
と答えた。
「教会での活動に対して、誰かに何かを指示されることも無いのか?」
カイはシンとロキから正教会は殆ど活動をしていない教会が多いと聞いていたため、なぜなのか不思議に思っていた。
「ええ……先導士がいたころは、各地に先導士の力で指示が飛んでいた時代もあったようですが、もう先導士がいなくなって20年ですから……」
神父がそう言ったので、
「先導士がいたころは、指示が飛んでいたんだね。具体的には、どんな?」
とルイスが穏やかに尋ねた。
「王家の行事ですとか、先日の収穫祭のことですとか、昔は天候を操る行事のことが流れたりしたらしいです」
神父の言葉には嘘がなさそうだ。
「先導士と王家の繋がり……王家がやっていたことは、知っているんだね?」
ルイスは神父に含みを持たせながら尋ねると、神父は気まずそうに頷いた。
「ふうん……。聖職者とはいえ、そこは、知っていて見て見ぬフリか」
ルイスが冷たく言い放ったので、神父はぞっとしながら下を向いた。
「王家のやることが間違っているなど……とても思えないのです……」
神父は振り絞るように言った。それを聞いたカイは、
「ありがちだな」
と半ばあきれた様子を口にする。ルイスは小さく笑うと、
「君の主張は分かったよ。とりあえず、また広間で待っていてもらおう。ありがとう」
とその場の聴取は終わりになった。
ルイスの合図でポテンシア兵がやってきて、神父を連れて広間に戻って行く。
「そういうことらしいぞ、ハウザー団長」
ルイスはカイに声を掛けた。
「正教会は、王家に利用されていた線が強そうですね。メイソンと組んでいた人間まであぶりだせると良いんですが。今回は難しいかもしれません」
カイはそう言うと、次の聖職者を待った。
次々に話を聞いて、事情を把握していく必要がある。それとは別に、ハオルが広間でレジスタンスの者を集めて呪術師を募っていた。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる