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the 25th day 王子様の滞在
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ルイスとその一行が留まることになり、ルリアーナ城は大混乱していた。客室が人数分用意できないとなると、泊まる場所を城下町に探しに出かけなければならない。ルイスをどこに滞在させるかでハオルたちは頭を抱えた。
「私は、王女の部屋以外には滞在しないつもりだが」
ルイスが堂々とハオルに言ったので、ハオルは青ざめながらエキストラベッドしか用意がないという説明をした。
「急に来ておいて、ベッドをちゃんと用意しろとは言わないよ。王女の姿を見ながら過ごさないと、不安で仕方がない」
ルイスは言い切った。ハオルは困りながらも使用人にエキストラベッドをレナの部屋に運ばせて、いつでも休めるように形だけは整えたのだった。
ルイスの連れて来た兵士たちは城下町の宿を用意されたが、護衛筆頭のブラッドだけが城内に留まる。ブラッドは久しぶりにハウザー騎士団と同室に泊まることになった。
「ハウザー殿、サーヤさんが居ないのは何だ?」
ブラッドが久しぶりにカイに話しかけた第一声に、カイは白けている。
「お前、もっと話題は無かったのか……?」
カイがそう言ったのを、
「いや、気になったから聞いただけだろう」
とブラッドは相変わらずの調子だった。
「ご友人の葬儀で、お休みを取られていますよ。城下町に出た、外国人兵の犠牲者らしく」
シンが代わりに答えると、ブラッドは、
「ご友人が犠牲者にいたのか……。それは、残念だった……。レオナルドと共に、そこに居て犠牲者を防いでやれたかもしれないと思うと、余計に思うな」
と悔しそうに言った。
「あなたは、関係ないじゃないですか。俺たちは、この国にいたのに、何も出来なかった……」
ロキがブラッドに言うと、
「ここで、犠牲者が減らせた可能性など考えても仕方ない。結果は出てしまっている。余計なことを考えていないで、これからが重要だぞ」
カイはその会話を打ち切った。
「ルイス王子を見習うんだ。ちゃんと冷静な判断をしている」
カイのその言葉に、
「ショックが大きいから、悪い方に考えないように一生懸命なんですよ。ルイス様にとって、今回のことがどれだけあの人を苦しめているか」
と、ブラッドは今頃レナの部屋で王女と向き合っているのであろう主君を想った。
「それは……そうでしょうね。俺だって婚約者に何かあったらと思うと、夜は眠れないだろうし、食事だって喉を通るかどうか……」
シンは暗い顔になる。
「……ん? 婚約者がいるのか?」
ブラッドは改めてシンを見ると、
「いますよ、この男の婚約者、俺は大っ嫌いですけどね」
とロキが余計な情報をあえて付け加えた。
「どんな女だ……」
いきなり変なところに食いついたブラッドに、シンは、
「え? 5つ年下で、団長とロキと同い年の22歳で……もともとは団長の同級生で、男爵令嬢の……まあ、顔は可愛いし、性格も可愛いと思うんですけど」
と何故か惚気た。
「性格が独特で、数字オタクで、顔以外は特に褒めるところがないような、俺の嫌いなタイプですよ」
ロキが付け加えたので、
「話がおかしな方向になってきたな……」
と、カイが頭を抱えた。何故ここでシンの彼女の話になっているのだろうか。不毛な方向に会話が展開している気がする。
「5つ年下か……22歳……いいな……というか、27歳なのか? 同い年か?」
ブラッドがシンに尋ねると、
「今年27歳なんで、今は26歳です」
とシンが答え、「あ、学年で1つ下なんだな」とブラッドは腰の低いシンに驚いていた。
「私は、王女の部屋以外には滞在しないつもりだが」
ルイスが堂々とハオルに言ったので、ハオルは青ざめながらエキストラベッドしか用意がないという説明をした。
「急に来ておいて、ベッドをちゃんと用意しろとは言わないよ。王女の姿を見ながら過ごさないと、不安で仕方がない」
ルイスは言い切った。ハオルは困りながらも使用人にエキストラベッドをレナの部屋に運ばせて、いつでも休めるように形だけは整えたのだった。
ルイスの連れて来た兵士たちは城下町の宿を用意されたが、護衛筆頭のブラッドだけが城内に留まる。ブラッドは久しぶりにハウザー騎士団と同室に泊まることになった。
「ハウザー殿、サーヤさんが居ないのは何だ?」
ブラッドが久しぶりにカイに話しかけた第一声に、カイは白けている。
「お前、もっと話題は無かったのか……?」
カイがそう言ったのを、
「いや、気になったから聞いただけだろう」
とブラッドは相変わらずの調子だった。
「ご友人の葬儀で、お休みを取られていますよ。城下町に出た、外国人兵の犠牲者らしく」
シンが代わりに答えると、ブラッドは、
「ご友人が犠牲者にいたのか……。それは、残念だった……。レオナルドと共に、そこに居て犠牲者を防いでやれたかもしれないと思うと、余計に思うな」
と悔しそうに言った。
「あなたは、関係ないじゃないですか。俺たちは、この国にいたのに、何も出来なかった……」
ロキがブラッドに言うと、
「ここで、犠牲者が減らせた可能性など考えても仕方ない。結果は出てしまっている。余計なことを考えていないで、これからが重要だぞ」
カイはその会話を打ち切った。
「ルイス王子を見習うんだ。ちゃんと冷静な判断をしている」
カイのその言葉に、
「ショックが大きいから、悪い方に考えないように一生懸命なんですよ。ルイス様にとって、今回のことがどれだけあの人を苦しめているか」
と、ブラッドは今頃レナの部屋で王女と向き合っているのであろう主君を想った。
「それは……そうでしょうね。俺だって婚約者に何かあったらと思うと、夜は眠れないだろうし、食事だって喉を通るかどうか……」
シンは暗い顔になる。
「……ん? 婚約者がいるのか?」
ブラッドは改めてシンを見ると、
「いますよ、この男の婚約者、俺は大っ嫌いですけどね」
とロキが余計な情報をあえて付け加えた。
「どんな女だ……」
いきなり変なところに食いついたブラッドに、シンは、
「え? 5つ年下で、団長とロキと同い年の22歳で……もともとは団長の同級生で、男爵令嬢の……まあ、顔は可愛いし、性格も可愛いと思うんですけど」
と何故か惚気た。
「性格が独特で、数字オタクで、顔以外は特に褒めるところがないような、俺の嫌いなタイプですよ」
ロキが付け加えたので、
「話がおかしな方向になってきたな……」
と、カイが頭を抱えた。何故ここでシンの彼女の話になっているのだろうか。不毛な方向に会話が展開している気がする。
「5つ年下か……22歳……いいな……というか、27歳なのか? 同い年か?」
ブラッドがシンに尋ねると、
「今年27歳なんで、今は26歳です」
とシンが答え、「あ、学年で1つ下なんだな」とブラッドは腰の低いシンに驚いていた。
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