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the 24th day 残されるということ
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サーヤは気を失ったままベッドの中にいるレナを、ぼーっと眺めていた。このまま意識が戻らない場合、最悪、命が尽きることもあるらしい。その術を作ったのはレナの実母でレジスタンスの第一位呪術師、ミリーナだった。
(ミリーナ様が、レナ様のお母様……)
王女という特権階級で様々な恩恵を受けているように見えたレナは、実の母親に命を狙われて呪いにかかっている。先王や王妃もミリーナの呪いで亡くなったのだと知り、サーヤは自分が信じていたルリアーナ信教、レジスタンスに対して初めて恐ろしさを覚えた。
同じレジスタンスを信仰していた友人が亡くなったのも、同じ流れの中にあるように思える。
レナが呪いに倒れてから、城内は様々なことに追われている。レナが負っていた業務は滞ることが無いように連絡をされ、ポテンシアの王子ルイスには書簡が送られ、国民への告知はどうするのかと会議は長引いているようだった。
サーヤは、王女付きの立場ですっかり暇になっている。このままレナが目を覚まさなければ、自分の仕事はどうなるのだろうか。護衛で来ている外国人の騎士団員たちは、国に帰るのだろうか……。
(王族なんて要らないのではないかと、思っていたけど……)
実際にレナが担っていた仕事は、レナの代わりに誰かがやらなければならないのだ、と知った。
何が正しくて、何が正しくないのか、何を信じればいいのか、サーヤの心は揺らいでいた。
「ハオル殿、少しお時間をいただきたいのですが」
カイが部下を連れてハオルを訪ねた。
「ああ、はい……レナ様のことですか……」
ハオルは少し気まずそうにしながら返事をする。カイはなるべく人に話を聞かれないように、自室にハオルを呼んだ。
「ハオル様が殿下にかけた呪いというのは、どういったものなんですか……」
ロキがいきなり本題を切り出した。
「はい。あれは、条件を付けた呪いといいますか、条件が揃わないと作用しない術式になっておりまして……その分だけ、複雑で……効果が高いものになります……」
ハオルは歯切れが悪かった。
「ハオル殿は、その術を解除しようとは、されなかったのですか」
カイが尋ねると、
「何度か試みたのですが、ミリーナ様の産んだ術はとにかく複雑になっておりまして、私はあくまでもミリーナ様の術をレナ様に施しただけにすぎず、打つ手が無かったのです……」
とハオルは項垂れて言った。
「なんで、そんな呪いを王女に掛けたんですか……。何か恨みでもあったんですか……」
ロキが怒りを必死に抑えながら聞くと、
「正教会の手を逃れるために、必要だと思ったんです。発動の条件に『王家とご自身に絶望した時』というものが付いておりましたので、よっぽどのことが無い限りは発動いたしません。あの呪いがレナ様にかかっている間は、正教会が邪悪な術を施そうとしても、防ぐことができておりました。より強い呪いが弱い呪いを寄せ付けないという、毒で毒を避けるような、そんな役割をいたしておりました……」
とハオルは落ち込みながら呪いについて語った。
「つまり、殿下を正教会から護るために、その危険な呪いを利用したのか」
カイがハオルの話を要約すると、ハオルは頷いた。
「正教会の狙いは何なんですか」
カイが気になっていたことを尋ねる。
「王家の権力を利用し、自分たちが有利になるように物事を動かそうというのが、正教会の狙いです。多くは特権階級で構成されています。ミリーナ様が先導士候補だったので、今は有力な術師がいないらしく、細かい呪いの類で常にレナ様を狙っておりました。それも上手くいかないと、メイソンのような暴力で殿下を従わせようとするものが現れたり、とにかく……利己主義的な集団です」
ハオルがそう言って手で顔を覆う。カイは「全く、どいつもこいつも……」とイライラしながら呟いた。
「殿下に掛けられた術のことを詳しく知る方法は無いんですか? レジスタンスの呪術師に、あたってもらうことはできませんか?」
ロキは、ハオルに懇願するように言った。ハオルは顔を包んでいた手を離し、ロキの方をじっと見つめている。
「ライト様……望みは薄いですが、呪術の類に詳しいものに当たってみます。本来であれば、あなたのような異国の方に頼まれるよりも前に、私が動かなくてはいけないことでした。いけませんね、ミリーナ様の術というだけで望みを失っておりました……」
ハオルはそう言うと、
「やれることは、全てやってみます」
と、頭を下げた。ロキは祈ることしかできない自分に奥歯を噛み締めながら、応えるように頭を下げた。
(ミリーナ様が、レナ様のお母様……)
王女という特権階級で様々な恩恵を受けているように見えたレナは、実の母親に命を狙われて呪いにかかっている。先王や王妃もミリーナの呪いで亡くなったのだと知り、サーヤは自分が信じていたルリアーナ信教、レジスタンスに対して初めて恐ろしさを覚えた。
同じレジスタンスを信仰していた友人が亡くなったのも、同じ流れの中にあるように思える。
レナが呪いに倒れてから、城内は様々なことに追われている。レナが負っていた業務は滞ることが無いように連絡をされ、ポテンシアの王子ルイスには書簡が送られ、国民への告知はどうするのかと会議は長引いているようだった。
サーヤは、王女付きの立場ですっかり暇になっている。このままレナが目を覚まさなければ、自分の仕事はどうなるのだろうか。護衛で来ている外国人の騎士団員たちは、国に帰るのだろうか……。
(王族なんて要らないのではないかと、思っていたけど……)
実際にレナが担っていた仕事は、レナの代わりに誰かがやらなければならないのだ、と知った。
何が正しくて、何が正しくないのか、何を信じればいいのか、サーヤの心は揺らいでいた。
「ハオル殿、少しお時間をいただきたいのですが」
カイが部下を連れてハオルを訪ねた。
「ああ、はい……レナ様のことですか……」
ハオルは少し気まずそうにしながら返事をする。カイはなるべく人に話を聞かれないように、自室にハオルを呼んだ。
「ハオル様が殿下にかけた呪いというのは、どういったものなんですか……」
ロキがいきなり本題を切り出した。
「はい。あれは、条件を付けた呪いといいますか、条件が揃わないと作用しない術式になっておりまして……その分だけ、複雑で……効果が高いものになります……」
ハオルは歯切れが悪かった。
「ハオル殿は、その術を解除しようとは、されなかったのですか」
カイが尋ねると、
「何度か試みたのですが、ミリーナ様の産んだ術はとにかく複雑になっておりまして、私はあくまでもミリーナ様の術をレナ様に施しただけにすぎず、打つ手が無かったのです……」
とハオルは項垂れて言った。
「なんで、そんな呪いを王女に掛けたんですか……。何か恨みでもあったんですか……」
ロキが怒りを必死に抑えながら聞くと、
「正教会の手を逃れるために、必要だと思ったんです。発動の条件に『王家とご自身に絶望した時』というものが付いておりましたので、よっぽどのことが無い限りは発動いたしません。あの呪いがレナ様にかかっている間は、正教会が邪悪な術を施そうとしても、防ぐことができておりました。より強い呪いが弱い呪いを寄せ付けないという、毒で毒を避けるような、そんな役割をいたしておりました……」
とハオルは落ち込みながら呪いについて語った。
「つまり、殿下を正教会から護るために、その危険な呪いを利用したのか」
カイがハオルの話を要約すると、ハオルは頷いた。
「正教会の狙いは何なんですか」
カイが気になっていたことを尋ねる。
「王家の権力を利用し、自分たちが有利になるように物事を動かそうというのが、正教会の狙いです。多くは特権階級で構成されています。ミリーナ様が先導士候補だったので、今は有力な術師がいないらしく、細かい呪いの類で常にレナ様を狙っておりました。それも上手くいかないと、メイソンのような暴力で殿下を従わせようとするものが現れたり、とにかく……利己主義的な集団です」
ハオルがそう言って手で顔を覆う。カイは「全く、どいつもこいつも……」とイライラしながら呟いた。
「殿下に掛けられた術のことを詳しく知る方法は無いんですか? レジスタンスの呪術師に、あたってもらうことはできませんか?」
ロキは、ハオルに懇願するように言った。ハオルは顔を包んでいた手を離し、ロキの方をじっと見つめている。
「ライト様……望みは薄いですが、呪術の類に詳しいものに当たってみます。本来であれば、あなたのような異国の方に頼まれるよりも前に、私が動かなくてはいけないことでした。いけませんね、ミリーナ様の術というだけで望みを失っておりました……」
ハオルはそう言うと、
「やれることは、全てやってみます」
と、頭を下げた。ロキは祈ることしかできない自分に奥歯を噛み締めながら、応えるように頭を下げた。
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