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the 24th day 新たな決意
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「団長、よく歯だって気が付きましたね」
シンが地下牢からの帰りにいつも通りの調子で話す。ロキは怒りに任せてメイソンを殴ったため、負傷したのか拳をさすっていた。
「まあな。東洋には、歯の治療に宝石を使うことはよくあるんだ。牢に入れられても歯を抜かれることまではないだろうから、もしやと思ったんだが」
カイは血まみれになった色とりどりのメイソンの歯を浮かせながら、手に触れずに運んでいる。スウから学んだ術がこんなことに役に立つ日がくるとは意外だった。
「あの下衆……まだ怒りが収まらない……」
ロキがメイソンを思い出してまだイライラしている。ルイスといいロキといい、メイソンを痛めつけることに容赦がないな、とカイは口には出さずに思っていた。
「さて、これからどうするか……」
カイは独り言のように言った。
「どうするって……」
シンはカイの言葉の意味を汲んで暗くなった。王女の護衛で来ている騎士は、王女が呪われた後で何をするのだろうか。答えの出ない謎に向き合う。
「俺は、ずっと殿下の傍にいたいです……」
ロキは素直な気持ちを口にした。3人の中に、「もし、王女が助からなくても」という未来が身近になり、いよいよルリアーナの仕事が終わる予感さえしていた。
「そうか」
カイはロキの希望にそのまま返事をしたが、この先どうなっていくのかは全く見えなくなっている。レジスタンスに居るというレナの母親がこれから何かをしてきても、既にレナがこの世を去っていたらカイの仕事はない。
「今朝、殿下のことがあってちゃんと報告できなかったんですけど……収穫祭でレジスタンスの拠点になっていた民家で、レオナルドに会いました。やっぱり一人で外国人兵をやってましたよ……」
シンの報告に、カイは「あいつだったか」と呟くと、
「サラが太刀打ち出来なかった兵を、一人で相手にして片付けるとは、想像以上だな」
とシンに言った。
「あの……レオナルドのところに行って、殿下の母親がかけたとかいう術のことを聞いてきてもいいですか……?」
ロキはじっとしていられないという様子で、何か行動を起こしたがっている。
「ダメだ、レオナルドの仕事の邪魔になる。どうしてもあちらの情報を手に入れたいのであれば、ハオル殿がレオナルドと行動を共にしている修道士と術で会話ができるらしい。それを頼るしかないな」
カイに諭されると、ロキは複雑な顔をした。
「ハオル様は……殿下に呪いを掛けたんですよね……」
「そうだな……」
2人の会話はいつもよりも歯切れが悪い。
「それでも、ハオル様を頼るしかないってことですか……」
「そういうことになるな」
ロキは廊下の壁を一度「ガンッ」と拳で叩くと、
「分かりました」
と歯を食いしばって言った。
「俺は、諦めない」
ロキの掌からは、血が滲んでいた。
「殿下は、呪われるべき人じゃない。こんなのは、あんまりです」
ロキがそう言った隣で、シンはじわりと涙を溜めた。
「お前は……本当に……」
カイは同い年の部下をそう言って眺めた。
「呪術は術式というものを組んで出来ているらしいから、必ず何か崩す方法はあるんだろう。ロキが諦めないというなら、きっと何か手がある」
カイはそう言って、できるだけのことをやってみるしかないな、と小さく笑った。
諦めに似た気持ちを払拭するために、カイは自分を奮い立たせる。どんな時も道を切り開いてきたロキの言葉が、カイには心強かった。
シンが地下牢からの帰りにいつも通りの調子で話す。ロキは怒りに任せてメイソンを殴ったため、負傷したのか拳をさすっていた。
「まあな。東洋には、歯の治療に宝石を使うことはよくあるんだ。牢に入れられても歯を抜かれることまではないだろうから、もしやと思ったんだが」
カイは血まみれになった色とりどりのメイソンの歯を浮かせながら、手に触れずに運んでいる。スウから学んだ術がこんなことに役に立つ日がくるとは意外だった。
「あの下衆……まだ怒りが収まらない……」
ロキがメイソンを思い出してまだイライラしている。ルイスといいロキといい、メイソンを痛めつけることに容赦がないな、とカイは口には出さずに思っていた。
「さて、これからどうするか……」
カイは独り言のように言った。
「どうするって……」
シンはカイの言葉の意味を汲んで暗くなった。王女の護衛で来ている騎士は、王女が呪われた後で何をするのだろうか。答えの出ない謎に向き合う。
「俺は、ずっと殿下の傍にいたいです……」
ロキは素直な気持ちを口にした。3人の中に、「もし、王女が助からなくても」という未来が身近になり、いよいよルリアーナの仕事が終わる予感さえしていた。
「そうか」
カイはロキの希望にそのまま返事をしたが、この先どうなっていくのかは全く見えなくなっている。レジスタンスに居るというレナの母親がこれから何かをしてきても、既にレナがこの世を去っていたらカイの仕事はない。
「今朝、殿下のことがあってちゃんと報告できなかったんですけど……収穫祭でレジスタンスの拠点になっていた民家で、レオナルドに会いました。やっぱり一人で外国人兵をやってましたよ……」
シンの報告に、カイは「あいつだったか」と呟くと、
「サラが太刀打ち出来なかった兵を、一人で相手にして片付けるとは、想像以上だな」
とシンに言った。
「あの……レオナルドのところに行って、殿下の母親がかけたとかいう術のことを聞いてきてもいいですか……?」
ロキはじっとしていられないという様子で、何か行動を起こしたがっている。
「ダメだ、レオナルドの仕事の邪魔になる。どうしてもあちらの情報を手に入れたいのであれば、ハオル殿がレオナルドと行動を共にしている修道士と術で会話ができるらしい。それを頼るしかないな」
カイに諭されると、ロキは複雑な顔をした。
「ハオル様は……殿下に呪いを掛けたんですよね……」
「そうだな……」
2人の会話はいつもよりも歯切れが悪い。
「それでも、ハオル様を頼るしかないってことですか……」
「そういうことになるな」
ロキは廊下の壁を一度「ガンッ」と拳で叩くと、
「分かりました」
と歯を食いしばって言った。
「俺は、諦めない」
ロキの掌からは、血が滲んでいた。
「殿下は、呪われるべき人じゃない。こんなのは、あんまりです」
ロキがそう言った隣で、シンはじわりと涙を溜めた。
「お前は……本当に……」
カイは同い年の部下をそう言って眺めた。
「呪術は術式というものを組んで出来ているらしいから、必ず何か崩す方法はあるんだろう。ロキが諦めないというなら、きっと何か手がある」
カイはそう言って、できるだけのことをやってみるしかないな、と小さく笑った。
諦めに似た気持ちを払拭するために、カイは自分を奮い立たせる。どんな時も道を切り開いてきたロキの言葉が、カイには心強かった。
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