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the 24th day 城下町に朝が来て
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城下町に朝が来た。とある民家の前には殺された人間の死体が転がり、人の血らしき鉄に似た匂いが漂う。その場所に2名の騎士が到着すると、家の中から出てきた人物とバッタリ顔を合わせ、同時に3人が「あ」と声を上げた。
「これ、もしかして……」
シンが家から出てきたレオナルドに死体を指さして尋ねると、
「一般人は違いますよ。襲ってきた兵士だけ、正当防衛です」
とレオナルドは答えた。
「あ、ちなみにここでは僕『リオ』なんで間違えないでくださいね」
レオナルドの笑顔の奥がまるで笑っていないので、シンは「おお」と返事をする。
ロキは転がっている兵士の数を数えた。
「全部で13人、あんたが倒したんだ? すごいな」
ロキはレオナルドを眺めて言った。レオナルドは返り血の付いた服を既に処分し、すっかり綺麗になっている。
「言っておきますけど、僕だってそれなりに大変だったんですよ。特別手当が欲しいくらいにね」
レオナルドはそう言うと、
「そちらのお姫様の母親がこっちの黒幕にいることが分かったことだし、まだまだ油断はできません」
と付け加えた。
「殿下の母親が黒幕に……? 初耳なんだけど……?」
ロキがレオナルドにつかみかかったので慌ててシンが止める。
「やっぱり情報が行っていないのか。王女はレジスタンスにいる呪術師ミリーナの娘で、もともとは先王の婚外子らしいですよ。僕も昨日掴んだ情報だけど、どうもミリーナという女は人の心に影響を与える呪術が得意らしい」
レオナルドはそう言うと、家の中からイリアに声を掛けられたので、
「あ、行きます!」
と返事をして、
「こっちは、一応僕が片付けたんで。レジスタンスの調査は引き続き行います。それより、早く王女様のところに戻った方がいいかもしれませんよ。あの女……王女の母親が何か、悪いことを考えているはずだ」
レオナルドはそう言ってアウグス家の玄関に消えた。シンとロキは無数の死体を横目に城に戻ることを決める。
「無駄足だったのかな」
シンがレオナルドに会っただけで戻ることになったのを気にしていた。
「ポテンシアの間諜に会えただけでも無駄じゃないよ。殿下の母親の話は……どう捉えたら良いのか分からないけど」
ロキは、レジスタンスの呪術師にレナの母親がいる事実が引っかかる。
2人が城に戻ると、何やら城内が騒がしい。
「どうしたんですか?」
シンが使用人の1人を捕まえて事情を尋ねると、
「王女殿下が……呪詛にやられました」
と困ったように言った。その言葉に、2人はその場を走り出す。
(呪詛にやられた……?)
無事なのか、呪詛とはどんなものなのか、早く確かめなければと階段を駆け上がりレナの部屋の前まで走り抜け、扉を叩く。
「シンフォール・ロドルスとロキウィズ・ライト、戻りました!」
その声に、扉を開けたのはカイだった。
「戻ったか。2人には、惨い現実を伝える羽目になった」
2人はゆっくり部屋に通されると、気を失ったレナがベッドに横たわっているのが目に入る。
「団長、殿下は……無事なんですか……」
ロキが震える声でレナの側に近付くと、
「無事とは言えない……このまま自我を失っていき、そのうち息絶える呪いらしい」
とカイが言ったので、
「嘘だろ……」
とロキが悲痛な声でレナに近寄り、カイに阻止された。
「現実に起こっていることだ。この術をかけた術師は、ハオルとミリーナ・トゥルノンという術師らしい」
「ハオル様と……殿下の母親とかいう術師……。こんなの、あんまりじゃないですか……」
ロキは目の前の王女を見ながら現実に絶望した。シンはロキに掛ける言葉が見つからない。気を失って目を瞑っている王女の顔がどこか悲しそうで、シンは余計に心が痛んだ。
「これ、もしかして……」
シンが家から出てきたレオナルドに死体を指さして尋ねると、
「一般人は違いますよ。襲ってきた兵士だけ、正当防衛です」
とレオナルドは答えた。
「あ、ちなみにここでは僕『リオ』なんで間違えないでくださいね」
レオナルドの笑顔の奥がまるで笑っていないので、シンは「おお」と返事をする。
ロキは転がっている兵士の数を数えた。
「全部で13人、あんたが倒したんだ? すごいな」
ロキはレオナルドを眺めて言った。レオナルドは返り血の付いた服を既に処分し、すっかり綺麗になっている。
「言っておきますけど、僕だってそれなりに大変だったんですよ。特別手当が欲しいくらいにね」
レオナルドはそう言うと、
「そちらのお姫様の母親がこっちの黒幕にいることが分かったことだし、まだまだ油断はできません」
と付け加えた。
「殿下の母親が黒幕に……? 初耳なんだけど……?」
ロキがレオナルドにつかみかかったので慌ててシンが止める。
「やっぱり情報が行っていないのか。王女はレジスタンスにいる呪術師ミリーナの娘で、もともとは先王の婚外子らしいですよ。僕も昨日掴んだ情報だけど、どうもミリーナという女は人の心に影響を与える呪術が得意らしい」
レオナルドはそう言うと、家の中からイリアに声を掛けられたので、
「あ、行きます!」
と返事をして、
「こっちは、一応僕が片付けたんで。レジスタンスの調査は引き続き行います。それより、早く王女様のところに戻った方がいいかもしれませんよ。あの女……王女の母親が何か、悪いことを考えているはずだ」
レオナルドはそう言ってアウグス家の玄関に消えた。シンとロキは無数の死体を横目に城に戻ることを決める。
「無駄足だったのかな」
シンがレオナルドに会っただけで戻ることになったのを気にしていた。
「ポテンシアの間諜に会えただけでも無駄じゃないよ。殿下の母親の話は……どう捉えたら良いのか分からないけど」
ロキは、レジスタンスの呪術師にレナの母親がいる事実が引っかかる。
2人が城に戻ると、何やら城内が騒がしい。
「どうしたんですか?」
シンが使用人の1人を捕まえて事情を尋ねると、
「王女殿下が……呪詛にやられました」
と困ったように言った。その言葉に、2人はその場を走り出す。
(呪詛にやられた……?)
無事なのか、呪詛とはどんなものなのか、早く確かめなければと階段を駆け上がりレナの部屋の前まで走り抜け、扉を叩く。
「シンフォール・ロドルスとロキウィズ・ライト、戻りました!」
その声に、扉を開けたのはカイだった。
「戻ったか。2人には、惨い現実を伝える羽目になった」
2人はゆっくり部屋に通されると、気を失ったレナがベッドに横たわっているのが目に入る。
「団長、殿下は……無事なんですか……」
ロキが震える声でレナの側に近付くと、
「無事とは言えない……このまま自我を失っていき、そのうち息絶える呪いらしい」
とカイが言ったので、
「嘘だろ……」
とロキが悲痛な声でレナに近寄り、カイに阻止された。
「現実に起こっていることだ。この術をかけた術師は、ハオルとミリーナ・トゥルノンという術師らしい」
「ハオル様と……殿下の母親とかいう術師……。こんなの、あんまりじゃないですか……」
ロキは目の前の王女を見ながら現実に絶望した。シンはロキに掛ける言葉が見つからない。気を失って目を瞑っている王女の顔がどこか悲しそうで、シンは余計に心が痛んだ。
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