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the 23rd day 騎士団長の実力
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サラが戻って時間が経過し、夕方に差し掛かる頃のことだった。
「カイ・ハウザー様はいらっしゃいますか!?」
緊張感の漂う声が自室の扉の前で聞こえ、3人は扉に駆け付けた。
「はあっ……あのっ、門に……見たこともない兵士が……!」
息を切らした使用人が蒼白な顔で言う。
「相手は何名ですか?」
カイはいよいよ来たかと使用人に相手の数を尋ねた。
「4名ほど……門番が、やられました……」
カイはその人数を聞くと、
「分かりました、すぐ向かいます」
と使用人に言う。
「シン! ロキ! 殿下の側を離れるなよ!」
カイはそう言って1人で部屋を飛び出していった。
「お気をつけて!」
シンはカイの背中を見送り、ロキと共にレナの自室に隣接する部屋に入る。
「いよいよか……」
平和なルリアーナ城が戦場になってしまったことに悔しさを隠さずに、2人は戦いの予感に気を引き締めた。
「サラさんが歯の立たなかった兵士4人に、団長1人か……」
ロキは、カイの実力を信じるしかない。それでも不安がついて回る。
「大丈夫、あの団長のことだから」
シンはそう言って、隣にいるレナに余計な心配をかけないよう、静かに息を整えた。
カイは城の階段を急いで駆け下りていく。相手が門番に危害を加えて城に入り込んでいるということは、既に建物の中にいるのだろうか? こんな時にこちらの駒が少ないのは痛いなと、顔をしかめた。
城内で騒ぎらしいものが起きていないようだと耳を澄まして出口まで到着すると、スウと修行をしていた城門近くに人影が見える。
(あそこか……)
目を凝らして見ると、確かに影が4名分。カイは自分の気配を静かに消すと、ゆっくりその影に向かって歩いた。
徐々に姿が明らかになってくる。1名は曲刀を1本所持、1名は曲刀を2本所持、1名は大剣を1本所持、1名は弓矢と細身の剣を所持。
(1名は後方支援が出来るとしても、あとは全員接近戦か)
敵の姿をしっかり捕らえ、カイは5メートル程度の距離まで近づくと、歩みを止めて相手の方をじっと睨んだ。まだ敵だと決まったわけではないが、今迄の流れを考えればこれはサラを傷付けた兵士の一派だと考えるのが自然だろう。
「護衛か?」
カイの姿を視界に入れた1名が尋ねた。カイは無言で鞘から剣を抜く。両刃の剣が、夕日を反射して茜色にギラリと光った。
「(……話が通じないらしい)」
最初にカイに声を掛けた者以外の誰かが、母国語で言った。カイには言葉の意味が分からなかったが、全員に殺気が高まったのを確認する。その4名の「気」の流れをじっと読んだ。
(1……2……3……4……)
頭の中で、殺気が高まってからカウントを始める。10秒以内に相手側が行動を起こすと読んだ。
(5……6……7……来たか)
走って来た1名の1撃を右手の剣で払いのけ、左手で気の刃を相手の腹部に放ってから側頭部を切りつける。
(1名)
すぐに二刀流の男が振りかぶってきたのをしゃがみこんで避けると、立ち上がる反動を利用し、腹部から頭部に、長く深く剣を走らせそのまま走り抜けた。
(2名)
ヒュッ
残りの2名に向かって行くと、弦の軽い音と共に矢が降って来た。「気」の力で矢の勢いを止め、そのまま突風を起こして残り2名を吹き飛ばし――
(3、4名)
倒れた1名に剣を突き立て、流れるような動きでもう1名の首に剣を一振りした。
最初のカウントから、15秒が経過した。
そこには4体の、「人間だったもの」が残る。
カイは息も切らさず、返り血すら一切浴びていない。静かに夕日を背に浴びて立ったまま、倒れている人間の「気」が消えたのを確認した。
カイは周囲の気配を確認する。怪我をした門番がそのままになっているのだろうと城門に向かった。
「カイ・ハウザー様はいらっしゃいますか!?」
緊張感の漂う声が自室の扉の前で聞こえ、3人は扉に駆け付けた。
「はあっ……あのっ、門に……見たこともない兵士が……!」
息を切らした使用人が蒼白な顔で言う。
「相手は何名ですか?」
カイはいよいよ来たかと使用人に相手の数を尋ねた。
「4名ほど……門番が、やられました……」
カイはその人数を聞くと、
「分かりました、すぐ向かいます」
と使用人に言う。
「シン! ロキ! 殿下の側を離れるなよ!」
カイはそう言って1人で部屋を飛び出していった。
「お気をつけて!」
シンはカイの背中を見送り、ロキと共にレナの自室に隣接する部屋に入る。
「いよいよか……」
平和なルリアーナ城が戦場になってしまったことに悔しさを隠さずに、2人は戦いの予感に気を引き締めた。
「サラさんが歯の立たなかった兵士4人に、団長1人か……」
ロキは、カイの実力を信じるしかない。それでも不安がついて回る。
「大丈夫、あの団長のことだから」
シンはそう言って、隣にいるレナに余計な心配をかけないよう、静かに息を整えた。
カイは城の階段を急いで駆け下りていく。相手が門番に危害を加えて城に入り込んでいるということは、既に建物の中にいるのだろうか? こんな時にこちらの駒が少ないのは痛いなと、顔をしかめた。
城内で騒ぎらしいものが起きていないようだと耳を澄まして出口まで到着すると、スウと修行をしていた城門近くに人影が見える。
(あそこか……)
目を凝らして見ると、確かに影が4名分。カイは自分の気配を静かに消すと、ゆっくりその影に向かって歩いた。
徐々に姿が明らかになってくる。1名は曲刀を1本所持、1名は曲刀を2本所持、1名は大剣を1本所持、1名は弓矢と細身の剣を所持。
(1名は後方支援が出来るとしても、あとは全員接近戦か)
敵の姿をしっかり捕らえ、カイは5メートル程度の距離まで近づくと、歩みを止めて相手の方をじっと睨んだ。まだ敵だと決まったわけではないが、今迄の流れを考えればこれはサラを傷付けた兵士の一派だと考えるのが自然だろう。
「護衛か?」
カイの姿を視界に入れた1名が尋ねた。カイは無言で鞘から剣を抜く。両刃の剣が、夕日を反射して茜色にギラリと光った。
「(……話が通じないらしい)」
最初にカイに声を掛けた者以外の誰かが、母国語で言った。カイには言葉の意味が分からなかったが、全員に殺気が高まったのを確認する。その4名の「気」の流れをじっと読んだ。
(1……2……3……4……)
頭の中で、殺気が高まってからカウントを始める。10秒以内に相手側が行動を起こすと読んだ。
(5……6……7……来たか)
走って来た1名の1撃を右手の剣で払いのけ、左手で気の刃を相手の腹部に放ってから側頭部を切りつける。
(1名)
すぐに二刀流の男が振りかぶってきたのをしゃがみこんで避けると、立ち上がる反動を利用し、腹部から頭部に、長く深く剣を走らせそのまま走り抜けた。
(2名)
ヒュッ
残りの2名に向かって行くと、弦の軽い音と共に矢が降って来た。「気」の力で矢の勢いを止め、そのまま突風を起こして残り2名を吹き飛ばし――
(3、4名)
倒れた1名に剣を突き立て、流れるような動きでもう1名の首に剣を一振りした。
最初のカウントから、15秒が経過した。
そこには4体の、「人間だったもの」が残る。
カイは息も切らさず、返り血すら一切浴びていない。静かに夕日を背に浴びて立ったまま、倒れている人間の「気」が消えたのを確認した。
カイは周囲の気配を確認する。怪我をした門番がそのままになっているのだろうと城門に向かった。
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