アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 22nd night 呪術講義

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 その日の夜、カイはレナを隣の部屋に呼んで呪術についての情報を部下と共有することにした。

「まず、殿下の呪術は、宝石を用いるものとそうでないものがあるな」
「ええ、他人の意識に働きかけるような強い術は、あらかじめ宝石などに術を蓄積させておいて、一度に多めの力を放出しながらかけることが多いわね。自然現象を操るものは、術式だけで発動させるから宝石を使わないけれど」

 レナの言葉に、シンは首から下げていたお守りを出した。
「例えばこの中に入っている青い宝石は、どんな呪術を施されているんですか?」
 レナはそういえば、と思い出し、
「それも呪術を施した宝石だったわね。かけてあるものは漠然としたお守りの効果だけど、他人の呪術を防ぐ効果もあるのかもしれない……」
 と宝石の効果について考え始めた。

「お守りのお陰なのか、途中の教会で術を掛けられそうになった時、見えない力が目の前で消えたことがあったんですよね」
 シンが教会で起きたことを思い出して言うと、
「精神に働きかけるような術を掛けようとしてきていたのなら、この石でも防げたかもしれないわね」
 とレナは可能性の話をした。

 サラも、自分の首から下げている指輪がスウの術のかかったお守りのようなものなのだろうと漠然と理解する。

「宝石が違うと、効果も変わるんですか? 例えば、離れた人に声を届ける術と、このお守りでは使われている宝石が違いますが」
 ロキに聞かれ、
「そうね……そう言われてみれば、使う宝石が違うわね……」
 とレナは初めて意識したことを認めて何故だろうかと唸った。

「単に、術師側が分からなくならないように、宝石の色で分けているだけなのかもしれないけど……宝石が違うだけで効果が変わるとは、考え難いかしら……でも、術と宝石の相性なんかもあるのかもしれないし……うーん、ごめんなさい、私も初心者同然なのよ」

「で、自然現象を利用するものは宝石が要らないのか」
 カイは先ほどの話をもう一度繰り返すと、
「そうね、自然現象は、もともとあるものを借りて来るだけだから、宝石を利用して術を溜め込まなくても良いのよね」
 と、レナは頷いた。

「人に働きかける術は宝石を媒介にして溜め込んだ術を放出することで効果を出し、自然現象はあるものを利用するだけのため、そういったことが要らない、と」
 カイがレナの言葉を繰り返すと、自分の気功術は後者に近いのだと分かる。

「姿を消す術は、宝石を使っていなかったがな……」
 カイが単純な疑問として口に出すと、
「そうね、あれも他人に働きかける術の一種だけど……働きかける対象が近くにいる前提だし、視覚に少し作用させるだけだからというのはあるかもしれない。すごく、仕組みが単純なのよ」
 レナはそう言って、姿を消す術を思い出していた。

「敵が殿下を狙ったら、迷わずその術を使ってもらいたいものだが……全員から見えなくなるのが少し不便だな」
 カイがそう言っている間に、レナは姿を消してしまう。気配もしっかりと消えていた。
「うわ、すごい一瞬で消えるんですね?」
 シンが驚くと、またすぐレナは姿を現す。

「ね? 簡単そうでしょ?」
 レナが得意気に言うと、4人は無言で首を横に振った。
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