121 / 221
the 19th day 魔性
しおりを挟む
午後から夕方にかけ、レナが国内の政治家との会談を何件か行うというので、カイは部下を連れてレナの護衛に入ることになる。シンとロキには久しぶりのレナだった。シンはロキを気にしていつもより緊張していたが、ロキは特に変わった様子もない。
「王女殿下、ハウザー騎士団参りました」
部屋には、カイが駆け付けるまでの間サラとブラッドがレナの護衛についていたが、政治家との席に隣国の護衛を付けるのもどうかというカイの提案で、ブラッドはあえて外されることになった。
ブラッドは少し面白くない様子で拗ねたようにしていたが、納得できるところもあったらしく了承して席を外す。
「どうぞ、入って」
レナの声が部屋の中からしたので、カイは扉を開けて部下と共に中に入る。華やかな3人の騎士たちが揃い、レナの周りにいた侍女たちが目を奪われていた。
「久しぶりね。無事に戻って来てくれてありがとう。この後の護衛が終わったら、少し話せるかしら?」
レナがシンとロキの姿を見て穏やかにそう言うと、
「それでは、そのようにいたします」
とカイが部下に代わって答えた。シンは盗み見るように隣のロキを見たが、普段と特別変わった様子はない。
レナと政治家との会談は、予定を押して白熱した。これからの国内政治について、それぞれに主張がある。メイソンの行った不正を防ぐための改革には賛同が得られず、護衛に入っていた3人は時折感情的になる政治家たちの様子を気にしながら、王女の傍についていた。
「分かっていたけど、簡単じゃないわね」
時間をきっかけに会談を終えたレナが、自分の肩を軽くたたきながら困ったように言うと、
「先は長いな」
と、カイもレナの言葉に頷いて長い息を吐いた。
「シンとロキに、国内を回った感想や情報を聞こうと思うのだけれど……このままの流れで話すのは癪だから、部屋に戻ってお茶でもしながらどうかしら?」
レナがそう言ってシンとロキを誘うと、
「あ……殿下の仰せのままにいたします」
とシンは恐縮し、
「久しぶりにルリアーナ城に帰ってきた感じがしますね」
とロキは笑顔で答えた。カイは少しため息をつくと、
「まあ、たまには良いのかもしれないが……」
とレナをエスコートして応接室を後にした。
長テーブルにハウザー騎士団の4人が座ると、ハオルが食器を並べ小菓子をそれぞれに配った。小さな焼き菓子や砂糖菓子が全員の元に配られると、花の香りが華やかに香る紅茶が淹れられる。
カイの正面に座ったレナが、
「どうぞ、お茶もお菓子も自信作よ」
と笑顔で勧めたので、シンとロキは少し照れながら紅茶に口を付けた。
「紅茶に入っているのは、何の花ですか……?」
一口飲んで、ロキが尋ねたので、
「これは、東洋の花だと思うわ。紅茶も、東洋産のものよ」
とレナが答える。ロキは不思議そうに香りを再度嗅ぐと、
「紅茶につけられた柑橘の香りは知っているものですが、ブレンドされた花の香りは初めて嗅ぐものかもしれないです」
と驚いている。
「あら、詳しいのね」
レナはロキから初めて紅茶のことを尋ねられて嬉しくなった。この紅茶はレナのために特別にブレンドされたオリジナルのものだ。
「ああ、殿下には伝えておりませんでしたが、ロキは騎士の仕事のほかに、商社の社長をやっています」
カイがそう言ってロキが紅茶に詳しいことを補足すると、
「はは……」
とロキは気まずそうに作り笑いを浮かべた。
「そうなの? 専門はあるのかしら? 紅茶にも詳しいの?」
レナが嬉しそうにロキに尋ねたので、ロキは少し恥ずかしそうにしていた。
「専門というか……売れるものを見つけてきて売れる場所で売るのが、主な仕事ですね」
「それじゃあ、ルリアーナの特産を扱う予定は?」
無邪気な少女のような顔で嬉しそうに尋ねるレナに、ロキは少し困る。
「要望がありそうなら扱うかもしれません」
ロキは、どんな契約でも結んでしまうかもしれないと危うい気持ちになった。
「おい、話を元に戻すぞ」
話が脱線していたのを危惧したカイが口を挟んだので、一旦そこで会話は終わることになる。レナは少し残念そうな顔でカイを見つめ、シンはレナに翻弄されるロキを哀れんだ目でずっと見ていた。
「王女殿下、ハウザー騎士団参りました」
部屋には、カイが駆け付けるまでの間サラとブラッドがレナの護衛についていたが、政治家との席に隣国の護衛を付けるのもどうかというカイの提案で、ブラッドはあえて外されることになった。
ブラッドは少し面白くない様子で拗ねたようにしていたが、納得できるところもあったらしく了承して席を外す。
「どうぞ、入って」
レナの声が部屋の中からしたので、カイは扉を開けて部下と共に中に入る。華やかな3人の騎士たちが揃い、レナの周りにいた侍女たちが目を奪われていた。
「久しぶりね。無事に戻って来てくれてありがとう。この後の護衛が終わったら、少し話せるかしら?」
レナがシンとロキの姿を見て穏やかにそう言うと、
「それでは、そのようにいたします」
とカイが部下に代わって答えた。シンは盗み見るように隣のロキを見たが、普段と特別変わった様子はない。
レナと政治家との会談は、予定を押して白熱した。これからの国内政治について、それぞれに主張がある。メイソンの行った不正を防ぐための改革には賛同が得られず、護衛に入っていた3人は時折感情的になる政治家たちの様子を気にしながら、王女の傍についていた。
「分かっていたけど、簡単じゃないわね」
時間をきっかけに会談を終えたレナが、自分の肩を軽くたたきながら困ったように言うと、
「先は長いな」
と、カイもレナの言葉に頷いて長い息を吐いた。
「シンとロキに、国内を回った感想や情報を聞こうと思うのだけれど……このままの流れで話すのは癪だから、部屋に戻ってお茶でもしながらどうかしら?」
レナがそう言ってシンとロキを誘うと、
「あ……殿下の仰せのままにいたします」
とシンは恐縮し、
「久しぶりにルリアーナ城に帰ってきた感じがしますね」
とロキは笑顔で答えた。カイは少しため息をつくと、
「まあ、たまには良いのかもしれないが……」
とレナをエスコートして応接室を後にした。
長テーブルにハウザー騎士団の4人が座ると、ハオルが食器を並べ小菓子をそれぞれに配った。小さな焼き菓子や砂糖菓子が全員の元に配られると、花の香りが華やかに香る紅茶が淹れられる。
カイの正面に座ったレナが、
「どうぞ、お茶もお菓子も自信作よ」
と笑顔で勧めたので、シンとロキは少し照れながら紅茶に口を付けた。
「紅茶に入っているのは、何の花ですか……?」
一口飲んで、ロキが尋ねたので、
「これは、東洋の花だと思うわ。紅茶も、東洋産のものよ」
とレナが答える。ロキは不思議そうに香りを再度嗅ぐと、
「紅茶につけられた柑橘の香りは知っているものですが、ブレンドされた花の香りは初めて嗅ぐものかもしれないです」
と驚いている。
「あら、詳しいのね」
レナはロキから初めて紅茶のことを尋ねられて嬉しくなった。この紅茶はレナのために特別にブレンドされたオリジナルのものだ。
「ああ、殿下には伝えておりませんでしたが、ロキは騎士の仕事のほかに、商社の社長をやっています」
カイがそう言ってロキが紅茶に詳しいことを補足すると、
「はは……」
とロキは気まずそうに作り笑いを浮かべた。
「そうなの? 専門はあるのかしら? 紅茶にも詳しいの?」
レナが嬉しそうにロキに尋ねたので、ロキは少し恥ずかしそうにしていた。
「専門というか……売れるものを見つけてきて売れる場所で売るのが、主な仕事ですね」
「それじゃあ、ルリアーナの特産を扱う予定は?」
無邪気な少女のような顔で嬉しそうに尋ねるレナに、ロキは少し困る。
「要望がありそうなら扱うかもしれません」
ロキは、どんな契約でも結んでしまうかもしれないと危うい気持ちになった。
「おい、話を元に戻すぞ」
話が脱線していたのを危惧したカイが口を挟んだので、一旦そこで会話は終わることになる。レナは少し残念そうな顔でカイを見つめ、シンはレナに翻弄されるロキを哀れんだ目でずっと見ていた。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる