119 / 221
the 19th day 能力者の葛藤
しおりを挟む
カイはスウに言われたことをレナに切り出そうとするが、周りに人がせわしなく行き来しており、言い出すタイミングがなかなか見つからなかった。
(呪術の修行に来ないか、なんて、とてもじゃないが誰にも聞かせられないぞ……)
レナの護衛をしながら、ひっきりなしに人が訪れることにやきもきしていると、
「そういえば、カイ。明日から2日間は庭木を荒らさないようにお願いするわね。ハオルがすごく気にしているのよ。あなたが原因だと決めつけているわけじゃないのだけど……」
と、レナに声を掛けられた。
「ああ、そのことなんだが……」
カイは、周りに人が居ないか少し気にしながら、
「明日の早朝、スウに殿下を連れてくるように言われていて……」
と、声のトーンを落としてそう告げる。
「早朝って、どのくらい早朝なのかしら? 私もスウに聞きたいことがあったのよね」
「そんなに簡単な話なのか」
カイは拍子抜けしていた。庭木のことも特に咎められず、あっさりと返事をするレナに驚いている。
「あら、私だって呪術師よ。あなたばかりに呪術対策を任せる気はないのよ」
とレナは嬉しそうに言った。得意げな顔をしている時、レナは王女らしい堂々とした風格が漂う。
「ほう、それは知らなかった」
カイが小さな声でそう言うと、
「あなたの術も、見てみたいし。色々気になることもあるのよね」
とレナは楽しそうにしている。カイにとって、目の前の王女が普段の雇い主たちに比べ、柔軟で寛容なのは幸運だった。
「明日は、シンとロキも同席させるつもりなので、お手柔らかにお願いしますよ」
カイがレナにそう言うと、
「え…………?」
とレナは目を丸くして驚いている。
「あ、殿下に報告していなかったか。シンとロキは、昨日の深夜に無事帰還した。諸々の報告はこれからゆっくり聞く予定だ」
カイの言葉に、レナは少し戸惑いながら、
「そうだったの……それは、よかったわ」
と少し勝手が悪そうにしている。
「なんだ、その反応は……」
明らかに反応が間違っているレナに、カイは不審な目を向けた。
「あの2人に、私の呪術を見られるかもしれないと思うと、なんだか……」
レナがそう言って困った顔をしているので、
「俺だと平気なことが、あの2人だと都合が悪い理由は何だ?」
とカイは不思議そうに尋ねる。
「あなたは、もともと能力者だもの、そういう偏見はないでしょうけど」
カイは、レナが言おうとしていることを何となく理解した。能力を人前で披露することが苦手だった経験にはカイにも心当たりがある。
「あの2人なら、大丈夫だ。確かに呪術に対してはまだ理解が及んでいないが、一度体験したり見たりしたことは、自分なりに解釈して上手く飲み込むキャパシティくらいは持ち合わせている」
カイの言っていることがレナは何となく分かるような気がして、レナは自分が心配し過ぎているのだろうと思い直す。
「あいつらは、俺の術にも慣れているしな……。あと、ロキとは呪術で話したんじゃなかったのか?」
カイはそういえば、と思い出すようにレナに言うと、
「ええ、そうなんだけど……。やっぱり目の当たりにされることには、抵抗があるものよ」
と、レナは困った顔をする。
「あの2人に限っては、大丈夫だろうな。殿下に心酔している」
カイが言い切ったので、レナは少し気まずそうに首を傾げた。
(呪術の修行に来ないか、なんて、とてもじゃないが誰にも聞かせられないぞ……)
レナの護衛をしながら、ひっきりなしに人が訪れることにやきもきしていると、
「そういえば、カイ。明日から2日間は庭木を荒らさないようにお願いするわね。ハオルがすごく気にしているのよ。あなたが原因だと決めつけているわけじゃないのだけど……」
と、レナに声を掛けられた。
「ああ、そのことなんだが……」
カイは、周りに人が居ないか少し気にしながら、
「明日の早朝、スウに殿下を連れてくるように言われていて……」
と、声のトーンを落としてそう告げる。
「早朝って、どのくらい早朝なのかしら? 私もスウに聞きたいことがあったのよね」
「そんなに簡単な話なのか」
カイは拍子抜けしていた。庭木のことも特に咎められず、あっさりと返事をするレナに驚いている。
「あら、私だって呪術師よ。あなたばかりに呪術対策を任せる気はないのよ」
とレナは嬉しそうに言った。得意げな顔をしている時、レナは王女らしい堂々とした風格が漂う。
「ほう、それは知らなかった」
カイが小さな声でそう言うと、
「あなたの術も、見てみたいし。色々気になることもあるのよね」
とレナは楽しそうにしている。カイにとって、目の前の王女が普段の雇い主たちに比べ、柔軟で寛容なのは幸運だった。
「明日は、シンとロキも同席させるつもりなので、お手柔らかにお願いしますよ」
カイがレナにそう言うと、
「え…………?」
とレナは目を丸くして驚いている。
「あ、殿下に報告していなかったか。シンとロキは、昨日の深夜に無事帰還した。諸々の報告はこれからゆっくり聞く予定だ」
カイの言葉に、レナは少し戸惑いながら、
「そうだったの……それは、よかったわ」
と少し勝手が悪そうにしている。
「なんだ、その反応は……」
明らかに反応が間違っているレナに、カイは不審な目を向けた。
「あの2人に、私の呪術を見られるかもしれないと思うと、なんだか……」
レナがそう言って困った顔をしているので、
「俺だと平気なことが、あの2人だと都合が悪い理由は何だ?」
とカイは不思議そうに尋ねる。
「あなたは、もともと能力者だもの、そういう偏見はないでしょうけど」
カイは、レナが言おうとしていることを何となく理解した。能力を人前で披露することが苦手だった経験にはカイにも心当たりがある。
「あの2人なら、大丈夫だ。確かに呪術に対してはまだ理解が及んでいないが、一度体験したり見たりしたことは、自分なりに解釈して上手く飲み込むキャパシティくらいは持ち合わせている」
カイの言っていることがレナは何となく分かるような気がして、レナは自分が心配し過ぎているのだろうと思い直す。
「あいつらは、俺の術にも慣れているしな……。あと、ロキとは呪術で話したんじゃなかったのか?」
カイはそういえば、と思い出すようにレナに言うと、
「ええ、そうなんだけど……。やっぱり目の当たりにされることには、抵抗があるものよ」
と、レナは困った顔をする。
「あの2人に限っては、大丈夫だろうな。殿下に心酔している」
カイが言い切ったので、レナは少し気まずそうに首を傾げた。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる