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the 18th day 異文化交流とクレーム
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カイが自室で新聞を読んでいると、ブラッドを尋ねてサーヤが訪れた。ブラッドは楽しそうにサーヤを招き入れると、身体中のかすり傷を見せながら消毒を依頼している。カイはそちらに気を留めずに、新聞に目を通しながらコーヒーを飲んでいた。
サーヤは時折カイの方を見ていたが、その視線を少し感じながらも、カイはあえてそちらを気にしないようにした。
「サーヤさんは、王女殿下付きになってから長いのですか?」
ブラッドの質問に、ついカイは聞き耳を立てる。そういえば、そういったことを尋ねたことがなかった。サーヤはどの程度レナを知る人物なのだろうかと、興味が沸く。
「そうですね、レナ様に仕えて3年経ちました。4年目になります。クラウス様は、ルイス様に仕えてどの位になるんですか?」
サーヤはブラッドの腕に消毒を施しながら至近距離で尋ねていた。
「私は、もう7年になりますね」
ブラッドがそう言ってすぐ近くにあるサーヤの顔を見ながら答えている。カイは、同じ部屋にいる2人が王族に仕える共通点があるのだなと何となく思い、また新聞を読み始める。
「7年もご一緒だと、ルイス様のことは何でもご存じなんでしょうね」
サーヤが腕の消毒を終えると、ブラッドが上半身の服を脱ごうとしたので、サーヤはあからさまに困っていた。
「あの……その辺りは、ご自分でされた方が……」
サーヤが視線をブラッドから外してやんわりと断ろうとすると、ブラッドはサーヤの姿に驚く。ルリアーナの女性とは、こうも初心なのだろうかとブラッドはレナを思い出しながらサーヤを眺めた。
「ああ、申し訳ございません。背中をお願いしたいと思ったのですが、若い女性の前で衣服を脱ぐのは非常識でしたかね」
ブラッドが言うと、
「ポテンシアでは、男性が女性の前で衣服を脱ぐのは普通なんですか?あまり感心できる文化ではないと思いますけれど」
と、サーヤは視線をブラッドから外しながら、少し怒った口調で言った。
「いや、自分は軍人ですから怪我も多く、こういったことは日常だったんです。不快な思いをさせてしまったようですね」
ブラッドは、なんとか機嫌を直してもらおうとサーヤに申し訳なさそうに言う。
「私は、男性の裸を見るのは淑女らしからぬことだと言われて育てられてきました。ここはルリアーナ王国で、仮にも王女のお近くにいらっしゃるのですから、クラウス様も少しは意識してくださいませ」
と、サーヤは視線を戻さずにツンとして言う。ブラッドは慌てて服を整えて
「サーヤさんは、怒った顔の方が可愛らしいですね」
と、懲りずに続けた。
「もう! 本当に反省してらっしゃいます? 私が言ったことも大して気に留めていらっしゃらないんじゃないですか?」
サーヤはブラッドの方を見て、ますます怒って口調を荒げている。
「反省しておりますが、その、これも異文化交流といいますか。お互いを理解するのには大事な段階ではないですか」
ブラッドはそう言ってサーヤの怒った顔を楽しそうに見つめた。ルリアーナの女性というのはこうも可愛らしいものなのかと嬉しくなっている。ルイスがレナの反応を楽しんでいたことが、こういうことなのかと理解をし始めていた。
「大事な段階などと、まるで私が歩み寄っていないような言い方をされますね?」
サーヤはいよいよブラッドに対して感情をむき出しにしている。
「これから、お互い歩み寄れば良いではないですか」
ブラッドは距離の近くなったサーヤの顔をまじまじと観察しながら、楽しそうに言った。
「お前ら、それ以上うるさく言い合うなら外でやってくれないか」
それまで無言で新聞を読んでいたカイが、持っていた新聞をガサっと音を立てて机に置くと、不機嫌な顔を隠すことなく2人に向けている。
サーヤは今迄の一部始終をカイに見られていたのだと思うと一気に恥ずかしくなって下を向き、
「申し訳ございません……」
と頭を下げた。
「いや、サーヤさんのせいではないですよ、ハウザー殿が怒っているのは私に対してです」
ブラッドは落ち込むサーヤをフォローしようとしたが、
「どちらがという事を言ってるんじゃない。2人ともうるさいって言ってるんだ」
とカイによって全否定される。
頭を下げたサーヤが軽く震えている様子がブラッドからよく見えたので、
「分かったよ。今をもって静かにするが、その言い方はもう少し改善の余地があるんじゃないか?」
とカイに抗議した。
「改善の余地があるのは認識している。だが、簡単に改善できたらこうなってはいないだろうな」
カイはそう言ってブラッドをまっすぐ見た。
「ホントにどうしようもないな」
ブラッドは拍子抜けして少し笑うと、
「サーヤさんは、頭を上げて下さい。あなたがそんなに恐縮するところじゃない。所詮ハウザー殿も私も異国人にすぎないのだから、部外者のクレームなど適当に流していただいて大丈夫ですよ」
と言ってサーヤの肩を抱いて元気づけようとする。
「あの……距離が……というか、その手をお放しください……」
サーヤは困りながらブラッドに言った。
サーヤは時折カイの方を見ていたが、その視線を少し感じながらも、カイはあえてそちらを気にしないようにした。
「サーヤさんは、王女殿下付きになってから長いのですか?」
ブラッドの質問に、ついカイは聞き耳を立てる。そういえば、そういったことを尋ねたことがなかった。サーヤはどの程度レナを知る人物なのだろうかと、興味が沸く。
「そうですね、レナ様に仕えて3年経ちました。4年目になります。クラウス様は、ルイス様に仕えてどの位になるんですか?」
サーヤはブラッドの腕に消毒を施しながら至近距離で尋ねていた。
「私は、もう7年になりますね」
ブラッドがそう言ってすぐ近くにあるサーヤの顔を見ながら答えている。カイは、同じ部屋にいる2人が王族に仕える共通点があるのだなと何となく思い、また新聞を読み始める。
「7年もご一緒だと、ルイス様のことは何でもご存じなんでしょうね」
サーヤが腕の消毒を終えると、ブラッドが上半身の服を脱ごうとしたので、サーヤはあからさまに困っていた。
「あの……その辺りは、ご自分でされた方が……」
サーヤが視線をブラッドから外してやんわりと断ろうとすると、ブラッドはサーヤの姿に驚く。ルリアーナの女性とは、こうも初心なのだろうかとブラッドはレナを思い出しながらサーヤを眺めた。
「ああ、申し訳ございません。背中をお願いしたいと思ったのですが、若い女性の前で衣服を脱ぐのは非常識でしたかね」
ブラッドが言うと、
「ポテンシアでは、男性が女性の前で衣服を脱ぐのは普通なんですか?あまり感心できる文化ではないと思いますけれど」
と、サーヤは視線をブラッドから外しながら、少し怒った口調で言った。
「いや、自分は軍人ですから怪我も多く、こういったことは日常だったんです。不快な思いをさせてしまったようですね」
ブラッドは、なんとか機嫌を直してもらおうとサーヤに申し訳なさそうに言う。
「私は、男性の裸を見るのは淑女らしからぬことだと言われて育てられてきました。ここはルリアーナ王国で、仮にも王女のお近くにいらっしゃるのですから、クラウス様も少しは意識してくださいませ」
と、サーヤは視線を戻さずにツンとして言う。ブラッドは慌てて服を整えて
「サーヤさんは、怒った顔の方が可愛らしいですね」
と、懲りずに続けた。
「もう! 本当に反省してらっしゃいます? 私が言ったことも大して気に留めていらっしゃらないんじゃないですか?」
サーヤはブラッドの方を見て、ますます怒って口調を荒げている。
「反省しておりますが、その、これも異文化交流といいますか。お互いを理解するのには大事な段階ではないですか」
ブラッドはそう言ってサーヤの怒った顔を楽しそうに見つめた。ルリアーナの女性というのはこうも可愛らしいものなのかと嬉しくなっている。ルイスがレナの反応を楽しんでいたことが、こういうことなのかと理解をし始めていた。
「大事な段階などと、まるで私が歩み寄っていないような言い方をされますね?」
サーヤはいよいよブラッドに対して感情をむき出しにしている。
「これから、お互い歩み寄れば良いではないですか」
ブラッドは距離の近くなったサーヤの顔をまじまじと観察しながら、楽しそうに言った。
「お前ら、それ以上うるさく言い合うなら外でやってくれないか」
それまで無言で新聞を読んでいたカイが、持っていた新聞をガサっと音を立てて机に置くと、不機嫌な顔を隠すことなく2人に向けている。
サーヤは今迄の一部始終をカイに見られていたのだと思うと一気に恥ずかしくなって下を向き、
「申し訳ございません……」
と頭を下げた。
「いや、サーヤさんのせいではないですよ、ハウザー殿が怒っているのは私に対してです」
ブラッドは落ち込むサーヤをフォローしようとしたが、
「どちらがという事を言ってるんじゃない。2人ともうるさいって言ってるんだ」
とカイによって全否定される。
頭を下げたサーヤが軽く震えている様子がブラッドからよく見えたので、
「分かったよ。今をもって静かにするが、その言い方はもう少し改善の余地があるんじゃないか?」
とカイに抗議した。
「改善の余地があるのは認識している。だが、簡単に改善できたらこうなってはいないだろうな」
カイはそう言ってブラッドをまっすぐ見た。
「ホントにどうしようもないな」
ブラッドは拍子抜けして少し笑うと、
「サーヤさんは、頭を上げて下さい。あなたがそんなに恐縮するところじゃない。所詮ハウザー殿も私も異国人にすぎないのだから、部外者のクレームなど適当に流していただいて大丈夫ですよ」
と言ってサーヤの肩を抱いて元気づけようとする。
「あの……距離が……というか、その手をお放しください……」
サーヤは困りながらブラッドに言った。
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