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the 18th day 近衛兵の実力
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ルリアーナ城のアプローチに敷かれた石畳は、ところどころに溝があり、石の大きさもまばらででこぼこした作りになっている。そんなことに気付いたのは、その上を這うことになったからだった。
「ってえな……」
ブラッドは何とか身体を起こし、立ち上がる。先ほどまで自分の背中に乗っていた重りの感覚を払うように肩を回すと、地面を擦ったせいで真っ白になった服を見て、慌てて砂を払った。
「来るぞ!」
カイの言葉に身構える。
「昨日で懲りたのに、来るんじゃなかったあっ!」
ブラッドはそう言いながら立ったまま10メートル近く後退させられる。引きずった靴の裏が熱をもち、足の裏にまで熱が伝わってきていた。
「いや、生身の人間でそこまで対応できるなら、問題ないだろ」
カイが特殊能力の気功を駆使し、何事も無かったようにしながらブラッドに声を掛けると、
「うるせーよ、涼しい顔して言うんじゃねえ」
と、ブラッドは吐き捨てるように言った。
「劉淵の術が安定してきたと思ったら、近衛兵の動きが面白くなるとは、私も運がいい」
スウはそう言ってブラッドを楽しそうに見ている。ブラッドは思わずため息が出た。日も昇りきっていない早朝から、人の能力を超えた術を相手にしているのが不思議で仕方がない。ブラッドはポテンシア王族に仕える由緒正しい近衛兵のはずだったのが、ルリアーナに来てからというもの自分が今まで築いてきた地位や名誉はどこかに行ってしまったかのようだった。
「こんなはずじゃなかったんだが……」
ブラッドは気を取り直して覚悟を決める。どんな時だろうとその場を放り出さないのがブラッドの強みだ。
「今日は、俺の修行と言うよりブラッドの修行になっていなかったか……?」
カイがそう言って少し不満げにブラッドに向かって言うと、
「いや不本意だわ! 俺に言うんじゃねえよ」
とブラッドは砂だらけになった身体でカイに向かって言い捨てる。カイは全くの無傷だったのに対し、ブラッドは細かいかすり傷が身体中にできていた。2人が並んで部屋に戻ろうと歩いていると、忙しそうに歩く人の姿が目に入る。
「あっ、サーヤさん!」
ブラッドが嬉しそうに声を掛けると、サーヤが2人の姿にぎょっとしていた。
「クラウス様、どうされたんですか? その……傷だらけと言いますか……」
サーヤがボロボロになっているブラッドに驚いて言うと、
「いや、先ほどまでハウザー殿の修行に付き合いまして、名誉の怪我です」
とブラッドは笑顔でサーヤに答える。カイは特に口を挟まずにじっとブラッドを見ていた。
「後で、救急箱をお持ちしましょうか?」
サーヤが心配そうな顔で言ったのを、
「お願いします! 手の届かないところは、是非手伝っていただきたく!」
と、ブラッドは普段の様子からは想像もつかないほどの図々しさだ。
「今の時間帯は難しいですが、少しお時間いただければ業務も落ち着きますので、お手伝いしますね」
サーヤが特に嫌そうな顔もせずに受けたので、ブラッドは小さく拳を握って喜んだ。
「……お前……見た目によらずチャラいんだな」
サーヤが去った後にカイがブラッドを見て言う。
「どこがだ。女性との接点をなるべく多く作るっていうのは、コミュニケーションの基本だろ」
ブラッドが当然のように言ったのを、カイは、
「基本じゃない。俺にとっては、なるべく無駄なコミュニケーションは省くのが基本だ」
と面倒くさそうに返した。
「ってえな……」
ブラッドは何とか身体を起こし、立ち上がる。先ほどまで自分の背中に乗っていた重りの感覚を払うように肩を回すと、地面を擦ったせいで真っ白になった服を見て、慌てて砂を払った。
「来るぞ!」
カイの言葉に身構える。
「昨日で懲りたのに、来るんじゃなかったあっ!」
ブラッドはそう言いながら立ったまま10メートル近く後退させられる。引きずった靴の裏が熱をもち、足の裏にまで熱が伝わってきていた。
「いや、生身の人間でそこまで対応できるなら、問題ないだろ」
カイが特殊能力の気功を駆使し、何事も無かったようにしながらブラッドに声を掛けると、
「うるせーよ、涼しい顔して言うんじゃねえ」
と、ブラッドは吐き捨てるように言った。
「劉淵の術が安定してきたと思ったら、近衛兵の動きが面白くなるとは、私も運がいい」
スウはそう言ってブラッドを楽しそうに見ている。ブラッドは思わずため息が出た。日も昇りきっていない早朝から、人の能力を超えた術を相手にしているのが不思議で仕方がない。ブラッドはポテンシア王族に仕える由緒正しい近衛兵のはずだったのが、ルリアーナに来てからというもの自分が今まで築いてきた地位や名誉はどこかに行ってしまったかのようだった。
「こんなはずじゃなかったんだが……」
ブラッドは気を取り直して覚悟を決める。どんな時だろうとその場を放り出さないのがブラッドの強みだ。
「今日は、俺の修行と言うよりブラッドの修行になっていなかったか……?」
カイがそう言って少し不満げにブラッドに向かって言うと、
「いや不本意だわ! 俺に言うんじゃねえよ」
とブラッドは砂だらけになった身体でカイに向かって言い捨てる。カイは全くの無傷だったのに対し、ブラッドは細かいかすり傷が身体中にできていた。2人が並んで部屋に戻ろうと歩いていると、忙しそうに歩く人の姿が目に入る。
「あっ、サーヤさん!」
ブラッドが嬉しそうに声を掛けると、サーヤが2人の姿にぎょっとしていた。
「クラウス様、どうされたんですか? その……傷だらけと言いますか……」
サーヤがボロボロになっているブラッドに驚いて言うと、
「いや、先ほどまでハウザー殿の修行に付き合いまして、名誉の怪我です」
とブラッドは笑顔でサーヤに答える。カイは特に口を挟まずにじっとブラッドを見ていた。
「後で、救急箱をお持ちしましょうか?」
サーヤが心配そうな顔で言ったのを、
「お願いします! 手の届かないところは、是非手伝っていただきたく!」
と、ブラッドは普段の様子からは想像もつかないほどの図々しさだ。
「今の時間帯は難しいですが、少しお時間いただければ業務も落ち着きますので、お手伝いしますね」
サーヤが特に嫌そうな顔もせずに受けたので、ブラッドは小さく拳を握って喜んだ。
「……お前……見た目によらずチャラいんだな」
サーヤが去った後にカイがブラッドを見て言う。
「どこがだ。女性との接点をなるべく多く作るっていうのは、コミュニケーションの基本だろ」
ブラッドが当然のように言ったのを、カイは、
「基本じゃない。俺にとっては、なるべく無駄なコミュニケーションは省くのが基本だ」
と面倒くさそうに返した。
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