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the 17th day 最初からそのつもりで
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ポテンシアの第四王子ルイス・ポテンシアは、ルリアーナの王女から届いた書簡の内容を頭の中で繰り返しながら、なんでも乗り越えて見せようという気力に満ちていた。
(あの王女が、前向きに話を進めようと考えてくれるとは……)
ルイスは、なるべく見合いを断られないように慎重に進めてきたつもりだったが、王女がその気になるまでにはもう少し時間が掛かると思っていた。
何が彼女を動かしたのだろうかと引っかかりが残りつつも、嬉しさを抑えきれないでいる。まだ最後まで安心はできないが、とりあえず大きな前進ができたことを喜び、次にルリアーナに行く日までの時間を待ち遠しく思うと、レナの書いた文字に口付けた。
(次は、どんな姿がみられるのだろうか。ブラッドにも向こうの様子を聞いておきたいな)
ルイスが次に連れて行く部下に声を掛けようと廊下を歩いていると、背後にうっすらと人の気配がする。
「父上の者か?」
そちらを振り返らずにルイスが言うと、
「さすが、陛下のおっしゃる通り……ただの無気力な王子というわけではないのですね」
と静かな声が廊下に響いた。
「さあね。どんな噂を聞いているかわからないけど、私は権力争いにも全く興味はないし、勉強も特別できる方じゃないよ」
ルイスがそう言って声の主の方を少し窺おうと身体を後ろに向けると、遠くにいると思っていた声の主は身体が密着しそうなほどすぐ後ろにいた。ルイスは奥歯を噛み締めて、
「人の家に忍び込んで、主人の背後を取るなんて趣味が悪いと思わないか?」
と苛立ちを隠さずに言う。
「失礼いたしました。陛下のところでは、これが普通の距離だったので、誤ったようですね。ただ……他の者に聞かれたくない会話など、おありかと思いましたので」
全身を黒い服で包まれた男は、気配をずっと消したままルイスのすぐ後ろに立っている。
「何が狙いだ? 父上は私に何をお望みだ……?」
ルイスは黒づくめの男の顔を見ることなく、静かに質問をした。相変わらず奥歯を噛み締め、拳には力が入っていた。
「何を……ですか。恐らく、ただ殿下のことを知りたいだけなのかと」
黒づくめの男がそう言ってルイスから距離を取る。すぐに5メートルほど離れると、男はそのまま姿を消してしまった。
(ただ知りたいだけか……。王女とのことが確実になるまで、なるべく知られぬようにしたかった)
ルイスは気配の消えた方を見るが、既に姿はどこにもない。このままあらゆることを国王に知られてしまうのだろうか、果たしてそれでルリアーナの王女が傷つくことにはならないのか、ルイスの不安は消えなかった。
(やはり、本当の敵は国内にあったか……)
ルイスは自室に入ると、国王の間諜らしい男のことは一旦忘れることにしようと気を取り直した。見られる前提でどう行動をするかが重要になりそうだ。これまでの流れから、これ以上は国王に無能な振りをしても状況が良くなることはなさそうだ。
興味を持たれないように細心の注意を払ってきたはずが、随分興味を持たれるようになったものだとルイスは複雑な気持ちでいる。
(あの人は、そうそう騙されないか……。分かってはいたけど、気分はよくないな)
ルイスは上着の内ポケットから、先ほどの書簡を取り出した。ルリアーナの刻印が、その文書がレナからのものだという証明をしている。
(絶対に諦める気は、ないが……)
ルイスは刻印を指でなぞると、暫く目に焼き付けるように見つめ、内ポケットに仕舞う。
(そうだ、あの父上と刺し違えてでも、彼女を傷付けることは許さない)
好戦的な国王の顔を思い出し、ルイスはいよいよ決意を固くした。レナが前向きにルイスとの見合いを進めると言ってきた以上、相手が国王陛下だろうと譲る気は起きない。
(何年越しで計画をしてきたと思っているんだ。父上のきまぐれに巻き込まれるなど、あってはならない)
居ても立ってもいられず、ルイスは部下の元へ急いだ。
(あの王女が、前向きに話を進めようと考えてくれるとは……)
ルイスは、なるべく見合いを断られないように慎重に進めてきたつもりだったが、王女がその気になるまでにはもう少し時間が掛かると思っていた。
何が彼女を動かしたのだろうかと引っかかりが残りつつも、嬉しさを抑えきれないでいる。まだ最後まで安心はできないが、とりあえず大きな前進ができたことを喜び、次にルリアーナに行く日までの時間を待ち遠しく思うと、レナの書いた文字に口付けた。
(次は、どんな姿がみられるのだろうか。ブラッドにも向こうの様子を聞いておきたいな)
ルイスが次に連れて行く部下に声を掛けようと廊下を歩いていると、背後にうっすらと人の気配がする。
「父上の者か?」
そちらを振り返らずにルイスが言うと、
「さすが、陛下のおっしゃる通り……ただの無気力な王子というわけではないのですね」
と静かな声が廊下に響いた。
「さあね。どんな噂を聞いているかわからないけど、私は権力争いにも全く興味はないし、勉強も特別できる方じゃないよ」
ルイスがそう言って声の主の方を少し窺おうと身体を後ろに向けると、遠くにいると思っていた声の主は身体が密着しそうなほどすぐ後ろにいた。ルイスは奥歯を噛み締めて、
「人の家に忍び込んで、主人の背後を取るなんて趣味が悪いと思わないか?」
と苛立ちを隠さずに言う。
「失礼いたしました。陛下のところでは、これが普通の距離だったので、誤ったようですね。ただ……他の者に聞かれたくない会話など、おありかと思いましたので」
全身を黒い服で包まれた男は、気配をずっと消したままルイスのすぐ後ろに立っている。
「何が狙いだ? 父上は私に何をお望みだ……?」
ルイスは黒づくめの男の顔を見ることなく、静かに質問をした。相変わらず奥歯を噛み締め、拳には力が入っていた。
「何を……ですか。恐らく、ただ殿下のことを知りたいだけなのかと」
黒づくめの男がそう言ってルイスから距離を取る。すぐに5メートルほど離れると、男はそのまま姿を消してしまった。
(ただ知りたいだけか……。王女とのことが確実になるまで、なるべく知られぬようにしたかった)
ルイスは気配の消えた方を見るが、既に姿はどこにもない。このままあらゆることを国王に知られてしまうのだろうか、果たしてそれでルリアーナの王女が傷つくことにはならないのか、ルイスの不安は消えなかった。
(やはり、本当の敵は国内にあったか……)
ルイスは自室に入ると、国王の間諜らしい男のことは一旦忘れることにしようと気を取り直した。見られる前提でどう行動をするかが重要になりそうだ。これまでの流れから、これ以上は国王に無能な振りをしても状況が良くなることはなさそうだ。
興味を持たれないように細心の注意を払ってきたはずが、随分興味を持たれるようになったものだとルイスは複雑な気持ちでいる。
(あの人は、そうそう騙されないか……。分かってはいたけど、気分はよくないな)
ルイスは上着の内ポケットから、先ほどの書簡を取り出した。ルリアーナの刻印が、その文書がレナからのものだという証明をしている。
(絶対に諦める気は、ないが……)
ルイスは刻印を指でなぞると、暫く目に焼き付けるように見つめ、内ポケットに仕舞う。
(そうだ、あの父上と刺し違えてでも、彼女を傷付けることは許さない)
好戦的な国王の顔を思い出し、ルイスはいよいよ決意を固くした。レナが前向きにルイスとの見合いを進めると言ってきた以上、相手が国王陛下だろうと譲る気は起きない。
(何年越しで計画をしてきたと思っているんだ。父上のきまぐれに巻き込まれるなど、あってはならない)
居ても立ってもいられず、ルイスは部下の元へ急いだ。
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