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the 17th day 使用人は煩う
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朝の食堂で、サラは見知った顔を何人か確認すると、会釈をして朝食を取りに行く。
使用人向けの食堂はセルフサービスで、基本的に何を食べようが何を飲もうが構わない仕組みになっていた。サラはトーストとミルクを持って席に着く。
カイとブラッドは日も登らない時間からスウに呼び出され、そのままどうなったのか分からなかった。
昨日、カイが一人でスウに呼び出された時も、戻るとカイは顔に切り傷を作っていた。あのカイに限って、顔に傷を作ることは珍しい。何か大変な修行をしているのだろうというのは間違いなかった。
それも、人の力を超えた何かを身に着けようと、カイは必死になっている。
(隊長も、カイも、下手に力があるから苦労するんじゃないかしら……)
サラは戦場で敵なしだった蒼が気功によって亡くなったことを思い出していた。
「サラさん、どうしたんですか?」
横からよく知った声がしたので、サラは驚いて飛び上がりそうになる。
「あ、ああ……サーヤさん」
サーヤはサラを確認すると、他に誰か一緒ではないのかキョロキョロ辺りを確認していた。
「今、おひとりですか?」
サーヤに聞かれてサラが頷くと、サーヤは、
「じゃ、朝ご飯ご一緒しましょ」
とサラの隣に座った。サーヤはロールパンとスープを選んだようだった。
「ええ、いいけど。なんであたしがひとりかどうか確認したのよ」
サラに不思議そうに聞かれ、サーヤはむせていた。
「ああ、ごめんなさい。話しかけちゃいけないところだったかしら」
サラはサーヤをさすって謝ったが、サーヤは暫くむせた後で、
「サラさんって、口は堅い方ですか?」
と尋ねる。サラは少しの間「うーん……」と考えて、
「どうかしら、言わないでって言われたら、約束は守ると思うけど」
と答える。サーヤはそれを聞くと、
「私、ハウザー様に好きですって言ったんです、昨日」
と、小さな声で告白した。
「ああ、そうなの。知ってたら止めたのに」
サラは特に動じることもなく、
「結果は分かってるから言わなくてもいいわよ」
と付け加えてトーストをかじった。
「止めたのにって、どういうことですか……」
サーヤが眉間に皺を寄せて不満そうな顔をしているのを、サラは、
「だって団長、その辺の感情がすっぽり欠落してるでしょ。相手の気持ちを考えずにキツイ言い方で突き放すと思うから……」
と言ってサーヤを見ると、
「あの人、綺麗な見た目をしてるから好きになる気持ちも分からなくはないんだけど、団長に告白して成功した子なんて見たことないのよ」
と、サーヤを気遣った。
「別に、両想いになりたいと思ったからじゃないんです。私のこと、意識してほしくて、ただ気持ちを伝えたかっただけなんです」
サーヤは複雑な表情でそう言うと、スープに口を付ける。スープの入ったマグカップが湯気を上げ、サーヤは少し熱そうなスープを少しずつ飲んだ。
「それもねえ、通じる人と通じない人がいるんじゃないかしら……。少なくとも団長には通じないからね。あの人、自分のことを好きな女性が苦手なのよ」
サラがそう言うと、サーヤは目を丸くした。
「逆効果なんですか?」
サーヤが驚いてサラに聞いたので、サラは気まずそうな顔をしながら頷いた。
「知らなかった……。てっきり、少しは意識してもらえるかもしれないと、希望を持ってしまいました」
サーヤはそう言ってため息をつくと、食事の手を止める。サラは暫くサーヤから視線を外して朝食を取ることに専念した。
「私、どうしたらいいですかね? まだハウザー様のことを嫌いにはなれないですけど、できればこれまでと同じように接してもらいたいです」
サーヤが真剣にサラに聞いたので、
「大丈夫よ、あの人、普通に接してれば、何もなかったようにいつも通りにしてくれるわ。仕事中はその辺ちゃんとしてるのよ」
サラは大きな口を開けて笑った。サーヤはその言葉に救われつつも、好きになったカイ・ハウザーという男性への望みを断ち切る覚悟は、まだできずにいた。
使用人向けの食堂はセルフサービスで、基本的に何を食べようが何を飲もうが構わない仕組みになっていた。サラはトーストとミルクを持って席に着く。
カイとブラッドは日も登らない時間からスウに呼び出され、そのままどうなったのか分からなかった。
昨日、カイが一人でスウに呼び出された時も、戻るとカイは顔に切り傷を作っていた。あのカイに限って、顔に傷を作ることは珍しい。何か大変な修行をしているのだろうというのは間違いなかった。
それも、人の力を超えた何かを身に着けようと、カイは必死になっている。
(隊長も、カイも、下手に力があるから苦労するんじゃないかしら……)
サラは戦場で敵なしだった蒼が気功によって亡くなったことを思い出していた。
「サラさん、どうしたんですか?」
横からよく知った声がしたので、サラは驚いて飛び上がりそうになる。
「あ、ああ……サーヤさん」
サーヤはサラを確認すると、他に誰か一緒ではないのかキョロキョロ辺りを確認していた。
「今、おひとりですか?」
サーヤに聞かれてサラが頷くと、サーヤは、
「じゃ、朝ご飯ご一緒しましょ」
とサラの隣に座った。サーヤはロールパンとスープを選んだようだった。
「ええ、いいけど。なんであたしがひとりかどうか確認したのよ」
サラに不思議そうに聞かれ、サーヤはむせていた。
「ああ、ごめんなさい。話しかけちゃいけないところだったかしら」
サラはサーヤをさすって謝ったが、サーヤは暫くむせた後で、
「サラさんって、口は堅い方ですか?」
と尋ねる。サラは少しの間「うーん……」と考えて、
「どうかしら、言わないでって言われたら、約束は守ると思うけど」
と答える。サーヤはそれを聞くと、
「私、ハウザー様に好きですって言ったんです、昨日」
と、小さな声で告白した。
「ああ、そうなの。知ってたら止めたのに」
サラは特に動じることもなく、
「結果は分かってるから言わなくてもいいわよ」
と付け加えてトーストをかじった。
「止めたのにって、どういうことですか……」
サーヤが眉間に皺を寄せて不満そうな顔をしているのを、サラは、
「だって団長、その辺の感情がすっぽり欠落してるでしょ。相手の気持ちを考えずにキツイ言い方で突き放すと思うから……」
と言ってサーヤを見ると、
「あの人、綺麗な見た目をしてるから好きになる気持ちも分からなくはないんだけど、団長に告白して成功した子なんて見たことないのよ」
と、サーヤを気遣った。
「別に、両想いになりたいと思ったからじゃないんです。私のこと、意識してほしくて、ただ気持ちを伝えたかっただけなんです」
サーヤは複雑な表情でそう言うと、スープに口を付ける。スープの入ったマグカップが湯気を上げ、サーヤは少し熱そうなスープを少しずつ飲んだ。
「それもねえ、通じる人と通じない人がいるんじゃないかしら……。少なくとも団長には通じないからね。あの人、自分のことを好きな女性が苦手なのよ」
サラがそう言うと、サーヤは目を丸くした。
「逆効果なんですか?」
サーヤが驚いてサラに聞いたので、サラは気まずそうな顔をしながら頷いた。
「知らなかった……。てっきり、少しは意識してもらえるかもしれないと、希望を持ってしまいました」
サーヤはそう言ってため息をつくと、食事の手を止める。サラは暫くサーヤから視線を外して朝食を取ることに専念した。
「私、どうしたらいいですかね? まだハウザー様のことを嫌いにはなれないですけど、できればこれまでと同じように接してもらいたいです」
サーヤが真剣にサラに聞いたので、
「大丈夫よ、あの人、普通に接してれば、何もなかったようにいつも通りにしてくれるわ。仕事中はその辺ちゃんとしてるのよ」
サラは大きな口を開けて笑った。サーヤはその言葉に救われつつも、好きになったカイ・ハウザーという男性への望みを断ち切る覚悟は、まだできずにいた。
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