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the 17th day 意外な能力

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 カイとブラッドは、まだ日が昇らないうちにスウが到着したという知らせを聞いて城門へ急いでいた。

「今日はまた、昨日より早い時間にお出ましなのか」
 ブラッドは眠そうな声でカイの後に続く。
「まあ、観てもらえれば一目瞭然だ。とにかく見物客がいないような時間帯を狙わないといけない」
 カイは起きたばかりの軽装で城門に向かう。外はまだ真っ暗だった。
 城門に近付くと、小さな老人がこちらを向いているのが何となく分かる。

「来るぞ!」
 カイが言ったのを、
「何が……あっ?!」
 とブラッドは訳も分からないまま、目の前に現れた目に見えない壁に行く手を阻まれる。カイはその壁に両手を添えると、「気」の力を注いで壁を破壊した。

「おいおい、何が何だか、全然何も見えねえよ」
 ブラッドはカイのやっていることも、スウの術も何が起きているか分からない。
「奇遇だな。目に見ることができないのは俺も同じだ。殿下はどうやら目で見ることができるらしいぞ」
 カイはそう言うと、遠くに見える小さな老人に向かって叫んだ。

「今日は能力のない連れが一緒だ! 連れは見学希望だが、どうすれば良い?」
 カイがそう言うと、老人の笑い声が聞こえ、カイとブラッドの足元から砂埃が舞った。カイは咄嗟にブラッドと自分の顔の前に風を起こし、砂をなるべく吸い込まないように防ぐ。

「……そういうことか」
 カイが舌打ちすると、ブラッドは、
「おいおい、俺は、役立たずな状態で巻き込まれたってことか?」
 と不本意そうに言った。

「貴重な経験だろ、お姫様気分で見学していろ」
 そう言うとカイは遠くに居るスウに向かって掌を向けて何かを発した。スウの周りから爆音がしたのでブラッドは目を丸くしてそちらを凝視する。

「ここにいる2人は化け物か……?」
 爆音と共にあたりが煙に包まれたが、スウはその中心に立っていた。しかも、楽しそうに笑っている。

「マジかよ、守られるのも何もできずにいるのも性に合わないっつーの」
 そう言って焦るブラッドに、
「あの老人が、気が向いたらお前なりの戦い方を伝授してくれるかもしれないぞ」
 とカイは言うと、スウに向かって走っていく。ブラッドはその場に残されるのも不本意でカイに付いて行った。2人が走ってスウが近づくにつれ、スウの姿が徐々にハッキリ見えてくる。辺りは先ほどよりも少し明るくなって来ていた。

「大男が2人、大層なスピードで向かってくる。迫力があるな」
 スウは2人の接近を見ながらそう言うと、2人の足元に小さな竜巻を起こした。
「何だこれ?!」
 ブラッドはバランスを崩して地面に叩きつけられそうになったのを、受け身を取ってうまく転がる。

「上手いな……」
 カイは自分の周りの「気」を操り竜巻を分散させることができたため、無傷だった。
「転がり方か? 嬉しくねえよ」
 すっかり砂だらけになっているブラッドは立ち上がって身体の砂を払う。
「いや、見事だな」
 スウもブラッドを見て感心していた。

「こちらの術に対しての反応が良いのは、呪術師にとってやりにくい相手だからな」
 とスウは言うと、
「転がりながら武器でも投げられていたらブラッドの勝ちだったように思う。俺の戦い方じゃ、反撃の隙がなかなか作れないが……受け流しながら術から逃れるというのは新しいな」
 と、カイはブラッドの戦い方から呪術への新しい対応方法を学んでいた。

「あの状態で反撃とか、そこまで柔軟じゃねえよ。でも、そういうことか。ちょっと分かって来たな」
 とブラッドは呪術との戦い方を掴みかけて頷いていた。

「劉淵、その連れは何者だ。普通の人間じゃないな……」
 と驚いているスウの質問に、
「ああ、ポテンシアの近衛兵で、王族付きの筆頭をやっているブラッドだ」
 とカイは答える。スウは「ほう」と言うと、
「ブラッド、お前は今からそこで座ったまま動けなくなる、そこにいろ」
 と言葉の呪いでブラッドを縛ろうとした。

「うるせえよ、知るか」
 ブラッドはスウの呪術を受けているはずが、その場で立ち尽くしている。
「……お前、やっぱりすごいな」
 カイがブラッドに驚いていると、スウは、
「いや、たまにいるのだ、この手のやつが」
 と言ってブラッドをまじまじと見つめ、
「ポテンシアの兵士が全員この手のやつだったら、ルリアーナは簡単に滅びてしまうな」
 と不吉なことを口にした。

「占術師が滅多なことをいうな」
 とカイはスウを睨んで不快感に顔を歪めた。
「可能性の話だが、歴史を考えてみたらあり得る話なんだぞ」
 スウはそう言うとブラッドを見て、
「お前、何があってもここの王女を傷付けるなよ」
 と、呪術なのか忠告なのか判断の付かない言葉を発した。

「何があっても……か。想像したくないが、そうならないように努める」
 ブラッドはそう言うと、
(あんな無垢な王女を傷付けたいなど、誰が思うか)
 と心の中で呟いていた。
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