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the 15th day 一緒くたにはできないけれど
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ブラッドはカイが連れてきた老人は呪術師なのだと聞いたが、レナの部屋でどんな会話がされたのか分からず、同じ護衛業務をしていても自分は部外者なのだと思い知らされていた。
(確かに、ポテンシアは同盟国とはいえ外国だが、もう少し信用されていると思っていた分、きついな)
カイが老人を送っていく後ろ姿を見て、その老人が東洋人だというのは分かった。
(まさか、東洋人相手で気遣われたということは無いだろうしな……)
ブラッドがため息をついていると、部屋の中からサラが出てきた。
「お疲れ様。団長が戻ってきたら王女様の護衛を団長に任せて、お昼でもどう?」
サラにそう声を掛けられて、
「ああ、行きますよ」
とブラッドはモヤモヤした気持ちを抱えながら答える。
「さっき部屋の中でされた話、気になるでしょ?共有したいからお昼の時にでもどうかしら」
そう言ったサラにブラッドは、
「えっ、教えてもらえるんですか?」
と少し裏声気味になりながら驚いた。
「逆に、知らないと気持ち悪くない?」
サラが当たり前のように言ったのでブラッドは拍子抜けし、
「あ、ああ……」
と歯切れの悪い返事をする。サラは、
「あたしたちの目的は一緒。お姫様を護ることよ」
と言うと、ブラッドの肩をはたいて、
「頼りにしてるわよ。どうも敵が多そうで厄介な……嫌な感じがする」
と、神妙な顔をしていた。
「分かってますよ。王女に何かあったら、ルイス様の元に帰れなくなるんで」
ブラッドはそう返事をしながら、サラにはたかれた場所をさすっていた。
「で、ハウザー殿は、何の能力者なんでしたっけ?」
「気功っていう、東洋の術よ。この世のエネルギーの流れを操るもので、身体の中に巡っているエネルギーをコントロールしたり、身の回りにあるエネルギーを利用して風を起こしたりするの。東洋ではいくつかの流派があるようなポピュラーな能力なんですって」
ブラッドとサラは食事をしながら呪術のことやスウのことを話していた。
「その能力といい、あの老人の能力といい、東洋の教えに頼らないといけないのはなあ……」
ブラッドは複雑な表情で考え込んでいた。
「そんなに東洋人が苦手なわけ?」
サラに聞かれ、ブラッドは暫く考え込むと、
「東洋人が苦手というか、東洋人の侵攻で痛い目をみたことがあって、奴らの残忍さが今でもトラウマになっているところがある」
と過去の光景を思い出していた。ブラッドは、食事が喉に通らなくなる程度に、昔のことが強烈に思い出せる。
「でも、団長の能力は余計な殺人をしないために使われているし、スウ様の術は私たちがこの国の見えない力に立ち向かうために必要だと思ったわよ。あんたの見た東洋人と、団長の能力は全く関係ないと思うけど」
サラはそう言ってブラッドを覗き込む。ブラッドは何かを思い出して少し震えているようだった。
「あんた、第四王子の護衛で筆頭なんでしょう? これからもポテンシアに東洋人が攻め込んでくる可能性があるのなら、トラウマって言って否定するんじゃなく、奴らにおびえないように前を向くべきなんじゃない?」
サラの言葉に、ブラッドは、
「分かっている。頭では分かっているんだ」
と何かを思い出しながら葛藤していた。
「まあ、確かに頭で分かっていても感情が追い付かないことってあるわね。これはあたしの勝手な提案なんだけど……ブラッドも団長の訓練に付き合ってみたら?」
サラはそう言って自分の食事をたいらげた。
「いや、俺は能力者じゃない」
ブラッドはサラの提案を一旦断ってはみたが、興味がないわけではなかった。毎日1時間の訓練であればどこかのタイミングで見学に行ってみよう、とブラッドは何となく思う。カイとは同室のため、後で声を掛けてみようとボンヤリ考えていた。
(確かに、ポテンシアは同盟国とはいえ外国だが、もう少し信用されていると思っていた分、きついな)
カイが老人を送っていく後ろ姿を見て、その老人が東洋人だというのは分かった。
(まさか、東洋人相手で気遣われたということは無いだろうしな……)
ブラッドがため息をついていると、部屋の中からサラが出てきた。
「お疲れ様。団長が戻ってきたら王女様の護衛を団長に任せて、お昼でもどう?」
サラにそう声を掛けられて、
「ああ、行きますよ」
とブラッドはモヤモヤした気持ちを抱えながら答える。
「さっき部屋の中でされた話、気になるでしょ?共有したいからお昼の時にでもどうかしら」
そう言ったサラにブラッドは、
「えっ、教えてもらえるんですか?」
と少し裏声気味になりながら驚いた。
「逆に、知らないと気持ち悪くない?」
サラが当たり前のように言ったのでブラッドは拍子抜けし、
「あ、ああ……」
と歯切れの悪い返事をする。サラは、
「あたしたちの目的は一緒。お姫様を護ることよ」
と言うと、ブラッドの肩をはたいて、
「頼りにしてるわよ。どうも敵が多そうで厄介な……嫌な感じがする」
と、神妙な顔をしていた。
「分かってますよ。王女に何かあったら、ルイス様の元に帰れなくなるんで」
ブラッドはそう返事をしながら、サラにはたかれた場所をさすっていた。
「で、ハウザー殿は、何の能力者なんでしたっけ?」
「気功っていう、東洋の術よ。この世のエネルギーの流れを操るもので、身体の中に巡っているエネルギーをコントロールしたり、身の回りにあるエネルギーを利用して風を起こしたりするの。東洋ではいくつかの流派があるようなポピュラーな能力なんですって」
ブラッドとサラは食事をしながら呪術のことやスウのことを話していた。
「その能力といい、あの老人の能力といい、東洋の教えに頼らないといけないのはなあ……」
ブラッドは複雑な表情で考え込んでいた。
「そんなに東洋人が苦手なわけ?」
サラに聞かれ、ブラッドは暫く考え込むと、
「東洋人が苦手というか、東洋人の侵攻で痛い目をみたことがあって、奴らの残忍さが今でもトラウマになっているところがある」
と過去の光景を思い出していた。ブラッドは、食事が喉に通らなくなる程度に、昔のことが強烈に思い出せる。
「でも、団長の能力は余計な殺人をしないために使われているし、スウ様の術は私たちがこの国の見えない力に立ち向かうために必要だと思ったわよ。あんたの見た東洋人と、団長の能力は全く関係ないと思うけど」
サラはそう言ってブラッドを覗き込む。ブラッドは何かを思い出して少し震えているようだった。
「あんた、第四王子の護衛で筆頭なんでしょう? これからもポテンシアに東洋人が攻め込んでくる可能性があるのなら、トラウマって言って否定するんじゃなく、奴らにおびえないように前を向くべきなんじゃない?」
サラの言葉に、ブラッドは、
「分かっている。頭では分かっているんだ」
と何かを思い出しながら葛藤していた。
「まあ、確かに頭で分かっていても感情が追い付かないことってあるわね。これはあたしの勝手な提案なんだけど……ブラッドも団長の訓練に付き合ってみたら?」
サラはそう言って自分の食事をたいらげた。
「いや、俺は能力者じゃない」
ブラッドはサラの提案を一旦断ってはみたが、興味がないわけではなかった。毎日1時間の訓練であればどこかのタイミングで見学に行ってみよう、とブラッドは何となく思う。カイとは同室のため、後で声を掛けてみようとボンヤリ考えていた。
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