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the 15th day 最高責任者として
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レナは会議を終え自室に到着すると、ブラッドを部屋の前に待機させてサラと共に部屋に入った。
「カイあてに来たお客様、サラには心当たりがあるの?」
レナに聞かれてサラは少し考えると、
「恐らく、東洋から呼んだ呪術師ではないかと……」
と答えた。レナは以前カイに国の呪術について話をしたが、まさか東洋の呪術師が城に来るとは思っていなかった。
「そう。呪術師の方に何をお願いするつもりなのかしら……」
レナは、このままでは呪術を用いた争いが起きるのではないかと不安になっている。
「恐らく、私らの呪術対策のためだと思いますよ。目に見えない力を使われたら、護衛も何もなくなりますからね」
レナは、サラの言葉に少し不安な表情を残しつつも、
「確かに、それはあるわね。」
と、机に向かい、会議の議事録に目を通し始めた。
「さて、国内は国内でやることがいっぱいだわ……」
レナが呟きながら必要事項を書き出していくと、サーヤが飲み物を持ってやってきた。
「サラも、一緒にどうぞ」
レナはサラにもお茶を勧める。自分の机の横に置いた椅子へ着席を促した。
「殿下は、働き者ね」
サラが椅子に座って感心しながら言うと、
「働く以外のことは、あんまり知らないのよ」
とレナはサラに向かって微笑んだ。
「あーあ、うちの団長みたいなこと言ってるわ。組織のトップっていうのは仕事以外が疎かになりがちなんですかね。まあ、ロキみたいなのもいるけど……」
サラに言われて、レナはぎょっとした。
「ロキみたいなって……どういうこと?」
サラは、まさかレナに食いつかれるとは思わず、
「いや、あの子も一応実業家だから組織のトップだというのに、結構何でも器用にこなしている気がして」
と慌てて説明した。レナは、
「ロキは、騎士以外にも仕事をしているの……?」
と初めて聞く内容に興味深げに驚いている。
「そんなにロキのこと気になります? やっぱりハンサムだから?」
サラに聞かれてレナは焦りながら、
「いえ、そういうんじゃなくて、ロキは歳が近いから」
と誤魔化した。サラは少し怪しいなと思いながらも、
「ロキは、12歳で家を出てから色んな仕事を作りながら生きていたみたいですよ。16歳になる頃には実業家として一部の人には有名な存在になっていて、時々要人警護の仕事も受けるらしいという評判を聞いて、団長自らスカウトしに行ったのがロキなので」
と、自分が知るロキの話をした。レナは目を見開いて、
「じゃあ、ロキは純粋な団員というわけではないの?」
とサラに尋ねる。
「あの子は、騎士が副業ですよ。自分がやりたい任務だけ受注しているんです。今回の仕事はシンと相棒で動けるっていうのと、やっぱりこの国に来てみたかったから受けたみたいですね。実際のところ本業の仕事がうまくいっているみたいだし、平民とはいえ団長よりも裕福なんじゃないかしら」
サラはそう言いながらレナの表情を注意深く観察していた。なぜ急にロキの話に興味を持ったのか、怪しんでいる。
「そうなの…………私、ロキのことを知らないで、失礼なことを言ったかもしれないわ…………」
レナがそう言って落ち込んでいたので、
「いや、そんなのは気にしなくても大丈夫ですよ。多分、殿下相手に失礼だとか思わないんじゃないかしら」
とサラは笑いながら言った。レナはサラの笑顔に少し救われながら、
(ロキも、組織を持ってトップの責任を負っていたのね)
と、初めて知る事実に今迄の言動を思い出す。
(もっと、同じ立場で話が出来たかもしれなかった…………)
レナは、まっすぐに自分を好きだと言った青年が、自分と何か共通点を感じていたのかもしれないと、今となっては確認ができないことに心を痛める。
「ほら、お茶がさめてしまいますよ。折角サーヤさんが用意してくれのに、いただきましょう」
サラがそう言って豪快にお茶を飲む。心なしか、ティーカップがいつもより小さく見えた。
「サラ、教えてくれてどうもありがとう。私、ロキに身分の差なんか無くなればいいと言って、一度怒られたことがあるのよ」
レナはそう言ってお茶を一口飲んだ。その言葉を聞いたサラは、ロキの無礼に頭を下げようと急に姿勢を正した。
「違うのよ、サラ。ロキはきっと…………身分のせいで今迄たくさん苦しみながら、人の上に立っていたんだわ。今、ようやく理解ができたの。私は身分のお陰で誰にも責められずに、色々なことが出来ているでしょう? ロキはきっと、そうじゃなかったんだわ」
レナの言葉に、サラは頷いた。
「そうです。あの子、ブリステで手に入る『騎士爵』が欲しくて騎士になったって聞きました。爵位としては最下位でも、あるかないかで仕事の幅が広がるんだ、って言って…………」
サラの言葉に、レナはロキと話した夜のことを思い出していた。
「そう……。身分のせいで悔しい思いをしてきたロキからしたら、私の言動が気に障るのも理解できるわね。人と人の間には身分の差なんか無いと言ったら、そんなのは綺麗ごとだ、って言われたの。確かにそうなんでしょうね」
レナの言葉に、サラは何も言えなくなっていた。
「戻ってきたら、謝らなくちゃ」
レナはそう言って、力なくサラに微笑んだ。
「まあ、大丈夫ですよ。あの子、殿下のような方には弱いはずですから」
サラの言葉に、レナはまさか自分が告白されているなどとは思ってもいないだろうなと、
「だと、良いんだけど」
とティーカップを口の近くに持ったまま、少し気まずそうにしていた。
「カイあてに来たお客様、サラには心当たりがあるの?」
レナに聞かれてサラは少し考えると、
「恐らく、東洋から呼んだ呪術師ではないかと……」
と答えた。レナは以前カイに国の呪術について話をしたが、まさか東洋の呪術師が城に来るとは思っていなかった。
「そう。呪術師の方に何をお願いするつもりなのかしら……」
レナは、このままでは呪術を用いた争いが起きるのではないかと不安になっている。
「恐らく、私らの呪術対策のためだと思いますよ。目に見えない力を使われたら、護衛も何もなくなりますからね」
レナは、サラの言葉に少し不安な表情を残しつつも、
「確かに、それはあるわね。」
と、机に向かい、会議の議事録に目を通し始めた。
「さて、国内は国内でやることがいっぱいだわ……」
レナが呟きながら必要事項を書き出していくと、サーヤが飲み物を持ってやってきた。
「サラも、一緒にどうぞ」
レナはサラにもお茶を勧める。自分の机の横に置いた椅子へ着席を促した。
「殿下は、働き者ね」
サラが椅子に座って感心しながら言うと、
「働く以外のことは、あんまり知らないのよ」
とレナはサラに向かって微笑んだ。
「あーあ、うちの団長みたいなこと言ってるわ。組織のトップっていうのは仕事以外が疎かになりがちなんですかね。まあ、ロキみたいなのもいるけど……」
サラに言われて、レナはぎょっとした。
「ロキみたいなって……どういうこと?」
サラは、まさかレナに食いつかれるとは思わず、
「いや、あの子も一応実業家だから組織のトップだというのに、結構何でも器用にこなしている気がして」
と慌てて説明した。レナは、
「ロキは、騎士以外にも仕事をしているの……?」
と初めて聞く内容に興味深げに驚いている。
「そんなにロキのこと気になります? やっぱりハンサムだから?」
サラに聞かれてレナは焦りながら、
「いえ、そういうんじゃなくて、ロキは歳が近いから」
と誤魔化した。サラは少し怪しいなと思いながらも、
「ロキは、12歳で家を出てから色んな仕事を作りながら生きていたみたいですよ。16歳になる頃には実業家として一部の人には有名な存在になっていて、時々要人警護の仕事も受けるらしいという評判を聞いて、団長自らスカウトしに行ったのがロキなので」
と、自分が知るロキの話をした。レナは目を見開いて、
「じゃあ、ロキは純粋な団員というわけではないの?」
とサラに尋ねる。
「あの子は、騎士が副業ですよ。自分がやりたい任務だけ受注しているんです。今回の仕事はシンと相棒で動けるっていうのと、やっぱりこの国に来てみたかったから受けたみたいですね。実際のところ本業の仕事がうまくいっているみたいだし、平民とはいえ団長よりも裕福なんじゃないかしら」
サラはそう言いながらレナの表情を注意深く観察していた。なぜ急にロキの話に興味を持ったのか、怪しんでいる。
「そうなの…………私、ロキのことを知らないで、失礼なことを言ったかもしれないわ…………」
レナがそう言って落ち込んでいたので、
「いや、そんなのは気にしなくても大丈夫ですよ。多分、殿下相手に失礼だとか思わないんじゃないかしら」
とサラは笑いながら言った。レナはサラの笑顔に少し救われながら、
(ロキも、組織を持ってトップの責任を負っていたのね)
と、初めて知る事実に今迄の言動を思い出す。
(もっと、同じ立場で話が出来たかもしれなかった…………)
レナは、まっすぐに自分を好きだと言った青年が、自分と何か共通点を感じていたのかもしれないと、今となっては確認ができないことに心を痛める。
「ほら、お茶がさめてしまいますよ。折角サーヤさんが用意してくれのに、いただきましょう」
サラがそう言って豪快にお茶を飲む。心なしか、ティーカップがいつもより小さく見えた。
「サラ、教えてくれてどうもありがとう。私、ロキに身分の差なんか無くなればいいと言って、一度怒られたことがあるのよ」
レナはそう言ってお茶を一口飲んだ。その言葉を聞いたサラは、ロキの無礼に頭を下げようと急に姿勢を正した。
「違うのよ、サラ。ロキはきっと…………身分のせいで今迄たくさん苦しみながら、人の上に立っていたんだわ。今、ようやく理解ができたの。私は身分のお陰で誰にも責められずに、色々なことが出来ているでしょう? ロキはきっと、そうじゃなかったんだわ」
レナの言葉に、サラは頷いた。
「そうです。あの子、ブリステで手に入る『騎士爵』が欲しくて騎士になったって聞きました。爵位としては最下位でも、あるかないかで仕事の幅が広がるんだ、って言って…………」
サラの言葉に、レナはロキと話した夜のことを思い出していた。
「そう……。身分のせいで悔しい思いをしてきたロキからしたら、私の言動が気に障るのも理解できるわね。人と人の間には身分の差なんか無いと言ったら、そんなのは綺麗ごとだ、って言われたの。確かにそうなんでしょうね」
レナの言葉に、サラは何も言えなくなっていた。
「戻ってきたら、謝らなくちゃ」
レナはそう言って、力なくサラに微笑んだ。
「まあ、大丈夫ですよ。あの子、殿下のような方には弱いはずですから」
サラの言葉に、レナはまさか自分が告白されているなどとは思ってもいないだろうなと、
「だと、良いんだけど」
とティーカップを口の近くに持ったまま、少し気まずそうにしていた。
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