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the 12th day 加護の力とは

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「そもそも、現在の王政自体がまやかしです。人を欺いて作った政権や権力は、神などではない」
 訪れた教会の牧師から出た言葉に、ロキは息をするのも忘れて固まった。人を欺いて作った政権、という言葉にレナの先祖の姿が被る。

「人は生まれてから、神の下ではみな平等です」
 シンとロキは牧師の言葉に少し構えながら、
「そうなんですか」
 と適当に相槌をうち、飾り気のない質素な作りの教会を牧師と共に歩いていた。

「ええ、そうです。あなた方からは、とても強い力を感じますが」
 牧師はその後も2人を眺めながら興味深い様子で続けた。
「恐らくですが、あなた方は神の加護に近い力を身に着けていらっしゃる」

(神の加護――)
 2人は、何のことを言われているか分からなかった。
 ふと、王女から「素敵な加護がありますように」と送り出されたことが、頭をかすめる。

「神の加護なんて、教会の牧師様に言われると……何だか特別な感じがしてしまいますね」
 シンはそう言って誤魔化そうとしたが、牧師は主礼拝堂らしき場所に2人を案内して、着席を促した。
 礼拝堂の正面には、湧き水があふれている小さな噴水があり、涼しい音が広い空間に癒しの音を届けている。

「加護というものを、少し、お見せしましょうか」
 牧師はその噴水の前でゆっくりと2人の方を見た。


 礼拝堂の向かって一番前、噴水の前に立って牧師が祈りを捧げている。
 暫くすると噴水の中の水が波打ち始め、水の流れが少し変わったように見えた。
 チョロチョロと音を立てていた噴水が、今はブクブクと何かが湧き上がるような様子に変わっている。
 その中で牧師が祈りの言葉を唱え続けるのを、2人は固唾を飲んで見守っていた。
 得も言われぬ緊張感が、祈りの声と共に広い礼拝堂を包んでいる。

 牧師の祈りが時間にして10分程度続いたとき、前方から2人のところに何か見えない力が手を伸ばしてきたような、不思議な感覚を「見た」。
 その手のような感覚は2人の身体に触れた途端、蝋燭の火が消えるように「ふっ」と目の前で無くなってしまう。

「やはり、あなたたちには加護の力がついていた……」
 牧師は祈りを止めると、シンとロキをじっと見る。
「今、私が働きかけた力を、防ぎましたね」
 そう言われたシンとロキは、背負った荷物の中に隠している武器を出すか迷いながら、
「何のことか分かりませんが……」「貴重な体験ができました」
 と言って席を立ち、早々に教会から立ち去ることを決めた。

「そうですね、その力の正体は分かりませんが、大切になさってください」
 牧師がにこやかに言うと、2人は頭を下げて逃げるように出口に向かう。
 そこで起きたことはよく分からなかったが、ここに居てはいけないと2人の本能が言っていた。


「いや……なんだよ……ヤバかったのか? 何かをされた感じはしなかったけど……」
 シンは、自分たちを追ってくる者がいないかを確認しながら教会を背に急いだ。
「よく分からないけど……王政への言い方といい、少し心配な宗教だね」
 ロキも後ろを気にしながら先を急いでいる。

 牧師が言う『加護に似た力』とやらに、助けられたのだろうか。
 目に見えない力に、特に何かをされたようにも思えない。
 何が起きたのか、2人には全く分からなかった。


「あの人の存在を、まやかしだなんて言って欲しくなかったな」
 ロキは、牧師の言葉が忘れられない。
 この世の不平等や身分の差を無くしたいと言っていた、レナの姿を思い出す。
 そんなのは綺麗事だと否定したロキに、レナは正面から立ち向かっていたではないか。

(あの人の何を知っているんだよ……)
 ロキは悔しさを噛み締める。思えばレナの考えは、牧師の唱えた教えと全く同じだった。
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