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the 13th day 王子様は肉食系
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ポテンシアの第四王子一行は罪人を1名連行しながらルリアーナ城へ到着した。
今回は要人が罪人を連れての到着ということで、ルリアーナ城内はいつになく緊張が走っている。その罪人、メイソン公爵を裁判所へ連行する役目はサラが担うことになった。
40名ほどの小隊を率いて到着した第四王子は、再びルリアーナの城に到着したことに感慨深そうにしていたが、周りがあまりにも騒がしくなっていたため、感傷に浸る暇はないのかと辺りを眺めた。
城門の少し先に特徴のある黒髪の男を見つけると、第四王子はそちらに向かって歩き出す。
「王女の護衛がお出迎えとは、嬉しいね」
隣にブラッドを付け、隙のない佇まいで歩く王子の姿に、カイは改めて感心した。
「お待ちしておりました、ルイス殿下。王女がお待ちです」
カイは第四王子のルイスに挨拶をして応接室までの案内をする。ルイスはその間、カイをじっくり観察していた。
(これが、パースの内戦で活躍したとかいう異国の騎士か。ぱっと見で実力があまり分からないのが、この男の怖いところなんだろうな。女性達が騒ぐのも頷ける外見に、得体のしれない実力か)
ルイスが観察する隣で、ブラッドはカイの姿を忌々しげに見ていた。ブラッドの少し後ろでレオナルドは3人を眺めている。
(ハウザー団長はブラッドさんよりも少し背が高いのか。あの顔でスタイルも良いなんて、相当やな感じだな。ルイス様も綺麗な人だけど、ハウザー団長は珍しい黒髪を持つ黄人、とても目立つ人だね)
レオナルドは、カイは外見が特徴的すぎて自分のような間諜には到底向いていないだろうなと少し優越感に浸った後、いや、間諜に向いていなくても女性に好かれる外見の方が良いに決まっている、と思い直して一人で落ち込んだ。
ルイスとブラッドとレオナルドは応接室に案内され、他の者は廊下に待機した。ルリアーナ城の廊下にはポテンシア近衛兵が並び、あっという間に物々しい雰囲気が漂う。
ルイスが席に着くと、すぐにレナが到着した。薄いラベンダー色のドレスと、同じ色のバラがアップにした髪に飾られている。
「この度は、本来であればルリアーナの国内で行うべきことを、本当にありがとうございました」
レナが到着早々に席にも着かず深々と頭を下げたので、ルイスは席を立つと駆け寄ってレナの手を取り、愛おしそうに手の甲に口付けた。
「こんなに早くまた会えるとは、私も護衛を預けた甲斐がありました。今日の色も、あなたによくお似合いですね。お役に立てたのであれば、これ以上嬉しいことはありません」
ルイスはレナの手をなかなか離さずに、そのままじっとレナを見つめていた。
「先日いただいたレモネードは、どんな果実酒よりも魅力的な香りをしていました。ポテンシアでは酸味のある飲み物が好まれるのをよくご存じでいらっしゃいますね。あれは、わが国の者にとって非常に魅力的な飲み物になるでしょう」
レナは、ルイスがなかなか自分の手を離さないことに困り始めていた。
「それは、良かったです。貿易が正常に戻って、ポテンシアの方たちが喜んでくれるものが流通するのは嬉しいです」
レナはルイスをあまり直視できないままお礼を言う。手はまだ放してもらえない。
「失礼、あなたを立たせたまま一方的に喋りすぎてしまいました。レナ様があまりに私を魅了するので、席に着いたままではいられなかったんですよ」
ルイスはそう言うとレナの指に一度口付けて手を開放し、レナを席に着かせてから着席する。レナはルイスの言動に相変わらず動揺していた。
「ルイス様は……その、どうしてここまでして下さるんですか?」
レナが純粋に尋ねたので、ルイスの側にいたブラッドとレオナルドが吹き出しそうになったのを堪え、2人から不自然な咳が出た。
王子の好意に気付いていないわけは無いだろうが、こんな質問が出るだろうか? と2人は驚いている。
一方、カイはこれからレナがルイスに交渉できるのか不安になり、眉間に思い切り皺が寄っていた。
「そんなに不思議ですか?」
ルイスは嬉しそうにレナを眺めて尋ねる。
「あなたの力になりたいという理由だけでは、足りないと?」
ルイスはレナの方をじっと見て、挑むような目で言った。
「その……ルイス様は、あくまでも個人的に私を助けて下さったので。そういった好意を受けることが、私の身に今迄起きたことが無かったものですから」
レナの告白に、ルイスは身体中が感動して震えすら感じている。
「それは……ますます協力して良かったと思えますね。あなたは、外交と関係ないところでも私の好意を受けとる権利と、資格がおありだ」
心の底から楽しそうにルイスは言った。
「私たちは、友人関係として困ったときはお互い助け合うような、気軽な関係でいませんか。たまたま今回は私の部下たちがお役に立てたというだけです。そのうち、ルリアーナ特産のレモンの香りが恋しくなったり、あなたの顔が見たくてたまらなくなった時に、鷹を飛ばして私からお願いをすることがあるかもしれませんからね」
ルイスはそう言うと、レナが何か言いたそうにしている様子が気になった。
「どうかされましたか? 友人関係というのはお嫌いでしたか?」
ルイスは自分の言葉に問題があったかもしれないと少し心配になり、レナが何を言おうとしているのか固唾を飲んで見守っていた。
「あの……こんなに協力をしていただいているのに、申し上げにくいのですが…………もう少しの間、近衛兵の方のお力をお借りすることは可能ですか?」
レナが勇気を出して口にした内容に、ルイスは拍子抜けする。
「ええ。そんなことで良いのですか?」
ルイスの隣に立っていたブラッドはレナがあまりに控え目に自分たちの力を借りたいと言ったことに照れ、レオナルドは呆気にとられていた。
(この方のこれは魔性じゃなくタチの悪い天然なのかな……)
レオナルドはルイスが執着している王女の真の怖さを見た気がしている。
「そんなことなんて……実は、ルリアーナで今起きている宗教の争いに少し巻き込まれているんです。ここにいるカイは頼りになる護衛ですが、頼れる人員がもう少し必要になりそうで」
レナが話し始めた内容に、ルイスは驚いた。
「私が捕らえたメイソンも、ルリアーナ正教会というところと同じ派閥で殿下を崇める類のことを企んでいたようですが、そういった抗争にレナ様は巻き込まれているわけですか?」
ルイスの言葉に、レナは無言で頷く。
「なんということだ……なんとしてでも、殿下をお守りしなければならない話ではないですか」
ルイスは心の底から怒りを感じていた。メイソン以外にもレナを狙う者がいることは、ルイスにとって受け入れがたい事実だ。
「ここにいるブラッドとレオナルドは、適任かもしれませんね。人を陥れようとするような者から殿下を守るための必要なスキルは、十分に持っています」
ブラッドとレオナルドは、自分たちの名前を呼ばれて頭を下げた。
「ブラッドは要人警護が専門ですから、殿下の護衛としてお役に立つでしょう。まあ、女性に弱いのが玉に瑕といったところで、殿下のようなお美しい相手に就くと緊張してしまう場面もあるかもしれませんが。レオナルドは間諜なので、あらゆる情報収集や敵側の状況などを探るために必要なスキルを備えています。ルリアーナの言葉や習慣にも明るいので、潜入捜査なども任せることが出来るでしょう」
ルイスはそう言うと、
「ああ、王女の護衛は既にブラッドとレオナルドを配下にしたことがあったね」
と、カイを見た。
「はい、ご両名ともにかなりの実力者で、パースの国内を探しても同じような方には巡り合えないでしょうね」
と、カイはブラッドとレオナルドを評価した。2人はまさかそんな言葉をカイから掛けられるとは思わず、いつの間に自分たちをそこまで評価していたのだと驚いた。
「あの……ルイス様、あなたの大事な近衛兵の方を長期でお借りしてしまっても大丈夫なのでしょうか?」
レナは心配そうにルイスを見て言った。
「私に気を使うのは、この時をもってやめにしませんか。私は、レナ様と会えるだけで幸せですから、あなたの身に危険が迫っているというのなら一番信頼の置ける者をこちらに置いていくことが私の希望なのですよ。そんなに申し訳ないと思われるのでしたら、再来週あたり、レナ様のお時間を頂戴しに来てもよろしいですか? デート代わりにゆっくり話したり一緒に歩けるだけで、これ以上のお礼はないのですが」
ルイスの申し出に、レナはすっかり混乱していた。自分に会えるだけで幸せだとか、一緒に歩きたいと言われたことのないレナは耐性が無い。
「再来週……ですね。もともとお見合い用に開けていたスケジュールがありますので、物理的には可能ですが……私と一緒に歩いても特別面白いこともありませんし、わざわざ来ていただくのはお手数ではないかしら……」
レナは精一杯返答したが、ルイスはいよいよ楽しそうにレナを見つめている。
「可愛い人だ……。手数なんてことがあるとお思いですか?あなたがこの世に存在していることを感謝申し上げたい位ですよ」
ルイスは立ち上がってレナの座る椅子の前に跪いた。
「あなたに命を捧げても良い。ポテンシアの王子としてではなく、ルイス・ポテンシア個人として、私はレナ・ルリアーナ様のためにできる協力を惜しまないと誓います。あなたが側で笑ってくれるなら、私はそれだけで世界一幸せな男です」
ルイスにまっすぐ見つめられながら言われると、レナはいよいよどうしたらいいのか分からなくなった。
「そんな、大袈裟です。ご冗談を……」
レナが全てを冗談だと言って誤魔化そうとしたので、ルイスはハッキリと、
「冗談で、こう何度もあなたのために動くとお思いですか?」
と言い返す。レナは視線を完全に泳がせながら、
「ええ、そうですね、ルイス様のお時間をここまで頂戴してしまって……」
と、ルイスを直視できずに答えた。
カイはその様子を眺めながら、まあ交渉としては成立したのだから良いのかと思いつつ、明らかに困っているレナを助けた方が良いのか判断ができない。
ブラッドとレオナルドは、小動物のような隣国の王女の姿に癒され、これからの任務を楽しみにしていた。
今回は要人が罪人を連れての到着ということで、ルリアーナ城内はいつになく緊張が走っている。その罪人、メイソン公爵を裁判所へ連行する役目はサラが担うことになった。
40名ほどの小隊を率いて到着した第四王子は、再びルリアーナの城に到着したことに感慨深そうにしていたが、周りがあまりにも騒がしくなっていたため、感傷に浸る暇はないのかと辺りを眺めた。
城門の少し先に特徴のある黒髪の男を見つけると、第四王子はそちらに向かって歩き出す。
「王女の護衛がお出迎えとは、嬉しいね」
隣にブラッドを付け、隙のない佇まいで歩く王子の姿に、カイは改めて感心した。
「お待ちしておりました、ルイス殿下。王女がお待ちです」
カイは第四王子のルイスに挨拶をして応接室までの案内をする。ルイスはその間、カイをじっくり観察していた。
(これが、パースの内戦で活躍したとかいう異国の騎士か。ぱっと見で実力があまり分からないのが、この男の怖いところなんだろうな。女性達が騒ぐのも頷ける外見に、得体のしれない実力か)
ルイスが観察する隣で、ブラッドはカイの姿を忌々しげに見ていた。ブラッドの少し後ろでレオナルドは3人を眺めている。
(ハウザー団長はブラッドさんよりも少し背が高いのか。あの顔でスタイルも良いなんて、相当やな感じだな。ルイス様も綺麗な人だけど、ハウザー団長は珍しい黒髪を持つ黄人、とても目立つ人だね)
レオナルドは、カイは外見が特徴的すぎて自分のような間諜には到底向いていないだろうなと少し優越感に浸った後、いや、間諜に向いていなくても女性に好かれる外見の方が良いに決まっている、と思い直して一人で落ち込んだ。
ルイスとブラッドとレオナルドは応接室に案内され、他の者は廊下に待機した。ルリアーナ城の廊下にはポテンシア近衛兵が並び、あっという間に物々しい雰囲気が漂う。
ルイスが席に着くと、すぐにレナが到着した。薄いラベンダー色のドレスと、同じ色のバラがアップにした髪に飾られている。
「この度は、本来であればルリアーナの国内で行うべきことを、本当にありがとうございました」
レナが到着早々に席にも着かず深々と頭を下げたので、ルイスは席を立つと駆け寄ってレナの手を取り、愛おしそうに手の甲に口付けた。
「こんなに早くまた会えるとは、私も護衛を預けた甲斐がありました。今日の色も、あなたによくお似合いですね。お役に立てたのであれば、これ以上嬉しいことはありません」
ルイスはレナの手をなかなか離さずに、そのままじっとレナを見つめていた。
「先日いただいたレモネードは、どんな果実酒よりも魅力的な香りをしていました。ポテンシアでは酸味のある飲み物が好まれるのをよくご存じでいらっしゃいますね。あれは、わが国の者にとって非常に魅力的な飲み物になるでしょう」
レナは、ルイスがなかなか自分の手を離さないことに困り始めていた。
「それは、良かったです。貿易が正常に戻って、ポテンシアの方たちが喜んでくれるものが流通するのは嬉しいです」
レナはルイスをあまり直視できないままお礼を言う。手はまだ放してもらえない。
「失礼、あなたを立たせたまま一方的に喋りすぎてしまいました。レナ様があまりに私を魅了するので、席に着いたままではいられなかったんですよ」
ルイスはそう言うとレナの指に一度口付けて手を開放し、レナを席に着かせてから着席する。レナはルイスの言動に相変わらず動揺していた。
「ルイス様は……その、どうしてここまでして下さるんですか?」
レナが純粋に尋ねたので、ルイスの側にいたブラッドとレオナルドが吹き出しそうになったのを堪え、2人から不自然な咳が出た。
王子の好意に気付いていないわけは無いだろうが、こんな質問が出るだろうか? と2人は驚いている。
一方、カイはこれからレナがルイスに交渉できるのか不安になり、眉間に思い切り皺が寄っていた。
「そんなに不思議ですか?」
ルイスは嬉しそうにレナを眺めて尋ねる。
「あなたの力になりたいという理由だけでは、足りないと?」
ルイスはレナの方をじっと見て、挑むような目で言った。
「その……ルイス様は、あくまでも個人的に私を助けて下さったので。そういった好意を受けることが、私の身に今迄起きたことが無かったものですから」
レナの告白に、ルイスは身体中が感動して震えすら感じている。
「それは……ますます協力して良かったと思えますね。あなたは、外交と関係ないところでも私の好意を受けとる権利と、資格がおありだ」
心の底から楽しそうにルイスは言った。
「私たちは、友人関係として困ったときはお互い助け合うような、気軽な関係でいませんか。たまたま今回は私の部下たちがお役に立てたというだけです。そのうち、ルリアーナ特産のレモンの香りが恋しくなったり、あなたの顔が見たくてたまらなくなった時に、鷹を飛ばして私からお願いをすることがあるかもしれませんからね」
ルイスはそう言うと、レナが何か言いたそうにしている様子が気になった。
「どうかされましたか? 友人関係というのはお嫌いでしたか?」
ルイスは自分の言葉に問題があったかもしれないと少し心配になり、レナが何を言おうとしているのか固唾を飲んで見守っていた。
「あの……こんなに協力をしていただいているのに、申し上げにくいのですが…………もう少しの間、近衛兵の方のお力をお借りすることは可能ですか?」
レナが勇気を出して口にした内容に、ルイスは拍子抜けする。
「ええ。そんなことで良いのですか?」
ルイスの隣に立っていたブラッドはレナがあまりに控え目に自分たちの力を借りたいと言ったことに照れ、レオナルドは呆気にとられていた。
(この方のこれは魔性じゃなくタチの悪い天然なのかな……)
レオナルドはルイスが執着している王女の真の怖さを見た気がしている。
「そんなことなんて……実は、ルリアーナで今起きている宗教の争いに少し巻き込まれているんです。ここにいるカイは頼りになる護衛ですが、頼れる人員がもう少し必要になりそうで」
レナが話し始めた内容に、ルイスは驚いた。
「私が捕らえたメイソンも、ルリアーナ正教会というところと同じ派閥で殿下を崇める類のことを企んでいたようですが、そういった抗争にレナ様は巻き込まれているわけですか?」
ルイスの言葉に、レナは無言で頷く。
「なんということだ……なんとしてでも、殿下をお守りしなければならない話ではないですか」
ルイスは心の底から怒りを感じていた。メイソン以外にもレナを狙う者がいることは、ルイスにとって受け入れがたい事実だ。
「ここにいるブラッドとレオナルドは、適任かもしれませんね。人を陥れようとするような者から殿下を守るための必要なスキルは、十分に持っています」
ブラッドとレオナルドは、自分たちの名前を呼ばれて頭を下げた。
「ブラッドは要人警護が専門ですから、殿下の護衛としてお役に立つでしょう。まあ、女性に弱いのが玉に瑕といったところで、殿下のようなお美しい相手に就くと緊張してしまう場面もあるかもしれませんが。レオナルドは間諜なので、あらゆる情報収集や敵側の状況などを探るために必要なスキルを備えています。ルリアーナの言葉や習慣にも明るいので、潜入捜査なども任せることが出来るでしょう」
ルイスはそう言うと、
「ああ、王女の護衛は既にブラッドとレオナルドを配下にしたことがあったね」
と、カイを見た。
「はい、ご両名ともにかなりの実力者で、パースの国内を探しても同じような方には巡り合えないでしょうね」
と、カイはブラッドとレオナルドを評価した。2人はまさかそんな言葉をカイから掛けられるとは思わず、いつの間に自分たちをそこまで評価していたのだと驚いた。
「あの……ルイス様、あなたの大事な近衛兵の方を長期でお借りしてしまっても大丈夫なのでしょうか?」
レナは心配そうにルイスを見て言った。
「私に気を使うのは、この時をもってやめにしませんか。私は、レナ様と会えるだけで幸せですから、あなたの身に危険が迫っているというのなら一番信頼の置ける者をこちらに置いていくことが私の希望なのですよ。そんなに申し訳ないと思われるのでしたら、再来週あたり、レナ様のお時間を頂戴しに来てもよろしいですか? デート代わりにゆっくり話したり一緒に歩けるだけで、これ以上のお礼はないのですが」
ルイスの申し出に、レナはすっかり混乱していた。自分に会えるだけで幸せだとか、一緒に歩きたいと言われたことのないレナは耐性が無い。
「再来週……ですね。もともとお見合い用に開けていたスケジュールがありますので、物理的には可能ですが……私と一緒に歩いても特別面白いこともありませんし、わざわざ来ていただくのはお手数ではないかしら……」
レナは精一杯返答したが、ルイスはいよいよ楽しそうにレナを見つめている。
「可愛い人だ……。手数なんてことがあるとお思いですか?あなたがこの世に存在していることを感謝申し上げたい位ですよ」
ルイスは立ち上がってレナの座る椅子の前に跪いた。
「あなたに命を捧げても良い。ポテンシアの王子としてではなく、ルイス・ポテンシア個人として、私はレナ・ルリアーナ様のためにできる協力を惜しまないと誓います。あなたが側で笑ってくれるなら、私はそれだけで世界一幸せな男です」
ルイスにまっすぐ見つめられながら言われると、レナはいよいよどうしたらいいのか分からなくなった。
「そんな、大袈裟です。ご冗談を……」
レナが全てを冗談だと言って誤魔化そうとしたので、ルイスはハッキリと、
「冗談で、こう何度もあなたのために動くとお思いですか?」
と言い返す。レナは視線を完全に泳がせながら、
「ええ、そうですね、ルイス様のお時間をここまで頂戴してしまって……」
と、ルイスを直視できずに答えた。
カイはその様子を眺めながら、まあ交渉としては成立したのだから良いのかと思いつつ、明らかに困っているレナを助けた方が良いのか判断ができない。
ブラッドとレオナルドは、小動物のような隣国の王女の姿に癒され、これからの任務を楽しみにしていた。
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