アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏

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the 12th day 相違

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 その日の朝、ハウザー騎士団の3人は部屋に集まっていた。カイは昨晩レナに聞いたことを早速部下に共有する。

「レジスタンスっていうのは早めに何とかできないのかね……」
 サラは、やはり王政に反対する勢力のことをどうにかすべきだと思っていた。国家に反逆する革命軍は、大きくなる前に潰しておく方が確実に違いない。

「俺も、正直その考えに賛成だ」
 カイがそう言うと、
「でも、殿下がレジスタンスの考えの方が良いと思っているのは、なんでだろう?」
 とハンが疑問を口にした。

「あの位の年齢の女の子が、自分を神に崇めるような宗教に、違和感を覚えないわけがないでしょう?」
 とサラは当たり前のように言い切る。
「うーん、それだけなのかな?」
 ハンはまだ納得できないでいる。どうも何か引っかかっているらしい。

「ハンの思ったことを説明するならば、いくら自分を崇めて欲しくないとしても、王政を排除しようとする宗教に肩入れするのはあまりにもおかしい、ということだろう? 俺も思ったが、まあ、可能性の話でしかないが……もし、既にレジスタンスの手の者が殿下に接触していたとしたら、どうだ?」
 カイの言葉に、ハンもサラも絶句した。

「殿下は、既に精神の中に何かを植え付けられているとは考えられないか?殺人があった城内だぞ?」
 カイはそう言うと、
ホウ商会に、呪術関係の取引をしている人間をこちらに寄越すよう依頼した。これからは、誰もがそのリスクと共にあると思ってくれ。ちなみに俺は、気功術の範囲で相手の気が見えるんだ。恐らくある程度は、対処できる」
 と2人に告げた。

「弟は、何かと便利な能力が備わっていて腹立たしいね。精神に影響を及ぼす術なんて、怖くて仕方ないんだけど?」
 ハンはそう言うと、背を向けて部屋から出ようと歩き出した。

「ちょっと、ハン?」
 サラが慌ててハンを追おうとするのを、カイは止めた。
「想定していなかった任務だ。ここで降りても構わない」
 カイがそう言うと、ハンは、
「弟は、いつもそうなんだよね。僕は契約以外の範囲にはあまり首を突っ込まない主義だから」
 と寂しそうに笑う。

「まあ、ちょっと1日考えさせてよ。今日1日分の報酬はいいから」
 と、言い残して外に出て行った。サラは、
「カイ、ここで人手が減るのはどうなのよ?」
 と心配そうに言う。

「気にするな。まだ全ての任務が見えたわけじゃない。ハンがここで降りるというなら、その対策を考えるまでだ。そもそも、俺自身、こんなことになるとは思わなかったからな」
 とカイはサラを見て当たり前のように言った。カイはあくまでもハンの意志を尊重するつもりだった。

「サラも、こんな任務になってすまない。無理強いするつもりはない。判断は任せる」
 サラは、カイに謝られたのを、
「気に入らないね、これしきのことで、あたしが逃げるとでも?」
 と少し悲しそうに、そして、静かに怒っていた。

「今もこの国をまわっている若手の2人のこともあるんだし、ちゃんとやるよ」
 サラが言うと、
「助かるよ。この手の戦いは俺も人生で初めてなんだ」
 とカイは言った。

 その時、サラは普段から頼りにしている自分の上司が、若干22歳の若者でしかないことに気づく。
 レナといい、カイといい、境遇のせいで重い責任を背負って生きているのだ。

「そうね、団長の倍近く生きてきたけど、この手の戦いはあたしも初めてよ」
 サラはそう言っていつもの豪快な顔で笑う。カイはいつものサラの姿に、救われたような気がしていた。
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