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the 10th night 星に願いを
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ルリアーナ城を出て2日目の夜、シンとロキはとある教会に泊まっていた。
歩きで移動しているため、1日に移動できる距離にも限界がある。町に着いたものの宿が無い小さな町で、その日は教会に身を寄せることになった。
ルリアーナの教会は、女王を祀っているもの以外にも「神」を信仰しているものがあった。その日に2人が泊まったのは「神」を信仰する教会のようだ。
シンとロキは自分たちが怪しい雰囲気を持っているとは思わなかったが、警戒されて泊まれなかった場合は野宿を覚悟していた。ところが、その日に訪れた教会はすんなりと2人の滞在を許してくれる。
「すいません、外国から来て旅をしているので、宿の場所も良く分からなくて」
シンは、親切な教会の牧師にそう言ってお礼を言った。
「外国ですか、どちらから?」
牧師は穏やかにそう尋ね、2人を怪しむことなく教会に招き入れる。
「ブリステ公国です」
そう言うと、牧師は「ブリステからこちらまで、一体どのくらいの時間がかかるのでしょう」と驚いていた。2人は途中で馬を使ったことも話しながら、ルリアーナ内は徒歩で回っているのだと説明する。
「それはそれは。興味深い旅の方たちですね。ルリアーナの神の加護が、あなた達にも届いたようで良かったです。今日はゆっくりお過ごしください」
牧師は夕食にパンとスープ、そして滞在用に屋根裏部屋を用意してくれた。部屋は小さなベッドが2つ、質素な部屋だったが、小さな窓があって秘密基地さながらの雰囲気だ。
「団長のところに、もう手紙は届いたかな」
ロキはそう言って荷物を降ろすと、小さな窓を開けて外を見た。
「届いたんじゃないかな。あの距離だし」
シンはロキの開けた窓の方を見る。空には星が輝き始めていた。
「ルリアーナの神様ってどんな人なんだろ。女王信仰は、建国者でしょ。で、神様の方はどんな人なのかな」
ロキはそう言ってパンとスープを口にした。
「さあな」
シンは相変わらず窓の外を眺めている。のどかな田園風景は真っ暗で何も見えなくなっていた。
「王女殿下も言っていた『加護』ってやつは神様が与えるものなんだろ」
自分の首から下がっているお守りを取り出すと、シンは思い出して言った。小さな赤い袋の中に、宝石が入っていると王女が話していた。
不意に、中を確認したくなってシンは小袋の中身を取り出す。
深い青味を帯びた宝石は、ところどころ模様のような線が入っている。決して華やかな宝石ではなかったが、神秘的で美しかった。
「ああ、それ、あの人にもらったやつ」
ロキはシンが掌に出した宝石を見て自分の首から下げている袋を握る。
「そう、あの方にもらったお守りだよ。明日、ここの牧師様に聞いてみようか。神様のことと加護のこと」
シンはそう言って宝石をしまうと、床に座って食事に口をつけた。久しぶりの質素な夕食が、妙にありがたかった。
「そうだね。聞いてみよう。それにしても、ここは星がきれいなとこだね」
ロキはしみじみ言った。暗くなるにつれて、星の数は増え、どんどん輝きを増している。城下町や城から見た星とは、また比べ物にならないくらいに輝いているな、と2人は思った。
[534222179/1608776657.jpg]
「あーあ、こんなに綺麗な星を見ているのに、一緒にいるのがシンっていうのが笑えるよ」
ロキはそう言うとベッドに横たわった。二日酔いの身体に鞭打って歩いた反動がでているらしい。
「ホント、男同士で星がきれいとか、なんだかなあ」
シンもそう言ってベッドに腰を下ろす。「昨日は誰かの介抱だったし」とロキをいじった。
「あのさあ、ちょっと語っていい?」
ベッドに横たわってシンからは表情が見えないロキが、不意に言った。
「改まったな」
シンは笑った。
「俺さ、神様とか信じたこと無いし、毎日毎日、明日死んでもいいやって気持ちで過ごしてたんだけど」
ロキはベッドで天井を見たまま続けた。
「今は、死にたくないんだ。あの人に、お帰りって言って欲しくて」
ロキの話に、シンは頷いた。
「そうだな。この道中で俺たちの身に何かあれば、殿下は自分を責めるだろうな」
お守りに込められた想いには、自分たちを思いやる王女の気持ちを感じた。それが単純に嬉しかったので、シンもロキの話の意味がよく分かる。
「必ず、無事に帰ろう。柄じゃないって思うけど、願っていいかな」
ロキの言葉に、
「俺も願うよ」
とシンは答えた。暫く2人は星の輝く窓の外を見ながら、外から聞こえる小さな風の音に耳を澄ませていた。
歩きで移動しているため、1日に移動できる距離にも限界がある。町に着いたものの宿が無い小さな町で、その日は教会に身を寄せることになった。
ルリアーナの教会は、女王を祀っているもの以外にも「神」を信仰しているものがあった。その日に2人が泊まったのは「神」を信仰する教会のようだ。
シンとロキは自分たちが怪しい雰囲気を持っているとは思わなかったが、警戒されて泊まれなかった場合は野宿を覚悟していた。ところが、その日に訪れた教会はすんなりと2人の滞在を許してくれる。
「すいません、外国から来て旅をしているので、宿の場所も良く分からなくて」
シンは、親切な教会の牧師にそう言ってお礼を言った。
「外国ですか、どちらから?」
牧師は穏やかにそう尋ね、2人を怪しむことなく教会に招き入れる。
「ブリステ公国です」
そう言うと、牧師は「ブリステからこちらまで、一体どのくらいの時間がかかるのでしょう」と驚いていた。2人は途中で馬を使ったことも話しながら、ルリアーナ内は徒歩で回っているのだと説明する。
「それはそれは。興味深い旅の方たちですね。ルリアーナの神の加護が、あなた達にも届いたようで良かったです。今日はゆっくりお過ごしください」
牧師は夕食にパンとスープ、そして滞在用に屋根裏部屋を用意してくれた。部屋は小さなベッドが2つ、質素な部屋だったが、小さな窓があって秘密基地さながらの雰囲気だ。
「団長のところに、もう手紙は届いたかな」
ロキはそう言って荷物を降ろすと、小さな窓を開けて外を見た。
「届いたんじゃないかな。あの距離だし」
シンはロキの開けた窓の方を見る。空には星が輝き始めていた。
「ルリアーナの神様ってどんな人なんだろ。女王信仰は、建国者でしょ。で、神様の方はどんな人なのかな」
ロキはそう言ってパンとスープを口にした。
「さあな」
シンは相変わらず窓の外を眺めている。のどかな田園風景は真っ暗で何も見えなくなっていた。
「王女殿下も言っていた『加護』ってやつは神様が与えるものなんだろ」
自分の首から下がっているお守りを取り出すと、シンは思い出して言った。小さな赤い袋の中に、宝石が入っていると王女が話していた。
不意に、中を確認したくなってシンは小袋の中身を取り出す。
深い青味を帯びた宝石は、ところどころ模様のような線が入っている。決して華やかな宝石ではなかったが、神秘的で美しかった。
「ああ、それ、あの人にもらったやつ」
ロキはシンが掌に出した宝石を見て自分の首から下げている袋を握る。
「そう、あの方にもらったお守りだよ。明日、ここの牧師様に聞いてみようか。神様のことと加護のこと」
シンはそう言って宝石をしまうと、床に座って食事に口をつけた。久しぶりの質素な夕食が、妙にありがたかった。
「そうだね。聞いてみよう。それにしても、ここは星がきれいなとこだね」
ロキはしみじみ言った。暗くなるにつれて、星の数は増え、どんどん輝きを増している。城下町や城から見た星とは、また比べ物にならないくらいに輝いているな、と2人は思った。
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「あーあ、こんなに綺麗な星を見ているのに、一緒にいるのがシンっていうのが笑えるよ」
ロキはそう言うとベッドに横たわった。二日酔いの身体に鞭打って歩いた反動がでているらしい。
「ホント、男同士で星がきれいとか、なんだかなあ」
シンもそう言ってベッドに腰を下ろす。「昨日は誰かの介抱だったし」とロキをいじった。
「あのさあ、ちょっと語っていい?」
ベッドに横たわってシンからは表情が見えないロキが、不意に言った。
「改まったな」
シンは笑った。
「俺さ、神様とか信じたこと無いし、毎日毎日、明日死んでもいいやって気持ちで過ごしてたんだけど」
ロキはベッドで天井を見たまま続けた。
「今は、死にたくないんだ。あの人に、お帰りって言って欲しくて」
ロキの話に、シンは頷いた。
「そうだな。この道中で俺たちの身に何かあれば、殿下は自分を責めるだろうな」
お守りに込められた想いには、自分たちを思いやる王女の気持ちを感じた。それが単純に嬉しかったので、シンもロキの話の意味がよく分かる。
「必ず、無事に帰ろう。柄じゃないって思うけど、願っていいかな」
ロキの言葉に、
「俺も願うよ」
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