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the 10th day 見えない力
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ハウザー騎士団の3人は、部屋でこれまでの情報を整理していた。
シンとロキから速達の報告が届いたばかりで、お互いが持っている情報を一度出しておこうという話になったのだ。
「まずは、シンとロキの状況だな。城の北にある伯爵領に着いたようだ。国内最古の教会を有しており、女王信仰があると思って訪ねてもらっているが、どうやらそれらしい信仰は根付いていないらしい。単に、建国の英雄としての女王を祀っているだけのようだ」
カイが内容を読み上げると、サラが、
「あたし、ちょっと聞き捨てならないことを耳にしたんだよ………」
と話しにくそうに言いだした。
「さっき、サーヤさんが言ってたんだけど、この国は大抵のことは国王が治めることになっているらしい。でも、国王はずっといないじゃない? で、王が居ない間はどうしているか? って聞いてみたんだけど……………その時は『先導士』って人が王の代わりに裁きや責務を負うんだって」
サラの突然の話に、ハンは、
「ん? いきなり出てきたその先導士ってのは何?」
と顔をしかめた。
「それがね、聞いても的を得なくてさ。みんな先導士が何者で、どこにいて、普段何をしているか知らないって言うの。だけど、国王の代わりに国を平定しているんだって。頭が混乱しそうだよ」
サラはそう言うと、
「先導士っていうくらいだから、もしかすると預言者や聖職者みたいな人なんじゃないかね。神様は別にいて、先導士は人々を導くという意味かな」
と、自身の考えを伝えた。
「宗教が存在している以上、そういった存在はどこかにいるだろう。まだ教会の実態が掴めていないから何とも言えないが、その『先導士』が国を治めるというのであれば、限りなく国政と結びつきが強い可能性があるな。王女の口からその話が出たことは無かったが、聞いてみるか」
カイは少し核心に近い情報を得たな、と思った。宗教が女王を信仰する以上、王族にとって都合の良い宗教になっている可能性が高い。
「なるほどねー」
ハンは2人の会話を聞きながら、頷いていた。
「何となく、分かってきた感じ?
①宗教は女王と王女を信仰対象にしている ➁王政を補う『先導士』という存在がある ③先王は他殺され、王妃も亡くなっている ④王女はただ一人の王位継承者として生き残った ⑤先王のことが忘れられている」
ハンが事実を列挙すると、小さく「ふーん」と声を出した。
「東洋の呪い師みたいなのが、どこかにいるのかな」
ハンが当たり前のように言ったので、カイは耳を疑った。
「呪い師・・・?」
カイは父親が東洋人だが、父親を早くに亡くしていたため東洋の文化や風習にはそれほど明るくない。対して、ハンは東洋の文化に明るかった。
「そうだよ。東洋では、呪いで物事を動かしたり、政治を行ったり、天気を操ったり、人を殺したりってことが日常的に行われている。まあ、この目で見たことはないんだけど、他人の記憶にも介入できるって点では、非常に近いかなって思うよ」
ハンの話す内容は、およそ現実味を帯びていない。
「いや、そんな目に見えない力、どうやって証明するんだ」
カイはそう言って一蹴しようとするが、
「何言ってんの、弟。自分が使っている気功ってやつも、はたからみたら同じだよ。目に見えないし、力を操るし、現実味がないだろ」
とハンは当たり前のように言う。
そのハンの説にも一理あった。カイも、自分の気功術が「妖術」と言われたときに妙に納得したのだった。
「つまりはさ、そういうことなんじゃないかな。呪い師なのかなんなのか、宗教が王政に干渉してる。そちら様にとって、王女は生かすべき存在で先王は邪魔だった。そういうこと」
ハンの仮説はなんとなく説得力を持っていたが、呪いなどというものを最初から想定してしまって良いものか、カイは悩んでいた。
「まだ宗教の核にも、『先導士』にも近づいていないんだから、あくまでもこれは今の段階での予想。でも、サラがサーヤさんから聞いたっていうなら、国民にも知られた存在がどこかにいる。実際いるのか、いるってことにしているのかは知らないけど」
ハンの話を聞いて、サラは、
「ああ、現実とは思えない話だけど、そういう存在、あたしは信じる。亡くなった隊長とカイの使っている力も、知っているしね」
と納得していた。
シンとロキから速達の報告が届いたばかりで、お互いが持っている情報を一度出しておこうという話になったのだ。
「まずは、シンとロキの状況だな。城の北にある伯爵領に着いたようだ。国内最古の教会を有しており、女王信仰があると思って訪ねてもらっているが、どうやらそれらしい信仰は根付いていないらしい。単に、建国の英雄としての女王を祀っているだけのようだ」
カイが内容を読み上げると、サラが、
「あたし、ちょっと聞き捨てならないことを耳にしたんだよ………」
と話しにくそうに言いだした。
「さっき、サーヤさんが言ってたんだけど、この国は大抵のことは国王が治めることになっているらしい。でも、国王はずっといないじゃない? で、王が居ない間はどうしているか? って聞いてみたんだけど……………その時は『先導士』って人が王の代わりに裁きや責務を負うんだって」
サラの突然の話に、ハンは、
「ん? いきなり出てきたその先導士ってのは何?」
と顔をしかめた。
「それがね、聞いても的を得なくてさ。みんな先導士が何者で、どこにいて、普段何をしているか知らないって言うの。だけど、国王の代わりに国を平定しているんだって。頭が混乱しそうだよ」
サラはそう言うと、
「先導士っていうくらいだから、もしかすると預言者や聖職者みたいな人なんじゃないかね。神様は別にいて、先導士は人々を導くという意味かな」
と、自身の考えを伝えた。
「宗教が存在している以上、そういった存在はどこかにいるだろう。まだ教会の実態が掴めていないから何とも言えないが、その『先導士』が国を治めるというのであれば、限りなく国政と結びつきが強い可能性があるな。王女の口からその話が出たことは無かったが、聞いてみるか」
カイは少し核心に近い情報を得たな、と思った。宗教が女王を信仰する以上、王族にとって都合の良い宗教になっている可能性が高い。
「なるほどねー」
ハンは2人の会話を聞きながら、頷いていた。
「何となく、分かってきた感じ?
①宗教は女王と王女を信仰対象にしている ➁王政を補う『先導士』という存在がある ③先王は他殺され、王妃も亡くなっている ④王女はただ一人の王位継承者として生き残った ⑤先王のことが忘れられている」
ハンが事実を列挙すると、小さく「ふーん」と声を出した。
「東洋の呪い師みたいなのが、どこかにいるのかな」
ハンが当たり前のように言ったので、カイは耳を疑った。
「呪い師・・・?」
カイは父親が東洋人だが、父親を早くに亡くしていたため東洋の文化や風習にはそれほど明るくない。対して、ハンは東洋の文化に明るかった。
「そうだよ。東洋では、呪いで物事を動かしたり、政治を行ったり、天気を操ったり、人を殺したりってことが日常的に行われている。まあ、この目で見たことはないんだけど、他人の記憶にも介入できるって点では、非常に近いかなって思うよ」
ハンの話す内容は、およそ現実味を帯びていない。
「いや、そんな目に見えない力、どうやって証明するんだ」
カイはそう言って一蹴しようとするが、
「何言ってんの、弟。自分が使っている気功ってやつも、はたからみたら同じだよ。目に見えないし、力を操るし、現実味がないだろ」
とハンは当たり前のように言う。
そのハンの説にも一理あった。カイも、自分の気功術が「妖術」と言われたときに妙に納得したのだった。
「つまりはさ、そういうことなんじゃないかな。呪い師なのかなんなのか、宗教が王政に干渉してる。そちら様にとって、王女は生かすべき存在で先王は邪魔だった。そういうこと」
ハンの仮説はなんとなく説得力を持っていたが、呪いなどというものを最初から想定してしまって良いものか、カイは悩んでいた。
「まだ宗教の核にも、『先導士』にも近づいていないんだから、あくまでもこれは今の段階での予想。でも、サラがサーヤさんから聞いたっていうなら、国民にも知られた存在がどこかにいる。実際いるのか、いるってことにしているのかは知らないけど」
ハンの話を聞いて、サラは、
「ああ、現実とは思えない話だけど、そういう存在、あたしは信じる。亡くなった隊長とカイの使っている力も、知っているしね」
と納得していた。
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