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the 9th day 貿易摩擦と関係悪化
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パースの伯爵であるクリストファーは、前回と違い単身で見合いの席に参加している。前回は同席した父親が主に話をしていたので、クリストファーの印象はレナの中では薄かった。2回目の席で話してみると、育ちが良く穏やかな人間性が伝わってくる。
栗毛のくせ毛に少し丸顔のクリストファーは、そばかすが少し目立つ素朴な顔をしていた。自分の事業の話をするときはしっかりした印象を与える。
「パースとルリアーナの貿易の件では、ルリアーナの貿易担当大臣からの通達があったということらしいです」
クリストファーの話に、
「そんなことだろうと思ったわ」
とレナは言ってメイソン公爵の所業に腹を立てている。情報を知ったのが、自国からの報告でなく他国の人間からだったことにも情けなくなった。
「この問題は、解決しそうなんでしょうか?」
クリストファーは心配そうにレナに聞いた。
「今、貿易担当大臣のところに調査と監視を入れたところです。早くパースとの国交を正常にしなければ、多くの犠牲が出そうですね」
とレナはクリストファーに頭を下げながら言った。
「王女殿下のせいだとは思っていませんが、パースの国民感情は反ルリアーナに傾いてきています。今ここでパースが反乱を起こせば、ルリアーナは無傷では済まないでしょう」
クリストファーはそう言うと、
「急いでください。生活が懸かっているので、市民は何をするか分からない」
と真剣にレナに忠告した。その表情には、レナに対する不満も見て取れる。
その表情を見たハンが明らかに「大変だ」とでも言いたそうな顔でレナを見ていた。
「こんな状況なのに、わざわざこちらまで出向いてくださり、ありがとうございます」
と、レナはクリストファーに深く礼をすると、
「私はこんな状況だから、なるべく急いで来たんです。正直に申し上げると、ルリアーナの国内政治には不信感を抱いていますから」
と、クリストファーは突き放すように言った。
「パースの状況は、思った以上に深刻だな」
見合いが終わって、そのまま応接室にハウザー騎士団の3人とレナが集まって話をしている。
カイは、自分の仕事の範囲ではないとはいえ、このままではまずいと危機感を覚えていた。
レナとカイはクリストファーの言葉を思い出しながら、ルリアーナの置かれている環境をどうするべきかと頭を抱えていた。
「まさか、あんなハッキリ言われるとはね。パースの伯爵はよっぽど事業上の不利益を被ったかな」
ハンが初めての見合いで観た光景に、素直な感想を述べている。
「あたしが見てきたパースの状況は、まさにフラストレーションを溜め込み始めた感じだったわよ」
と、サラも会話に加わった。やはり、パースとルリアーナの同盟国としての関係はかなり危うくなっているのだろう。
「貿易担当大臣のところにポテンシアの近衛兵が到着して、まだ1日程度かしらね。こうしている間にも、市民の生活に支障が出てきているんだわ……」
と、レナは悔しそうな顔で焦っている。
「落ち着け。今ここで話していても何も解決しない。貿易担当大臣のところにはポテンシアの兵が、そして国内各地の情報収集にはシンとロキを向かわせた。俺は、あいつらを信じるしかない」
カイはそう言うと普段よりも明らかに元気がないレナを見て、
「今日は、やはりいつもの調子が出ないようだな」
とため息をついた。
レナは大丈夫だと言いかけたが、カイはその返事を待たずにレナを部屋に戻らせることにする。
「少しは、休むことも覚えたらいい」
カイはそう言いながら、レナをエスコートすると、それ以上は何も言わなかった。
栗毛のくせ毛に少し丸顔のクリストファーは、そばかすが少し目立つ素朴な顔をしていた。自分の事業の話をするときはしっかりした印象を与える。
「パースとルリアーナの貿易の件では、ルリアーナの貿易担当大臣からの通達があったということらしいです」
クリストファーの話に、
「そんなことだろうと思ったわ」
とレナは言ってメイソン公爵の所業に腹を立てている。情報を知ったのが、自国からの報告でなく他国の人間からだったことにも情けなくなった。
「この問題は、解決しそうなんでしょうか?」
クリストファーは心配そうにレナに聞いた。
「今、貿易担当大臣のところに調査と監視を入れたところです。早くパースとの国交を正常にしなければ、多くの犠牲が出そうですね」
とレナはクリストファーに頭を下げながら言った。
「王女殿下のせいだとは思っていませんが、パースの国民感情は反ルリアーナに傾いてきています。今ここでパースが反乱を起こせば、ルリアーナは無傷では済まないでしょう」
クリストファーはそう言うと、
「急いでください。生活が懸かっているので、市民は何をするか分からない」
と真剣にレナに忠告した。その表情には、レナに対する不満も見て取れる。
その表情を見たハンが明らかに「大変だ」とでも言いたそうな顔でレナを見ていた。
「こんな状況なのに、わざわざこちらまで出向いてくださり、ありがとうございます」
と、レナはクリストファーに深く礼をすると、
「私はこんな状況だから、なるべく急いで来たんです。正直に申し上げると、ルリアーナの国内政治には不信感を抱いていますから」
と、クリストファーは突き放すように言った。
「パースの状況は、思った以上に深刻だな」
見合いが終わって、そのまま応接室にハウザー騎士団の3人とレナが集まって話をしている。
カイは、自分の仕事の範囲ではないとはいえ、このままではまずいと危機感を覚えていた。
レナとカイはクリストファーの言葉を思い出しながら、ルリアーナの置かれている環境をどうするべきかと頭を抱えていた。
「まさか、あんなハッキリ言われるとはね。パースの伯爵はよっぽど事業上の不利益を被ったかな」
ハンが初めての見合いで観た光景に、素直な感想を述べている。
「あたしが見てきたパースの状況は、まさにフラストレーションを溜め込み始めた感じだったわよ」
と、サラも会話に加わった。やはり、パースとルリアーナの同盟国としての関係はかなり危うくなっているのだろう。
「貿易担当大臣のところにポテンシアの近衛兵が到着して、まだ1日程度かしらね。こうしている間にも、市民の生活に支障が出てきているんだわ……」
と、レナは悔しそうな顔で焦っている。
「落ち着け。今ここで話していても何も解決しない。貿易担当大臣のところにはポテンシアの兵が、そして国内各地の情報収集にはシンとロキを向かわせた。俺は、あいつらを信じるしかない」
カイはそう言うと普段よりも明らかに元気がないレナを見て、
「今日は、やはりいつもの調子が出ないようだな」
とため息をついた。
レナは大丈夫だと言いかけたが、カイはその返事を待たずにレナを部屋に戻らせることにする。
「少しは、休むことも覚えたらいい」
カイはそう言いながら、レナをエスコートすると、それ以上は何も言わなかった。
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