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the 8th night 通じない想い
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扉の向こう側で、男性の声がする。
「ごめんなさい、ちょっと眠れなかったから、少し話し相手を探していて」
レナがそう声を掛けると、
「それって、俺で良いんですかね?」
と声がして、相手がロキだと分かった。レナが内鍵を開けて扉を開くと、目の前にロキの姿がある。
「ご迷惑だったかしら」
レナは少し遠慮気味にロキの様子をうかがった。
「いいえ、全く」
とロキはいつも通りの涼しい顔で笑う。レナをソファまでエスコートすると、自分は床に座ろうとした。
「隣、座ればいいのに」
レナが何気なく提案すると、ロキは、
「そんなにわきまえてませんかね。殿下の隣に座れるほど……」
と言って、そのまま床に座った。
「眠れないって、何かあったんですか?」
ロキは少し離れた位置に片膝を抱えて座っているが、暗がりの中で月光を浴び、もともとの整った顔がより美しく見える。
「私ね、身分の差がこの世から無くなれば良いのにって思うことがあるの」
レナがそう言うと、ロキは「ああ……」と声を発し、
「団長ですか?」
と聞いた。
レナは何故そこでカイが出てくるのか分からず、
「カイ? が、どうしたの?」
とキョトンとしながら尋ねる。
「あ、そっちじゃなかったか……じゃあ、誰とでも分け隔てなく話したいとか、そういうことですか?」
ロキは明らかに動揺していた。夜中に王女が自分を訪ねて来るとは思っていなかったのだ。
「もっと根本よ。人に上とか下とか、そういう階級がついていることがおかしいってこと」
そのレナの言葉に、ロキは顔を曇らせた。
「はは……それを、王女殿下が言うんだ……」
予想外の言葉に、力なくそう返すことしかできない。
「もうすぐ女王陛下になる人が、そういうこと言うのは良くないんじゃないですか?」
ロキは、怒った口調ではっきり言うと、
「その権力で人を導くべき人が、逃げているとしか思えないんだけど」
と、独り言を呟いた。それをしっかり聞いたレナは、
「そうね、逃げたくなったことは何度もあったけど、今回は違う。封建制度と絶対王政を無くしたいってことだから」
と、静かに語った。相変わらず強い目でロキの方を見ている。
「それ、俺に言ってどうするんですか。俺はブリステ人で、ルリアーナの封建制度と絶対王政には関係ないですよ」
ロキは、少し冷たい口調で言い返す。昨日の夜に恋愛について楽しそうに語っていた人物とは、とても同じに思えないほど冷ややかな表情をしていた。
「いい目ね」
レナはそのロキの鋭い目を見て言った。
「本音でぶつかってきてくれるから、この話をロキとできて嬉しいわ」
レナは本当に嬉しそうな顔でそう言うと、
「つまり、あなたはこの国の封建制度と絶対王政には興味がないけれど、私との身分の差は気にしてそこに座るのよね?」
と、王女の風格でロキに言い放った。
「…………!」
ロキは図星で言葉を失っている。
「私、ロキとは人と人の関係で、少しは仲良くなれた気がしていたの。でも、今のままでは、私たちの間にあるこの差が埋まることはない」
レナはそう言ってソファから立ち上がり、ロキの前まで歩くと、すっと手を差し出した。
「立って」
ロキはレナの手を取らずに自分で立ち上がると、立ち上がった後でレナの手を軽くとり、至近距離で目の前の王女の姿を見た。
ロキの目線よりかなり下にレナの頭がある。背が低い印象が無かったのは普段は高いヒールを履いていたのだと、ロキは初めて気がついた。
「これが、本来の私たちの距離感だわ。人と人の間に、位なんて作るべきじゃない」
レナはそう言うと、
「もし私が王女じゃなかったら、ロキは私のことを女性として扱ってくれたんでしょ?」
と、いつもの調子で笑った。
「ごめんなさい、ちょっと眠れなかったから、少し話し相手を探していて」
レナがそう声を掛けると、
「それって、俺で良いんですかね?」
と声がして、相手がロキだと分かった。レナが内鍵を開けて扉を開くと、目の前にロキの姿がある。
「ご迷惑だったかしら」
レナは少し遠慮気味にロキの様子をうかがった。
「いいえ、全く」
とロキはいつも通りの涼しい顔で笑う。レナをソファまでエスコートすると、自分は床に座ろうとした。
「隣、座ればいいのに」
レナが何気なく提案すると、ロキは、
「そんなにわきまえてませんかね。殿下の隣に座れるほど……」
と言って、そのまま床に座った。
「眠れないって、何かあったんですか?」
ロキは少し離れた位置に片膝を抱えて座っているが、暗がりの中で月光を浴び、もともとの整った顔がより美しく見える。
「私ね、身分の差がこの世から無くなれば良いのにって思うことがあるの」
レナがそう言うと、ロキは「ああ……」と声を発し、
「団長ですか?」
と聞いた。
レナは何故そこでカイが出てくるのか分からず、
「カイ? が、どうしたの?」
とキョトンとしながら尋ねる。
「あ、そっちじゃなかったか……じゃあ、誰とでも分け隔てなく話したいとか、そういうことですか?」
ロキは明らかに動揺していた。夜中に王女が自分を訪ねて来るとは思っていなかったのだ。
「もっと根本よ。人に上とか下とか、そういう階級がついていることがおかしいってこと」
そのレナの言葉に、ロキは顔を曇らせた。
「はは……それを、王女殿下が言うんだ……」
予想外の言葉に、力なくそう返すことしかできない。
「もうすぐ女王陛下になる人が、そういうこと言うのは良くないんじゃないですか?」
ロキは、怒った口調ではっきり言うと、
「その権力で人を導くべき人が、逃げているとしか思えないんだけど」
と、独り言を呟いた。それをしっかり聞いたレナは、
「そうね、逃げたくなったことは何度もあったけど、今回は違う。封建制度と絶対王政を無くしたいってことだから」
と、静かに語った。相変わらず強い目でロキの方を見ている。
「それ、俺に言ってどうするんですか。俺はブリステ人で、ルリアーナの封建制度と絶対王政には関係ないですよ」
ロキは、少し冷たい口調で言い返す。昨日の夜に恋愛について楽しそうに語っていた人物とは、とても同じに思えないほど冷ややかな表情をしていた。
「いい目ね」
レナはそのロキの鋭い目を見て言った。
「本音でぶつかってきてくれるから、この話をロキとできて嬉しいわ」
レナは本当に嬉しそうな顔でそう言うと、
「つまり、あなたはこの国の封建制度と絶対王政には興味がないけれど、私との身分の差は気にしてそこに座るのよね?」
と、王女の風格でロキに言い放った。
「…………!」
ロキは図星で言葉を失っている。
「私、ロキとは人と人の関係で、少しは仲良くなれた気がしていたの。でも、今のままでは、私たちの間にあるこの差が埋まることはない」
レナはそう言ってソファから立ち上がり、ロキの前まで歩くと、すっと手を差し出した。
「立って」
ロキはレナの手を取らずに自分で立ち上がると、立ち上がった後でレナの手を軽くとり、至近距離で目の前の王女の姿を見た。
ロキの目線よりかなり下にレナの頭がある。背が低い印象が無かったのは普段は高いヒールを履いていたのだと、ロキは初めて気がついた。
「これが、本来の私たちの距離感だわ。人と人の間に、位なんて作るべきじゃない」
レナはそう言うと、
「もし私が王女じゃなかったら、ロキは私のことを女性として扱ってくれたんでしょ?」
と、いつもの調子で笑った。
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