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the 8th day 女騎士登場
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「久しぶりじゃない! 団長にシンにロキ。みんな元気そうだね」
ルリアーナにハウザー騎士団の古株、サラ・フォートンが到着した。
サラは42歳の女性騎士で、もともとはカイの父親の部下だった。男性に負けないがっしりとした体格で、明るい栗色の毛を後ろでひとつの三つ編みに束ねている。顔の中でもパーツの大きな口を開けると迫力があり、体格に負けない大きな声が出る。
シンとロキは、この女性にいつも規律について指導されて冷や汗をかいている。サラは騎士団の母親的なポジションだった。
「サラさんも、久しぶりに会うとやっぱデカいですね」
シンがそう言うと、
「久しぶりに会った第一声が『デカい』ってどういう神経してんのよ。あんたの方が背丈あるでしょうが」
とサラはシンを睨んだ。
「これが現実か」
ロキはサラを見て、どこかに飛んでいた意識が戻って来たらしい。
「さっきここのお姫様に挨拶してきたけど、うちの娘に負けないくらい可愛かったわ」
と、サラが言ったので、
「親バカかよ」
とロキは呟いた。
「あんた、聞こえってからね」
サラがロキを睨む様子を見て、
「賑やかだな…………」
とカイは遠い目をして眺めていた。
その日の夕食は、4人で城の使用人専用の食堂にいた。
「明日の早朝には発つんでしょ? 気を付けて行きなさいよ?」
サラがシンとロキを気遣うと、
「俺達にはこの国の加護があるんで、そういうの間に合ってます」
とロキはサラの激励を断った。その様子に驚いたサラは、
「ねえ団長、この子ちょっとアホの子になってない?」
とカイに同意を求める。
「頭が痛いなと思っているところだ」
と、カイは食後のコーヒーをすすりながら眉間に皺を寄せていた。
「まあいいわ。ここに来るまでにパースに居たんだけどさ、団長が雇われていた地方の貴族が今、結構大変なんだってよ」
サラがこれまで滞在していたパースで見てきたことを話し始める。
「ほら、あたしクライアントの挨拶に回っていたんだけどさ、あそこルリアーナからの輸入品を国内で販売することが多いみたいでね。商売になんないんだって」
サラの話に、カイは、
「関税が変わったとか、品物が入らなくなったとか、大方そんなところだろう」
と何か確信を持った様子でサラに尋ねた。
「正解。団長知ってたの。どうも黒幕がいるみたいで、パースじゃ反ルリアーナの感情が高まって来ちゃってるみたいだよ」
サラの声が大きいのでシンは周りにも聞こえそうでハラハラしていたが、カイは気にもせずに続けた。
「パースとポテンシアの輸出入は、誰かが操作しているようだ。それを俺たちで調査する」
ロキは、(団長、もしやワザと聞こえるように・・)と察して黙っていた。
「さて、さっきの話に食いついて行動してくるやつがいたら収穫だな」
カイが自室に戻ってトレーニングを始めると、
「やっぱあれ、聞こえるように言ってたんですか」
とロキは腹筋で起き上がりながら納得していた。
「サラさんの声ってデカいし良く通るからハラハラしましたよ」
シンは腕をストレッチしながら苦笑いしている。
「まあ、あの程度でこちらに接触してくるような奴なら、とっくに俺は何かしらされているはずだから当面は大丈夫だろうな。一応、早朝の出発時に誰かにつけられていないか、用心しておけよ」
カイはそう言うと自室に設置された鉄棒で懸垂を始めた。
ここ数日、実践が殆どないまま過ごしているため、身体がすっかりなまりそうでそれぞれ危機意識を持ってトレーニングに励んでいる。
「もう、明日にはここを発つのか……」
シンがスクワットをしながらしみじみしていると、
「永遠の別れってわけじゃないんだし、さっさと片付けて戻ってくるしかないんじゃないの……?」
と、ロキは腹筋の自重トレーニングに顔を歪めながら言った。
「まあな、一人で行く任務ってわけじゃないしな。よろしく」
シンはロキに向かって笑った。
ルリアーナにハウザー騎士団の古株、サラ・フォートンが到着した。
サラは42歳の女性騎士で、もともとはカイの父親の部下だった。男性に負けないがっしりとした体格で、明るい栗色の毛を後ろでひとつの三つ編みに束ねている。顔の中でもパーツの大きな口を開けると迫力があり、体格に負けない大きな声が出る。
シンとロキは、この女性にいつも規律について指導されて冷や汗をかいている。サラは騎士団の母親的なポジションだった。
「サラさんも、久しぶりに会うとやっぱデカいですね」
シンがそう言うと、
「久しぶりに会った第一声が『デカい』ってどういう神経してんのよ。あんたの方が背丈あるでしょうが」
とサラはシンを睨んだ。
「これが現実か」
ロキはサラを見て、どこかに飛んでいた意識が戻って来たらしい。
「さっきここのお姫様に挨拶してきたけど、うちの娘に負けないくらい可愛かったわ」
と、サラが言ったので、
「親バカかよ」
とロキは呟いた。
「あんた、聞こえってからね」
サラがロキを睨む様子を見て、
「賑やかだな…………」
とカイは遠い目をして眺めていた。
その日の夕食は、4人で城の使用人専用の食堂にいた。
「明日の早朝には発つんでしょ? 気を付けて行きなさいよ?」
サラがシンとロキを気遣うと、
「俺達にはこの国の加護があるんで、そういうの間に合ってます」
とロキはサラの激励を断った。その様子に驚いたサラは、
「ねえ団長、この子ちょっとアホの子になってない?」
とカイに同意を求める。
「頭が痛いなと思っているところだ」
と、カイは食後のコーヒーをすすりながら眉間に皺を寄せていた。
「まあいいわ。ここに来るまでにパースに居たんだけどさ、団長が雇われていた地方の貴族が今、結構大変なんだってよ」
サラがこれまで滞在していたパースで見てきたことを話し始める。
「ほら、あたしクライアントの挨拶に回っていたんだけどさ、あそこルリアーナからの輸入品を国内で販売することが多いみたいでね。商売になんないんだって」
サラの話に、カイは、
「関税が変わったとか、品物が入らなくなったとか、大方そんなところだろう」
と何か確信を持った様子でサラに尋ねた。
「正解。団長知ってたの。どうも黒幕がいるみたいで、パースじゃ反ルリアーナの感情が高まって来ちゃってるみたいだよ」
サラの声が大きいのでシンは周りにも聞こえそうでハラハラしていたが、カイは気にもせずに続けた。
「パースとポテンシアの輸出入は、誰かが操作しているようだ。それを俺たちで調査する」
ロキは、(団長、もしやワザと聞こえるように・・)と察して黙っていた。
「さて、さっきの話に食いついて行動してくるやつがいたら収穫だな」
カイが自室に戻ってトレーニングを始めると、
「やっぱあれ、聞こえるように言ってたんですか」
とロキは腹筋で起き上がりながら納得していた。
「サラさんの声ってデカいし良く通るからハラハラしましたよ」
シンは腕をストレッチしながら苦笑いしている。
「まあ、あの程度でこちらに接触してくるような奴なら、とっくに俺は何かしらされているはずだから当面は大丈夫だろうな。一応、早朝の出発時に誰かにつけられていないか、用心しておけよ」
カイはそう言うと自室に設置された鉄棒で懸垂を始めた。
ここ数日、実践が殆どないまま過ごしているため、身体がすっかりなまりそうでそれぞれ危機意識を持ってトレーニングに励んでいる。
「もう、明日にはここを発つのか……」
シンがスクワットをしながらしみじみしていると、
「永遠の別れってわけじゃないんだし、さっさと片付けて戻ってくるしかないんじゃないの……?」
と、ロキは腹筋の自重トレーニングに顔を歪めながら言った。
「まあな、一人で行く任務ってわけじゃないしな。よろしく」
シンはロキに向かって笑った。
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