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the 7th night 恋とか愛とか
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シンとロキは王女の部屋と隣合わせになっている中間の部屋で、レナの到着を待っていた。ずっと立ったまま、時折歩いたり外を眺めたりして同じ場所に立っていることすらできないでいる。
「2人とも、そこに居るの?」
隣から声がすると、シンとロキは、
「はい!」
と同時に声を上げて立ち止まった。
レナがランタンを持ちながら部屋に入ってくると、薄暗い部屋に明かりが灯る。少し軽装に着替えて髪を下したレナは、飾り気がなく実年齢の19歳よりも幼く見えた。
「こんばんは。今日は、少しだけ付き合ってね」
レナがそう言って2人の前に姿を現すと、シンもロキも緊張して固くなっているのが分かる。
「そんなに構えなくても、カイに告げ口したり陰口を言ったりしないから安心して。今だけは、王女殿下も禁止よ、同年代の友人だと思って接してね」
レナはそう言うと部屋のソファに身体を預けて、
「ねえ、今日のお見合い相手、どう思った?」
と2人に尋ねた。
「ポテンシアの第4王子のことですか……」
シンが立ったまま身体をレナの方に向けて尋ねると、
「そう。カイの意見じゃなくて、あなたたちの意見を聞いてみたいなと思って」
とレナは言い、伸びをして「はあ」と息を吐いた。
「個人の意見としては、とてもお似合いだと思いました」
シンはそう言ってお見合いの様子を思い出していた。
「年齢も近くて、見た目も良くて、頭も良さそうで、完璧な人でしたよね」
「でも、あの人って遊び人だと思わない?」
レナはそう言うと、ルイスに耳元で囁かれた一連の行動を思い出す。少し悔しそうな、それでいて恥ずかしそうな顔をしていた。
「今、遊び人だと、何かまずいんですか?」
ロキが尋ねると、レナは首を振って、
「ほら、私って公務ばかりでつまらない人間でしょ?なんだか、惨めになりそう」
と小さな声で言った。
「まさか!」
シンが目を見開いて驚き、ロキは整った顔を崩し、レナの言葉の意味が理解できない。
「つまらない人間?? ってどういう意味でしたっけ……いや、それだけは無いんで安心してください」
「比べる対象が多い分、ルイス様の中ではむしろ殿下の魅力が際立ってると思いますけど」
と2人は一生懸命否定した。
「優しいのね」
レナがそう言って寂しそうに笑うと、
「これは優しさじゃなくて本音です」
「ええと、何を言ったら信じてもらえるか……」
と2人は悩んでいた。
「例えば、シンと私はそれなりに女性経験があるんですが……」
「おい、ロキやめろ」
一生懸命考えた末のロキの話し始めに、シンが焦って止めようとする。
「いや、シン、ここはちゃんと真実を話した方が良い」
「いや、そうかな・・ああ、ロキが言うならそうなのかな……」
シンは自分の恋愛経験をレナに聞かれるのは不本意だったが、ロキの情熱に折れることにした。
「女性経験があるということは、それだけ女性に興味があるってことなんですよね」
「いや、やっぱりその話、止めにしないか……」
シンはロキの発言が恥ずかしくていたたまれなくなっている。
「で、色々な女性に興味のある私たち2人の意見ですが、殿下は本当に素敵な女性です」
ロキが恥ずかしげもなくそう言うと、シンも、
「あ、賛成です。俺、こんな可愛い人が女王になるとか、この国には信じられないことが起きてるなって思いましたし」
といきなり素直にロキの意見に賛成した。
「私が王女で雇い主だからって、お世辞でしょ……」
レナはいまいち信じていない様子で2人を見ている。本心ではなく、自分を慰めようとしてくれているのだなと苦笑した。そんなレナに気付いたロキは、
「例えば、殿下は普段背筋も正しく王女らしい出で立ちで振舞っていますが、実はピュアでちょっとしたことで赤くなって照れたりするじゃないですか」
と、具体的な例を挙げて魅力を語りだす。
「え、ええ、そういうの見られていたのね……」
レナは恥ずかしそうに頷いた。褒められているのかよく分からないが、とりあえず自分のことを良く見てくれていることは分かる。
「気が強いくせに、自分の言動に落ち込んだりしますよね」
「ええ……それもバレてるの……」
レナはいよいよ顔を上げられなくなっていた。
「団長に憧れて、ちょっとしたことで浮かれたりしてたじゃないですか」
「…………」
「おい、ロキ。もうやめて差し上げろ……」
レナの様子に、流石にシンも見ていられなくなった。
「そんなに、分かりやすかったなんて……」
レナが恥ずかしくて震えていると、
「だからもーそういうところがすげー可愛いって言ってんですよ。無自覚? 無自覚なんですね!?」
とシンは思わずツッコミを入れた。
「なんていうか、殿下の魅力が分からない男性って、男性じゃないんですよね。だからポテンシアのルイス様なんかは、きっと今頃殿下をどうやったら喜ばせることができるかとか、真剣に考えていらっしゃると思いますよ」
と、ロキも少しレナからダメージを受けつつ語った。レナはロキの言葉に、
「その、男性じゃない男性って、例えばカイのことよね?」
と質問すると、2人は何も返事が出来なくなった。
「2人とも、そこに居るの?」
隣から声がすると、シンとロキは、
「はい!」
と同時に声を上げて立ち止まった。
レナがランタンを持ちながら部屋に入ってくると、薄暗い部屋に明かりが灯る。少し軽装に着替えて髪を下したレナは、飾り気がなく実年齢の19歳よりも幼く見えた。
「こんばんは。今日は、少しだけ付き合ってね」
レナがそう言って2人の前に姿を現すと、シンもロキも緊張して固くなっているのが分かる。
「そんなに構えなくても、カイに告げ口したり陰口を言ったりしないから安心して。今だけは、王女殿下も禁止よ、同年代の友人だと思って接してね」
レナはそう言うと部屋のソファに身体を預けて、
「ねえ、今日のお見合い相手、どう思った?」
と2人に尋ねた。
「ポテンシアの第4王子のことですか……」
シンが立ったまま身体をレナの方に向けて尋ねると、
「そう。カイの意見じゃなくて、あなたたちの意見を聞いてみたいなと思って」
とレナは言い、伸びをして「はあ」と息を吐いた。
「個人の意見としては、とてもお似合いだと思いました」
シンはそう言ってお見合いの様子を思い出していた。
「年齢も近くて、見た目も良くて、頭も良さそうで、完璧な人でしたよね」
「でも、あの人って遊び人だと思わない?」
レナはそう言うと、ルイスに耳元で囁かれた一連の行動を思い出す。少し悔しそうな、それでいて恥ずかしそうな顔をしていた。
「今、遊び人だと、何かまずいんですか?」
ロキが尋ねると、レナは首を振って、
「ほら、私って公務ばかりでつまらない人間でしょ?なんだか、惨めになりそう」
と小さな声で言った。
「まさか!」
シンが目を見開いて驚き、ロキは整った顔を崩し、レナの言葉の意味が理解できない。
「つまらない人間?? ってどういう意味でしたっけ……いや、それだけは無いんで安心してください」
「比べる対象が多い分、ルイス様の中ではむしろ殿下の魅力が際立ってると思いますけど」
と2人は一生懸命否定した。
「優しいのね」
レナがそう言って寂しそうに笑うと、
「これは優しさじゃなくて本音です」
「ええと、何を言ったら信じてもらえるか……」
と2人は悩んでいた。
「例えば、シンと私はそれなりに女性経験があるんですが……」
「おい、ロキやめろ」
一生懸命考えた末のロキの話し始めに、シンが焦って止めようとする。
「いや、シン、ここはちゃんと真実を話した方が良い」
「いや、そうかな・・ああ、ロキが言うならそうなのかな……」
シンは自分の恋愛経験をレナに聞かれるのは不本意だったが、ロキの情熱に折れることにした。
「女性経験があるということは、それだけ女性に興味があるってことなんですよね」
「いや、やっぱりその話、止めにしないか……」
シンはロキの発言が恥ずかしくていたたまれなくなっている。
「で、色々な女性に興味のある私たち2人の意見ですが、殿下は本当に素敵な女性です」
ロキが恥ずかしげもなくそう言うと、シンも、
「あ、賛成です。俺、こんな可愛い人が女王になるとか、この国には信じられないことが起きてるなって思いましたし」
といきなり素直にロキの意見に賛成した。
「私が王女で雇い主だからって、お世辞でしょ……」
レナはいまいち信じていない様子で2人を見ている。本心ではなく、自分を慰めようとしてくれているのだなと苦笑した。そんなレナに気付いたロキは、
「例えば、殿下は普段背筋も正しく王女らしい出で立ちで振舞っていますが、実はピュアでちょっとしたことで赤くなって照れたりするじゃないですか」
と、具体的な例を挙げて魅力を語りだす。
「え、ええ、そういうの見られていたのね……」
レナは恥ずかしそうに頷いた。褒められているのかよく分からないが、とりあえず自分のことを良く見てくれていることは分かる。
「気が強いくせに、自分の言動に落ち込んだりしますよね」
「ええ……それもバレてるの……」
レナはいよいよ顔を上げられなくなっていた。
「団長に憧れて、ちょっとしたことで浮かれたりしてたじゃないですか」
「…………」
「おい、ロキ。もうやめて差し上げろ……」
レナの様子に、流石にシンも見ていられなくなった。
「そんなに、分かりやすかったなんて……」
レナが恥ずかしくて震えていると、
「だからもーそういうところがすげー可愛いって言ってんですよ。無自覚? 無自覚なんですね!?」
とシンは思わずツッコミを入れた。
「なんていうか、殿下の魅力が分からない男性って、男性じゃないんですよね。だからポテンシアのルイス様なんかは、きっと今頃殿下をどうやったら喜ばせることができるかとか、真剣に考えていらっしゃると思いますよ」
と、ロキも少しレナからダメージを受けつつ語った。レナはロキの言葉に、
「その、男性じゃない男性って、例えばカイのことよね?」
と質問すると、2人は何も返事が出来なくなった。
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