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the 7th day ご執心

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 ルイス・ポテンシアは帰国途中の馬車の中で、早速レナから託されたレモネードをワイングラスに少しだけ注いでいた。

「芳醇な香り、色も格別に美しい。彼女のようだね」
 一口飲むと、今まで口にしたどんな果実酒よりも豊満な味わいが強烈で、驚愕した。
「素晴らしいな……。なんとしても、私のものにしたい……」

 ルイスはポテンシアの第四王子として、これまで特に何かに執着したことも、何かを強烈に欲したこともなく生きてきた。
 望めば手に入るものが多い環境で、王位だけは全く自分には関係がない。
 いつしか、期待されずに適当にやり過ごして生きることが、ルイスらしさのようになっていた。

 ただひとり、ルイスにはずっと気になっていた存在がいる。それは、農業国で豊かな自然に抱かれ、国民からも愛される、唯一の王女。
 その王女が見合いを始めると、候補者が彼女に断られ脱落していくのを情報収集しながら、自分の登場機会を探っていた。

 周辺の王侯貴族に人気の彼女のことだ、すぐに婚約者が決まるとは考え難かった。利用価値を感じてもらえなければ、自分もその他大勢になりかねない。

 ルイスは、材料を探した。すると、ルリアーナの貴族に不審な動きが見られた。

(これを材料に、会いに行こう)
 ルイスはそう決めると、優秀な部下を集めた上で、国王だけが持つ優秀な間諜を手配した。
 国の陰謀に対抗するには、この手のことを理解して動ける人材がいるべきだということを、ルイスはよく知っている。王女の役に立てなければ、今回の計画は失敗に終わるのだ。

 ルイスはルリアーナの第一王女を思い出す。彼女はどうしてこうも自分の心を掴むのだろうか。
 10年近く前に初めて視界に入れた日の想いを、ゆっくり咀嚼するように噛み締めている。

 遠い日、同盟国の第一王女だという彼女が、たった一人の王位継承者として生きていることを父親に聞いた。
 自分とほとんど歳が変わらない、ただの少女にしか見えない王女は、国の代表だったのだ。国の犠牲になって幼い頃から仕事漬けだったに違いないのに、ルイスの兄たちには見られない情熱を感じさせた。ルイスには、それが不思議で仕方がなかった。
 父親と共にいたレナを遠くから見たルイスは、あの王女の隣に立つには何をしたら良いのかという興味と、ルリアーナへの関心が生まれた。彼女がポテンシアを訪れる時、ルイスは部外者としてレナを眺めることしかできなかったからだ。

 それがどうか。直接会うことが叶うと、凛とした態度を崩さない佇まいの割に、耳元で囁いただけでああも動揺してしまう女性だったのだ。
 彼女こそ、自分が人生を懸けて探してきた運命の女性に違いないという確信がある。都合の良いことに、見合い相手として王族同士の話ができるだけでなく、同盟国の協力者として現れることができた。

 どう動いたら彼女の特別になれるのだろう。
 レモネードをゆっくり飲み干すと、ルイスはその酸味と苦みの余韻に暫く浸っていた。
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