34 / 221
the 7th day 見合い、のち戦略会議
しおりを挟む
その日の見合い後の打ち合わせは、カイとレナだけでなくシンとロキも参加した。
「ルイス殿下は、見合い相手としても協力者としても通じていて問題ないだろうな」
カイがそう言うと、
「いや~、王族で美青年、嫌味なくらいイイ男でしたね」
とシンは思い出して赤面している。ロキは部屋の外にいてルイスの会話こそ聞いていなかったが、
「ポテンシアの王族って、評判悪くないですよね。まぁ、確かにちょっと手が早そうな雰囲気はしましたけど」
とストレートに感想を言った。
「プレイボーイな感じね」
レナは先ほどのルイスの態度を思い出しながら、少しムスッとしている。
「婚約すれば、さすがに女性関係の心配は無くなると思いますけど。何かあったんですか?」
と、ロキはレナの様子に驚いて言った。
「何かって、別に無いわよ。ちょっと相手のペースに飲まれてしまって悔しいだけ」
レナがそう言って口を尖らせているのを、シンが、
(可愛いなオイ)
と見惚れているのをカイは一瞥し、
「では、今回の相手も見合いは先に進めることに異論はないな。パースとポテンシアに1人ずつ、協力者兼婚約者候補が残っているのはいい傾向だ」
と言うと、応接室で待たせているポテンシアの護衛との打ち合わせに向かうことにした。
先程まで顔を合わせていたルイスの護衛2名が、少し砕けた雰囲気で部屋に残っていた。
「さて、早速だが、急遽こちらの改革に協力してもらえることになり、本当に感謝している。改めて、カイ・ハウザーだ。よろしく頼む」
カイが頭を下げて挨拶をすると、ポテンシアの護衛2人は顔を合わせ、
「やはり、あなたがハウザー団長」
「確信はなかったものの、なんとなくそんな気がしていました」
と口を開く。
「ブラッド・クラウスだ。ポテンシアの近衛兵で、第4王子付きの護衛をしている」
「レオナルド・サントーロです。普段は国王の間諜を務めています」
ブラッドは20代後半くらいの若者で、短髪の明るい茶色の髪、面長の顔に切り傷跡がいくつかある兵士らしい男だ。レオナルドは20代半ばくらいの、少し細身の若者だった。暗めの茶色の髪を刈り上げており、やわらかい表情の中にある鋭い目つきが印象的だ。
「実は、既に黒に近い貴族が1名いて、王女に危害を加えかけたため昨日私が城から追い出した経緯がある。恐らく王女信仰の教会を使って庶民への布教も行なっていると見ている。残念ながら爵位が公爵なんだが」
カイはそう言って昨日の見合い相手のプロフィールを渡す。
「公爵が反勢力とは、出だしからすごい情報ですね」
レオナルドは公爵の資料を見て、
「しかも、関所のある地域の領主で貿易担当大臣。これまでの経緯を考えると分かりやすいですね」
と言った。ブラッドは暫く黙って資料を読み込んでから、
「ハウザー殿との連携や、我々の動き方を決めておきたいところだが、ハッキリ申し上げてルリアーナの貴族自体に自警能力は全く無いので、外の介入がなければすぐに核心に入り込めるだろう。ただ……少し気になっているのが、その外からの介入というやつだ」
と、カイの方を窺いながら少し言いにくそうにした。
「分かっている、リブニケ王国あたりが絡んでいると、厄介なことになるな」
カイがブラッドの言いたいことを察して答えると、ブラッドは「ああ」と頷いた。
「リブニケとルリアーナの関係値などは、どうなのでしょうか?」
レオナルドが尋ねる。
「実は、俺もよく分からないでいる。先日リブニケの侯爵が王女殿下の見合いに来たが、あまりにも不遜でとてもじゃないが友好関係を築きたいという態度ではなかった。王女のことは個人的に気に入っていたのかもしれないが」
カイが答えると、ブラッドは少し咳ばらいをして、
「それは、レナ様といえばこのあたりの王侯貴族には非常に人気なので、当たり前では?」
とカイを睨みながら言った。
レオナルドはブラッドの方を少し見てから、
「まあ、側近のあなたには分からないでしょうけど、ハウザーさんのポジションになりたいと思っているのは僕たちだけじゃありませんからね」
と付け加えた。カイが目の前の2人をじっと見つめ、
「想像以上に面倒くさいんだな、お前ら」
としみじみと言うと、
「余裕かましてんじゃねーよ、自慢かよ」
「大体何なんですか、おたくは見た目採用なんですか?そういうやり方で入り込むんですか?」
とすごい剣幕でまくしたてられる。カイは、
「勘弁してくれ」
と2人の様子に辟易としていた。
カイがポテンシアの護衛と話していて、初めて分かったことがある。
ポテンシアやパースにとっても、どうやらルリアーナの第一王女というのは特別な存在らしい。自国で人気があることは調査報告により把握していたが、同盟国から人気があるとは想像もしていなかった。
ブラッドとレオナルドは王族付きの近衛兵ということもあり、仕事は信頼して任せることができそうだが、王女への態度が微妙に気になった。ポテンシア人は自分の部下にもいるが、どうも女性好きなところがあるらしいのだ。王女に手を出すことはないと思うが、あまり女性の護衛向きとは言えなかった。
カイはブラッドとレオナルドを送り出すときに、公爵の所業を軽く伝えた時の2人の顔が忘れられない。
(目を丸くした後、何やらどす黒い気を漂わせていたな……)
感情的になられても困るが、レナの安全のために業務を全うしてくれそうな2人だ。
公爵の周りを任せることができたため、自分の手配した応援要員はそれ以外のところに割くことができる。なかなか初動としては順調だ、とカイは満足していた。
「ルイス殿下は、見合い相手としても協力者としても通じていて問題ないだろうな」
カイがそう言うと、
「いや~、王族で美青年、嫌味なくらいイイ男でしたね」
とシンは思い出して赤面している。ロキは部屋の外にいてルイスの会話こそ聞いていなかったが、
「ポテンシアの王族って、評判悪くないですよね。まぁ、確かにちょっと手が早そうな雰囲気はしましたけど」
とストレートに感想を言った。
「プレイボーイな感じね」
レナは先ほどのルイスの態度を思い出しながら、少しムスッとしている。
「婚約すれば、さすがに女性関係の心配は無くなると思いますけど。何かあったんですか?」
と、ロキはレナの様子に驚いて言った。
「何かって、別に無いわよ。ちょっと相手のペースに飲まれてしまって悔しいだけ」
レナがそう言って口を尖らせているのを、シンが、
(可愛いなオイ)
と見惚れているのをカイは一瞥し、
「では、今回の相手も見合いは先に進めることに異論はないな。パースとポテンシアに1人ずつ、協力者兼婚約者候補が残っているのはいい傾向だ」
と言うと、応接室で待たせているポテンシアの護衛との打ち合わせに向かうことにした。
先程まで顔を合わせていたルイスの護衛2名が、少し砕けた雰囲気で部屋に残っていた。
「さて、早速だが、急遽こちらの改革に協力してもらえることになり、本当に感謝している。改めて、カイ・ハウザーだ。よろしく頼む」
カイが頭を下げて挨拶をすると、ポテンシアの護衛2人は顔を合わせ、
「やはり、あなたがハウザー団長」
「確信はなかったものの、なんとなくそんな気がしていました」
と口を開く。
「ブラッド・クラウスだ。ポテンシアの近衛兵で、第4王子付きの護衛をしている」
「レオナルド・サントーロです。普段は国王の間諜を務めています」
ブラッドは20代後半くらいの若者で、短髪の明るい茶色の髪、面長の顔に切り傷跡がいくつかある兵士らしい男だ。レオナルドは20代半ばくらいの、少し細身の若者だった。暗めの茶色の髪を刈り上げており、やわらかい表情の中にある鋭い目つきが印象的だ。
「実は、既に黒に近い貴族が1名いて、王女に危害を加えかけたため昨日私が城から追い出した経緯がある。恐らく王女信仰の教会を使って庶民への布教も行なっていると見ている。残念ながら爵位が公爵なんだが」
カイはそう言って昨日の見合い相手のプロフィールを渡す。
「公爵が反勢力とは、出だしからすごい情報ですね」
レオナルドは公爵の資料を見て、
「しかも、関所のある地域の領主で貿易担当大臣。これまでの経緯を考えると分かりやすいですね」
と言った。ブラッドは暫く黙って資料を読み込んでから、
「ハウザー殿との連携や、我々の動き方を決めておきたいところだが、ハッキリ申し上げてルリアーナの貴族自体に自警能力は全く無いので、外の介入がなければすぐに核心に入り込めるだろう。ただ……少し気になっているのが、その外からの介入というやつだ」
と、カイの方を窺いながら少し言いにくそうにした。
「分かっている、リブニケ王国あたりが絡んでいると、厄介なことになるな」
カイがブラッドの言いたいことを察して答えると、ブラッドは「ああ」と頷いた。
「リブニケとルリアーナの関係値などは、どうなのでしょうか?」
レオナルドが尋ねる。
「実は、俺もよく分からないでいる。先日リブニケの侯爵が王女殿下の見合いに来たが、あまりにも不遜でとてもじゃないが友好関係を築きたいという態度ではなかった。王女のことは個人的に気に入っていたのかもしれないが」
カイが答えると、ブラッドは少し咳ばらいをして、
「それは、レナ様といえばこのあたりの王侯貴族には非常に人気なので、当たり前では?」
とカイを睨みながら言った。
レオナルドはブラッドの方を少し見てから、
「まあ、側近のあなたには分からないでしょうけど、ハウザーさんのポジションになりたいと思っているのは僕たちだけじゃありませんからね」
と付け加えた。カイが目の前の2人をじっと見つめ、
「想像以上に面倒くさいんだな、お前ら」
としみじみと言うと、
「余裕かましてんじゃねーよ、自慢かよ」
「大体何なんですか、おたくは見た目採用なんですか?そういうやり方で入り込むんですか?」
とすごい剣幕でまくしたてられる。カイは、
「勘弁してくれ」
と2人の様子に辟易としていた。
カイがポテンシアの護衛と話していて、初めて分かったことがある。
ポテンシアやパースにとっても、どうやらルリアーナの第一王女というのは特別な存在らしい。自国で人気があることは調査報告により把握していたが、同盟国から人気があるとは想像もしていなかった。
ブラッドとレオナルドは王族付きの近衛兵ということもあり、仕事は信頼して任せることができそうだが、王女への態度が微妙に気になった。ポテンシア人は自分の部下にもいるが、どうも女性好きなところがあるらしいのだ。王女に手を出すことはないと思うが、あまり女性の護衛向きとは言えなかった。
カイはブラッドとレオナルドを送り出すときに、公爵の所業を軽く伝えた時の2人の顔が忘れられない。
(目を丸くした後、何やらどす黒い気を漂わせていたな……)
感情的になられても困るが、レナの安全のために業務を全うしてくれそうな2人だ。
公爵の周りを任せることができたため、自分の手配した応援要員はそれ以外のところに割くことができる。なかなか初動としては順調だ、とカイは満足していた。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
その聖女は身分を捨てた
メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる