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the 6th day 王女のトラウマ
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応接室に戻ると、カイの姿を見てレナは力無く微笑み、
「ごめんなさい。ちゃんとしなきゃと思っていたのに、やっぱりダメだったわ」
と俯いていた。応接室は客が出て行き、使用人が頻繁に出入りしている。
事情を聞くのはここではまずいと判断し、カイはレナを部屋まで送ることにした。
「何があったんだ?殿下らしくない対応に、あの公爵の言動。分かるように教えてくれないか」
2人になったいつもの部屋で、カイは窓の外を見ながら目線を向けずにレナに問いかけた。
「あの人は……この国ではとても影響力のある方なんだけど……その……6年前に手籠にされかけたことがあるの……」
小声の告白に、カイは言葉を失った。
「なん……だと……?」
見合いの護衛には、そこまでデリケートな問題もあったのか、と驚いた。
「まだ、私が何も分からなかった時に、王女の尊い血筋を守りたいと言って近づいて来たのがあの男。最初は、親切で近づいてきたのかと油断したわ。でも、私を見る目がおぞましいことにある日、気が付いて…………」
そこまで言ってレナは黙ってしまう。
「そういうことは、無理に話さなくていい。そうか。それならなぜ、見合いを受けたんだ」
カイは静かに語りかけた。
「相手が、少しでも変わっていればと期待したの。だって、もうだいぶ時間も経っているし、私も大人になったし、あの方も政治家で、今後どうしてもやり取りは発生するから」
レナはそう言って唇を噛んだ。
「悔しい。あんな男がこの国の公爵としてなんの罪にも問われずのうのうと生きているの。私がどんなに辛くて怖かったか……!」
カイはそれを聞いて、
「王女に手を出すなど、通常の犯罪より重いだろう。罪に問えないのか?」
と当たり前のように尋ねた。
「巧妙に外堀から埋めて来たのよ、あの男は。最初に会ったのは10年前だった。まるで私から望んだかのように、自分を庇って振る舞うのが上手かったのね。身分も高かったし、笑えることになんと側近候補だったのよ。こういうことは……なかなか実証はできないし、思い出すのも辛くて、私は恐怖であの男の前では無口になってしまったし。情けないことに、私も幼くて自分のせいなのだと殻に閉じこもってしまった」
レナの言葉に、カイは頷いた。
「それは、無理もないな。年頃の少女にとっては」
その言葉を聞くと、レナはカイのところまで駆け寄って、
「お願い、今だけでいいの。落ち着くまで胸を貸して」
と、カイに抱きついた。
「これからは大丈夫だ。そのための護衛がいる」
カイがそう言うと、レナは、
「お願いよ・・」
とカイの胸元で震えていた。カイは、目の前の小柄な王女の姿に、彼女を狙ういくつかの悪意を目の当たりにした気がした。
レナは自室で1人混乱していた。
(さっき、私、カイに抱きつくなんて大胆なことを……)
初めてしがみついた男性の胸の中を思い出し、盛大に赤くなる。
ロキによれば、カイは女性を憎んでしまうということだったが、自分もそうだったのかもしれない。
ようやく、異性を避けるということが、自分を守るためだったのだと分かった。
(今日は、カイと一緒に城下町に行ける。そこで、お礼を言おう)
レナは夜に着る服を決めながら、護衛との外出に胸を躍らせていた。
カイは部下の2人に見合いで起きたことや、レナから聞いた過去を掻い摘んで報告した。
「どうやら、敵は国内の有力者にもいるぞ」
公爵という身分の所業を告げると、
「しんっっじられませんね。そんなこと、あり得ます??腐ってますね」
とシンが怒りに震えていた。
「団長、ちゃんと殿下を慰められました?」
とロキが聞くと、
「俺がその手のことは苦手なことくらい知ってるだろ」
とカイが言うので、ロキは思わず大きなため息をついた。
「ちゃんと、夜のデートで挽回してください」
部下はレナの味方だったらしい。ロキは明らかに軽蔑した顔をしている。
「だから、デートじゃないと言ってるだろ」
カイも譲る気はなかった。
「団長は自分の魅力が分かってないんですよ。夜の町で団長に優しくされるってことが、どれだけ女性の心を癒せるか。……いいですか、殿下にとって団長は憧れの人なんですからね」
ロキの主張は説得力を増す。
「使えるものは使うのが団長のいいところでしょう?その無駄に良い顔とスタイルを、今夜使わないでどーするんですか。分かってますか?タダですよ?」
カイはロキに反論できず、ついには黙っていた。
「ロキってホント、頭いいよなぁ」
とシンは感心していた。
「ごめんなさい。ちゃんとしなきゃと思っていたのに、やっぱりダメだったわ」
と俯いていた。応接室は客が出て行き、使用人が頻繁に出入りしている。
事情を聞くのはここではまずいと判断し、カイはレナを部屋まで送ることにした。
「何があったんだ?殿下らしくない対応に、あの公爵の言動。分かるように教えてくれないか」
2人になったいつもの部屋で、カイは窓の外を見ながら目線を向けずにレナに問いかけた。
「あの人は……この国ではとても影響力のある方なんだけど……その……6年前に手籠にされかけたことがあるの……」
小声の告白に、カイは言葉を失った。
「なん……だと……?」
見合いの護衛には、そこまでデリケートな問題もあったのか、と驚いた。
「まだ、私が何も分からなかった時に、王女の尊い血筋を守りたいと言って近づいて来たのがあの男。最初は、親切で近づいてきたのかと油断したわ。でも、私を見る目がおぞましいことにある日、気が付いて…………」
そこまで言ってレナは黙ってしまう。
「そういうことは、無理に話さなくていい。そうか。それならなぜ、見合いを受けたんだ」
カイは静かに語りかけた。
「相手が、少しでも変わっていればと期待したの。だって、もうだいぶ時間も経っているし、私も大人になったし、あの方も政治家で、今後どうしてもやり取りは発生するから」
レナはそう言って唇を噛んだ。
「悔しい。あんな男がこの国の公爵としてなんの罪にも問われずのうのうと生きているの。私がどんなに辛くて怖かったか……!」
カイはそれを聞いて、
「王女に手を出すなど、通常の犯罪より重いだろう。罪に問えないのか?」
と当たり前のように尋ねた。
「巧妙に外堀から埋めて来たのよ、あの男は。最初に会ったのは10年前だった。まるで私から望んだかのように、自分を庇って振る舞うのが上手かったのね。身分も高かったし、笑えることになんと側近候補だったのよ。こういうことは……なかなか実証はできないし、思い出すのも辛くて、私は恐怖であの男の前では無口になってしまったし。情けないことに、私も幼くて自分のせいなのだと殻に閉じこもってしまった」
レナの言葉に、カイは頷いた。
「それは、無理もないな。年頃の少女にとっては」
その言葉を聞くと、レナはカイのところまで駆け寄って、
「お願い、今だけでいいの。落ち着くまで胸を貸して」
と、カイに抱きついた。
「これからは大丈夫だ。そのための護衛がいる」
カイがそう言うと、レナは、
「お願いよ・・」
とカイの胸元で震えていた。カイは、目の前の小柄な王女の姿に、彼女を狙ういくつかの悪意を目の当たりにした気がした。
レナは自室で1人混乱していた。
(さっき、私、カイに抱きつくなんて大胆なことを……)
初めてしがみついた男性の胸の中を思い出し、盛大に赤くなる。
ロキによれば、カイは女性を憎んでしまうということだったが、自分もそうだったのかもしれない。
ようやく、異性を避けるということが、自分を守るためだったのだと分かった。
(今日は、カイと一緒に城下町に行ける。そこで、お礼を言おう)
レナは夜に着る服を決めながら、護衛との外出に胸を躍らせていた。
カイは部下の2人に見合いで起きたことや、レナから聞いた過去を掻い摘んで報告した。
「どうやら、敵は国内の有力者にもいるぞ」
公爵という身分の所業を告げると、
「しんっっじられませんね。そんなこと、あり得ます??腐ってますね」
とシンが怒りに震えていた。
「団長、ちゃんと殿下を慰められました?」
とロキが聞くと、
「俺がその手のことは苦手なことくらい知ってるだろ」
とカイが言うので、ロキは思わず大きなため息をついた。
「ちゃんと、夜のデートで挽回してください」
部下はレナの味方だったらしい。ロキは明らかに軽蔑した顔をしている。
「だから、デートじゃないと言ってるだろ」
カイも譲る気はなかった。
「団長は自分の魅力が分かってないんですよ。夜の町で団長に優しくされるってことが、どれだけ女性の心を癒せるか。……いいですか、殿下にとって団長は憧れの人なんですからね」
ロキの主張は説得力を増す。
「使えるものは使うのが団長のいいところでしょう?その無駄に良い顔とスタイルを、今夜使わないでどーするんですか。分かってますか?タダですよ?」
カイはロキに反論できず、ついには黙っていた。
「ロキってホント、頭いいよなぁ」
とシンは感心していた。
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